【書評】本の虫 小川の本棚 「100ねんごもまたあした」presented by Book cafe & bar Sen 061

作品名：100ねんごもまたあした
著者：瀬尾まいこ
出版社：岩崎書店

大好きな小説家、瀬尾まいこさんの初の絵本

SNSを見ていて、ふと目にとまったのがこの絵本。その投稿を見終えるなり、その場でポチってしまうほどの衝撃でした。

 

大好きな小説家が描く絵本、気にならないわけないです。

 

注文から手元に届くまでの間、どんな内容なのかワクワク、ドキドキしながら待っていて、手元に届いたときにはもうひろき感激。

すぐに開封し手に取ってみると、表紙のイラストもすごくポップな色使いで、もじもじくんのようなキャラクターが描かれており、ますます「読んでみたい！」という気持ちになったのです。

 

それだけではなく、帯に書いてある「うおー。100年後って天国じゃん」の一文でノックアウト。

子どもの頃に想像した100年後の未来、大人になった今想像する100年後の未来、果たしてどちらがワクワクするでしょうか？

 

この絵本に出てくる100年後のイメージはどんなものなのか？ページをめくりながら自分自身の未来についても考えるきっかけにしてほしいと思います。

解釈は無限大！あなたの解釈を教えてください

ボクが運営しているBook cafe&bar Senで定期的に読書会を開いているのですが、先日、その読書会でこの絵本についての解釈を参加者とシェアしました。

「驚き、桃の木、山椒の木」という言葉の通り、驚きの事実が発生したのです。

 

それは参加者の解釈がバラバラだったのです。同じ絵本を読んでいるにもかかわらず、年齢や性別、職業の違いによって、こんなにも解釈が分かれるなんて想像していませんでした。

 

この絵本に限らず、ボクはどんな物語も「解釈は自由」だと思っています。それぞれの読者が、今まで生きてきた経験や価値観をもとに解釈し、自分なりの意味を見出すことが、読書の楽しさだと思うんです。もちろん、自分の解釈が誰かの解釈よりも「正しい」ということはありません。それが読書の奥深さですよね。

 

あなたが読んだこの絵本の解釈、それは今のあなたにとっての正解であり、別のタイミングで読むと、また変わるのも読書の面白さなんです。

大きな幸せよりも小さな幸せを積み重ねよう

自分が想像する100年後の未来。現実はイメージしていたような大きな変化や劇的な進化は見られないかもしれません。例えそういう未来だったとしても、小さな変化の積み重ねが、人生をワクワクさせるものになるかもしれない。

 

未来の大きなワクワクよりも、目の前の小さなワクワクの方に心は奪われる。

 

これがボクのこの絵本に対する解釈なんです。絵本を読んで感じたのは、大きな飛躍や劇的な成長ばかりに目を向けるのではなく、日々の小さな進歩や日々の成長を、もっと大きな幸せとして受け取れるようになりたいという気持ちです。

地に足をつけて、目の前にある幸せや小さな変化をしっかりと見つめ、それを大切にして生きていくことが、今の自分に必要なのだと感じました。

 

今までの自分は、つい「もっと上を」「もっと先を」と、上ばかりを見上げて、「まだ届かない、まだ足りない」と焦って生きてきたような気がします。ですが、この絵本を通じて、自分の足元にある幸せや成長に目を向ける大切さを教えられた気がします。

届かないものを追いかけることばかりではなく、今あるものを見落とさず、感謝しながら生きていくことで、本当の意味での幸せを見つけられるのかもしれない。これからは、日常の何気ない幸せを大切に生きていこうと思います。

いつかは来る100年後。
そんな未来を想像し、「明日」が楽しくなるこの絵本をぜひ読んでみてください。

Profile

小川 洋輝 | ブックカフェ「Sen」オーナー
1985年、北海道幕別町出身。高校を卒業後、福祉施設にて勤務。知的障がい者の入所施設や就労支援施設、障がい児の通所施設の経験を経て一般社団法人青鳥舎を設立。 障がい者の親が安心して死ねる社会を創るために 障がい者雇用のコンサルテーションや障がい福祉サービス事業所のコンサルテーションを行う。2015年10月より自ら障がい児の通所施設を開設。障がい福祉や子育て関連の専門書などが並ぶブックカフェ「Sen（せん）」は2022年4月オープン。23年、絵本『やっちゃれ ほっちゃれ もっきっきー！』（みらいパブリッシング）か出版。毎週金にスマヒロで書評を担当

楽しく生きるためのヒントが詰まったこの１冊は、未来の自分に期待をさせてくれるかもしれません。