【書評】本の虫 小川の本棚 「おひさまとえんぴつ」presented by Book cafe & bar Sen 072

作品名：おひさまとえんぴつ
著者：羊の目。
出版社：実業之日本社

SNS発信から出版へ辿り着いたフォロワー88万超えの実力者

SNSへの投稿がきっかけで出版に至ったことはすでにお伝えしたが、ボクとの出会いはちょっと違う。

実は、「この本、絶対に好きだと思う！」と友人が満面の笑みでプレゼントしてくれたのがきっかけ。

普段からボクが「耳が聞こえない」人たちに向けた活動をしていることを知っている彼女のセンサーがピピッと反応した結果、この素敵な本が届けられたのだと思う。

詳細は後でお伝えしますが、耳の消こえない女の子が登場します。
さっそく本を読み「羊の目。」さんの本にすっかり心を奪われたボクは、いてもたってもいられず、すぐにSNSをフォロー。

はい。本当にSNSの力ってすごい。

ただ、いくらSNSで情報収集が便利だからといって、すべての情報にアクセスするのは不可能。ハッシュタグや検索ワードを駆使しても、世の中には無数の情報があふれているせいで自分には届かないことも多い。信頼できる友人や身近な人からの情報って、まさに宝物。

だからこそ人から受け取った素敵なご縁を、自分だけのところで終わらせてしまうのはもったいない。むしろ、それを周りに広げていくのも、受け取った人の大切な役割のひとつ。

まるでバトンを渡すように、感動や知識をつなげていく。それがまた新たな出合いや気づきを生んでいくんです。

さぁ、次はあなたがこのバトンを受け取り、誰かに繋いでいく番です。

 

涙なしには読み進められない！感動のオススメ漫画

まずはじめに、これは声を大にして言いたい。この本は「漫画」なのだ。

だからこそ、活字アレルギーを発症しがちなあなた、安心してください。この一冊はスルッと読める。むしろ、「これなら読める」と嬉し涙を流す可能性だってある。

一方で、「私は小説しか読まないから」「漫画は子どもの頃に卒業したし」なんて大人ぶった人たちには、こう言いたい。「この本だけは読んでおきなさい。それも、今すぐ」と。

さて、肝心要の内容は、生まれつき耳が聞こえない女の子「沙希ちゃん」が主人公。彼女の日常には、お姉ちゃんやお母さんとの家族の絆、3年1組のクラスメイトたちとの心温まるエピソードがぎっしり詰まっている。たかし君、絵那ちゃん、大地君など、個性豊かな仲間たちとの交流が、時に胸に響き、時にクスッと笑えるシーンとして描かれている。

そして、沙希ちゃんはただの女の子ではありません。

本好きが高じて「小説家になりたい」という夢を持つ、エネルギッシュで前向きな女の子。その姿に読者も背中を押されることでしょう。この胸アツなハートフルコミックエッセイは、言うなれば、寒い日に飲むホットココアのような存在。

ページをめくるたびに、その温かさがじわりと広がり、読み終わる頃にはほっと優しい気持ちになれるはずです。ぜひ、あなたの大切な時間の一杯としてどうぞ。

登場人物みんな素敵！あなたは誰がお好みですか？

まず、この本は4つのお話で構成されている。それぞれの物語に登場する子どもたちは、まるで夜空に輝く星のようにキラキラとしているのが特徴的。夢を抱いてひたむきに努力する子、ちょっとしたいじわるがきっかけで優しく成長する子、いろんな子が登場しますが、どの子も愛おしくなるキャラクターばかり。

読んでいると「こんな子どもたちに育ってほしいなぁ」と思わず願ってしまうような、そんな優しい世界が広がっている。そしてもちろん、優しさの裏にはしっかり感動が待ち構えており、ハンカチの準備をおすすめしたい。

ボクが特に心を揺さぶられたのは、第二話「あの日の声が聴こえる」に収められた「夏休み、秘密基地」だ。細かい内容はあえて伏せておくが、やんちゃ坊主の優しさとだけ言っておこう。それだけでなく、ほかにも、心がキュッとなる感動ポイントがいくつも散りばめられている。ただ、それをすべて語ってしまうのはもったいないので、ここはぜひあなた自身でページをめくりながら見つけていただきたい。

さて、あなたはどのエピソードに心を奪われるのでしょうか？
読み終わったあと、ぜひ感想を教えてください。きっと、ボクと同じように特別なシーンが見つかるはずです。

 

感動で涙が必須のこの漫画は、あなたの新しい読書の扉を開く、１冊となるでしょう。

Profile

小川 洋輝 | ブックカフェ「Sen」オーナー
1985年、北海道幕別町出身。高校を卒業後、福祉施設にて勤務。知的障がい者の入所施設や就労支援施設、障がい児の通所施設の経験を経て一般社団法人青鳥舎を設立。 障がい者の親が安心して死ねる社会を創るために 障がい者雇用のコンサルテーションや障がい福祉サービス事業所のコンサルテーションを行う。2015年10月より自ら障がい児の通所施設を開設。障がい福祉や子育て関連の専門書などが並ぶブックカフェ「Sen（せん）」は2022年4月オープン。23年、絵本『やっちゃれ ほっちゃれ もっきっきー！』（みらいパブリッシング）か出版。毎週金にスマヒロで書評を担当

楽しく生きるためのヒントが詰まったこの１冊は、未来の自分に期待をさせてくれるかもしれません。