【書評】本の虫 小川の本棚 「「普通」につけるくすり」presented by Book cafe & bar Sen 114

作品名：「普通」につけるくすり
著者：岸見一郎
出版社：サンマーク出版

この本との出合いは偶然だった

本との出合いは、まったく別の本を買うために書店へ足を運んだとき。

ふと目に入った隣の平積み――シンプルな装丁に、大きく書かれた帯の文字。

『自分は特別な存在ではないと気づいてしまったあなたへ』

まるで自分に呼びかけられているようで、心の奥がザワザワした。思わず手に取ったものの、数カ月のあいだ「読もうかな、でも自分と向き合うことになりそうでちょっと怖いな」と迷ってしまい、本棚で寝かせることに。

そんなある日、なぜかスッと「次はこれを読もう」と手が伸びた。ページをめくったら最後、一気に読み終えてしまった。

ボクにとっては、「一冊まるごと自分のことやん！」と関西弁が出てしまうほど刺さる内容だった。

もちろん、あなたにとっては全部が全部そうではないかもしれない。
けれど、共感できる部分や、自分のクセにハッと気づく瞬間はきっとある。

自分と誰かを深く比べすぎてしまうあなたへ。
読んだあと、心がふっと軽くなる一冊です。

「特別じゃなくてもいい」と教えてくれる本

「馬鹿につける薬はない」という言葉がありますが、「普通につける薬」ってあるのでしょうか？
正直、ボクも一瞬「普通であることの薬？なんだそれ？」と首をかしげた。

でも、この本を読み進めるうちにわかってきた。

「特別でなければいけない」という不安の根っこには、常に他者との比較がある。

その比較の檻からどうやって抜け出すのか。
どうすれば「普通の自分」を受け入れ、自信を持って生きていけるのか。

著者は「特別になろうとしないけれど、同じでもない」という生き方を提示してくれます。

この「さじ加減」が絶妙で、読みながら何度も「なるほどなぁ」とうなずいてしまった。

目次を見てもわかる通り、

• なぜ特別でありたいと思うのか
• 普通であることの意味
• 劣等感との向き合い方
• 自信を持って仕事に取り組む方法
  などが丁寧に語られていて、人生の節目で読み返したくなる内容だ。

ボク自身、「特別じゃないと意味がない」と焦っていた時期があったけれど、この本に出会ってからは「普通であること」にも価値があると思えるようになった。

普通を受け入れるって、実はすごく特別なことかもしれない。
そんな気づきをくれる一冊です。

競争から脱して幸せになろう

「負けたくない」という気持ちは、時にモチベーションとなり、努力の原動力にもなる。

それ自体は悪いことではないが、そればかりに縛られると行き詰まってしまう。

だからこそ、勝ち負けではなく「貢献」に目を向けると人生は大きく変わるのではないか。

勝ち続けなくても、特別な存在にならなくても、誰かの役に立つことができる。
それこそが幸せへの道かもしれないと、この本は教えてくれる。

これまでのボクは、負けず嫌いで常に誰かと比較をしていた。もちろん今でもその部分は多く残っている。

それでも、この本のおかげで「競争」から「貢献」へと視点が変わり、少しずつ変わっていけると感じている。

あなたもこの本を読むことで、緊張し続ける毎日から解放されるきっかけを得られるはずだ。
そのためのヒントが、この一冊には詰まっている。

他者と比較し、特別な存在になろうとしてしまう。
そんな自信のない人すべての心を軽くする、特効薬のような一冊です。

Profile#

小川 洋輝 | ブックカフェ「Sen」オーナー
1985年、北海道幕別町出身。高校を卒業後、福祉施設にて勤務。知的障がい者の入所施設や就労支援施設、障がい児の通所施設の経験を経て一般社団法人青鳥舎を設立。 障がい者の親が安心して死ねる社会を創るために 障がい者雇用のコンサルテーションや障がい福祉サービス事業所のコンサルテーションを行う。2015年10月より自ら障がい児の通所施設を開設。障がい福祉や子育て関連の専門書などが並ぶブックカフェ「Sen（せん）」は2022年4月オープン。23年、絵本『やっちゃれ ほっちゃれ もっきっきー！』（みらいパブリッシング）を出版。毎週金にスマヒロで書評を担当

楽しく生きるためのヒントが詰まったこの１冊は、未来の自分に期待をさせてくれるかもしれません。