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帯広で映画を観た!シネマ de 十勝 映画『夏目アラタの結婚』〜腐女子の“迷い”道案内_Vol.25

帯広で映画を観た!シネマ de 十勝は、帯広で働く腐女子。「総統」と呼ばれた女子が、身の回りの幸せ(美味しいご飯・趣味・脳内妄想など)で足るを知る小市民として、十勝の観光文化検定(とかち検定)上級合格の実力を発揮しつつ、帯広・十勝の話をしつつ、映画を語るコラムです。今週の映画は『夏目アラタの結婚』です。

前回のコラム「帯広で映画を観た!」はコチラ

『夏目アラタの結婚』を観た

児童相談所に勤務する夏目アラタは、被害者遺児に頼まれ、連続殺人事件の被疑者「品川ピエロ」こと品川真珠と面会することに。

アラタの名前を騙って真珠と文通していた遺児から「まだ見つかっていない父親の遺体の一部の在りかを聞き出してほしい」と頼まれたアラタだったが、早々に面会を打ち切られそうになる。

真珠の気を引き、面会を続けるため焦ったアラタは「俺と結構しようぜ!」と提案し――。

乃木坂太郎のマンガ『夏目アラタの結婚』が原作の、サスペンス。

 

サスペンスでなくても好きな(いや、好きでなくても)原作あり作品の映像化は、悲しい時があるので見終わるまでビクビクしながら向かうわけですが……!!

(関係者一堂にリスペクトがなくて原作蹂躙になるとか、リスペクトがあっても調理能力がヘボいとか)

 

この作品は、『TRICK』の堤幸彦監督、『翔んで埼玉』の脚本家さん。

(そう悪いことにはならないだろうという、一定の安心感はありつつも、小心者なのでハラハラはしていた)
総統
総統

 

よかったです。

いろいろなステップが簡略化されていても、原作の持つエキスがよく取捨選択されていて、一本の映画としてうまく再構築されていたと思います。

 

真珠側の話にフォーカスし、被害者側の話等はカットされていましたが、さすがに全12巻の原作の全てを移し込んだら、それは映画ではなく総集編。

 

ともかく、原作を読んだことがない人、何巻まで読んだか分からなくなった人は、そのまま映画館に行っていいと思います。

事前予習したい人には、読み進めすぎると謎解き部分が出てきてしまうので、5巻くらいまでを推奨したいです。

(あれこれネタバレを踏まずに味わいたくない人には6巻はもう危ない。全巻読むのは、映画見た後でいいと思う)
総統
総統

人の『優越感』『傲慢さ』『搾取』が根底に根底にある作品

話の題材は殺人絡みで、レーティングにはかかっていないものの切断死体等グロテスクなものが登場します。

(血とか骨とか死体、あと重要なファクターとはいえ汚い歯並びが苦手な人はご注意を)

 

実は『結婚』がタイトルだなけあって、事件の真相・真意を探る心理戦の裏で、ラブストーリーとヒューマンドラマが進行する話でもあります。

しかも片方は拘置所に入っていて主に看守つきの面会所越しの会話なため、応酬は激しいけれど、恋愛としての進展は今時非常にピュアです。

 

映画『ハンニバル』のレクター博士とクラリスのように、収監されている側が主導権を握っている話ではあっても、真珠とアラタの方が対等に近く、善と悪の境界線の上で二人でダンスを踊っている感があります。(レクター博士は、境界線どころか既に渡り切ってしまった人なので)

 

「原作だとそれは宮前のエピソードでは?」とか「佐藤二朗演じるコレクター、そんな出張ってくる役だっけ?」といった、ちょこちょこと原作と違う部分はあっても、私は改悪とは思いませんでした。

むしろ映画版『夏目アラタ』という作品としてブラッシュアップするために、そこを生かしたり強調してきたかーという感じで。

 

自覚的にも無自覚にも、自分より下の人間を見つけて得ようとする、人の『優越感』『傲慢さ』『搾取』がこの作品の根底にはあります。

過剰ともいえるコレクターの気持ち悪さの強調は、その部分をより鮮明にしてくれているように思うのです。

 

エンディングで流れるオリヴィア・ロドリゴの『ヴァンパイア』も、そのテーマを底に敷いた原作者の日本語訳監修字幕が流れます。

(「真珠→アラタ」の強火の解釈に痺れました)

 

『ラストマイル』の『がらくた』(米津玄師)もそうですが、主題歌まで映画本編の内容に沿っていて、最後のエンドロールまでその世界観に浸っていられる映画って、本当にいいですね!

映画版としての夏目アラタ(柳楽優弥)は、原作の粗野さより粗野な部分が少なめで、品と色気が上な気がするけれど、夏目アラタで良かったですし。
総統
総統

 

品川真珠(黒島結菜)は、狂気と魅力を孕んだ真珠でした。歯並びの悪いマウスピースをつけての熱演、凄い!

 

宮前弁護士(中川大志)も、一見「いい人」すぎるけれど、真珠が本性を見せてもあれこれ呑み込めるって、決して清らかで純粋な「いい人」ではないというのが良い。

 

私はドラマ版『ハンニバル』のレクター博士(マッツ・ミケルセン)を「こんなに顔が良くて一途なんだから、ちょっとくらいサイコパスで食人嗜好のある連続殺人鬼でも目を瞑ってあげて!!」と擁護したい人なんですが。宮前弁護士も「多少の(?)瑕疵すら目を瞑り、推しを全力で推すオタク」仕草っぽくて、良かった。

 

終盤も「そこまで好きで真珠を理解しているなら、なんであなたが結婚しなかったんですか?」と思われるかもしれない言動を取りますが、映画版宮前弁護士はあくまで「壁から推しを見守りたい」同志なんだと思うし、真珠もそれを理解している関係性なのだと解釈しています。

十勝にもかつて監獄があった

さて十勝とこじつけるに当たって、獄中結婚の話なので十勝の監獄の話をいたしませう。

 

今は市民の憩いの場となっている現在の緑ヶ丘公園一帯に、かつて北海道集治監十勝分監(後の十勝監獄)がありました。

 

明治33年に建造された十勝監獄石油庫は、今残る帯広最古の建造物です。

 

その石油庫などに使われたレンガや瓦を焼いた監獄の「登り窯(のぼりがま)」跡地も、残っています。

場所は、帯広百年記念館裏手の駐車場から美術館・児童会館に登る手前。

 

看板が立っていても、木に覆われていて分かりにくいですが。

北海道で明治時代の窯跡が残るのはここだけという、実は貴重な場所です。

(斜面に炉底のレンガが残っています)

またグリーンステージ北側(パークゴルフ場南側)から百年記念館に向かうウォーキングコース上に赤でペイントされているのは、十勝監獄関連の炊事場と推測される遺構の発見場所です。

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バリアフリー化工事の際発見され、確認後埋め戻されました。

 

遊歩道上のペイントは「この下に2つのカマドと煙道跡があります」ということが示されています。

あったはずのその後の被害者の生を軽んじ、損なったことは当然裁かれるべきですが。
総統
総統

 

犯罪者にも誰にも、罪を犯したその後の生があるということを思い出させてくれる映画と遺構の話でした。

PROFILE

三崎 裕美子 | 腐女子 / 総統
1980年生まれ。北海道帯広市出身|釧路→新橋のサラリーマン(港区女子)→などを経て基本帯広で働く腐女子。「総統」と呼ばれた女。しかしてその実体は、身の回りの幸せ(美味しいご飯・趣味・脳内妄想など)で足るを知る小市民。十勝の観光文化検定(とかち検定)上級合格。同年生まれのハリー・ポッター氏が通うホグワーツ・スリザリン寮に組み分けされたかったゲラート・グリンデルバルド信奉者。
























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三崎 裕美子

腐女子 / 総統

1980年生まれ。北海道帯広市出身|釧路→新橋のサラリーマン(港区女子)→などを経て基本帯広で働く腐女子。「総統」と呼ばれた女。しかしてその実体は、身の回りの幸せ(美味しいご飯・趣味・脳内妄想など)で足るを知る小市民。十勝の観光文化検定(とかち検定)上級合格。同年生まれのハリー・ポッター氏が通うホグワーツ・スリザリン寮に組み分けされたかったゲラート・グリンデルバルド信奉者。

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