十勝の雪が一杯のラーメンになった日——姉妹が創り上げた奇跡の物語
焼肉のまち帯広が、ふたたび日本を驚かせました。全国焼肉料理コンテストで『JUICY DISH 焼肉南大門』が史上初の2連覇を達成。頂点に輝いたのは、十勝の冬を一杯に描いた純白の“真っ白なラーメン”。姉が描き、妹が創る。唯一無二の“姉妹の共同創造”が生んだ、食の芸術作品です。
帯広の夜に舞い降りた知らせ
去る11月6日。東京で行われた全国焼肉協会主催「第4回焼肉料理コンテスト」。
その瞬間は、静かで、しかし力強く訪れました。
審査員長の新井会長が名を告げる——「グランプリ… JUICY DISH 焼肉南大門!」
会場がざわめき、次にどよめきへ変わる。
なぜなら、それは“史上初の2大会連続グランプリ”だったからです。帯広の一店が、日本の焼肉文化の頂点を2度も射止めた。地方から世界へ。夢物語のような快挙が、現実になりました。
奇跡は、姉が描き、妹が創る「二人三脚」から生まれた

南大門の創作料理は、一般的な店のそれとはまったく違います。それは、姉が世界観と物語を描き、妹がそれを料理として立体化する “共同創造(コ・クリエイション)”というスタイル。南大門の料理長・岡田美佳さんは語ります。
「姉が“絵”にしてイメージを渡してくるんです。それを見て、味の構成や仕上がりを私が試作していく。一皿の中に“物語”と“技術”が共存しているのが南大門の料理です」
姉・佳奈社長の頭の中にまず“世界”が生まれる。
それは、色、空気、情景、物語、感情…すべてが揺らめく、ひとつの物語。
そこから美佳料理長の手によって、味へ、香りへ、食感へと変換されていきます。
この“姉妹にしかできない創造プロセス”こそ、今回の作品を圧倒的な唯一無二へと押し上げました。
作品テーマは「真っ白な世界」。

十勝の冬を丸ごと器に閉じ込めるために……。今回の作品テーマは、佳奈社長が最初に描いた一枚の絵から始まりました。
「真っ白な世界。十勝の冬。静けさの中に潜む強さ。柔らかく降り積もる雪と、凛とした空気」
この“雪の世界をどう一杯の料理で表現するか”。そこから半年にわたる挑戦が始まります。
美佳料理長は何十回と泡の配合をやり直し、スープの濃度、麺の太さ、炭の分量を変え、時にはゼロに戻し、また積み上げる作業を繰り返しました。
「白の世界には“軽さ”と“芯のある強さ”が必要でした。白という色を成立させるために、どこまで純白に近づけるか。そこが一番の勝負どころでした」(美佳料理長)
姉が描く“世界観の白”。妹が目指す“味として成立する白”。二つの白を重ね合わせて初めて、“南大門の白”が生まれるのです。
白い雪原の中に、黒い麺が姿を現すという“演出”

一番の驚きは、純白の世界から姿を現す「黒い麺」。炭を練り込み、“焼肉店らしさ”を象徴する香りを忍ばせた北海道の中太ちぢれ麺。
「真っ白な世界に浮かぶ黒い麺は、食べる人の心の中に“夜の静けさ”や“影”を連想させる。白と黒の真逆が共存する景色を料理にしました」(美佳料理長)
食べ手の驚きとワクワクを誘う“ドラマの演出”。食べ進めるごとに麺の黒とスープの白が溶け合い、器の中は刻一刻と色を変えていきます。まるで、雪原に夕陽が差し込み、白い大地が淡く染まっていくように。
味の核心は「十勝和牛」。

コムタンスープは“十勝の命”の結晶この一杯の中心にあるのは、十勝の誇りである「十勝和牛」。南大門のキッチンでは、毎日、一頭一頭の命と向き合いながら「丁寧に捌く」という作業が行われています。
その積み重ねがあるからこそ、コムタンスープはただのスープではなく、十勝の命の尊さそのものが凝縮された“旨味の結晶”。
「命に感謝し、一頭を余すことなく活かす。それが私たちの使命です」
煮込まれた柔らかい十勝和牛が優しく舌に広がる瞬間、十勝の風景がふっと脳裏によみがえるような味わいがあります。
器の底に仕込まれた“タテギ”が見せる第二章
白の世界に一筋の赤が落ちる。それは、器の底に忍ばせた「タテギ」が溶け出す瞬間。
「味が変わる“物語”を器の中に入れたかったんです」(佳奈社長)
コムタンスープの優しい白味が、徐々に深みを増し、辛みそが生み出す新たな旨味と混ざり合い、また別の世界が立ち上がる。
味が“変化する”料理は多くありません。しかし南大門は、料理そのものに“ストーリー”を仕込んだのです。
2連覇の瞬間、胸によぎったのは“十勝の顔”

表彰式の壇上に立つ佳奈社長の目に、自然と多くの人の顔が浮かびました。両親。ずっと支えてくれるスタッフ。ともに働く生産者。地域の人々。そして十勝を愛するすべての人たち。
「これは、十勝のチカラで勝ち取った優勝なんです。私たち姉妹だけの力じゃありません」
涙を見せることなく、佳奈社長は静かにそう語りました。
審査員らは、十勝和牛の素晴らしさ、焼肉店としての基盤の強さ、そして“見たことがない世界観”を絶賛。地方の一店が、全国を相手に真正面から勝ち取った快挙。それは十勝の食文化全体に火を灯した瞬間でもありました。
老舗であり、挑戦者であり続ける——南大門という存在

1968年創業。半世紀以上にわたり、帯広の焼肉文化を支えてきた南大門。
老舗でありながら、“挑戦”という言葉を誰よりも体現しています。焼肉だけではなく、スンドゥブ、冷麺、デザート…どのメニューにも物語と世界観が宿る。
「焼肉は進化し続けるからこそ“文化”になる。私たちは、十勝からその未来をつくりたい」
姉妹の挑戦は、まだ道半ば。むしろ、ここから新たな章が始まります。
“真っ白なラーメン”は数量限定で提供予定
今回のグランプリ作品は、数量限定・予約制で提供予定。「十勝の冬」を味わうために全国から人が訪れる——そんな未来がすぐそこまで来ています。
十勝から、新しい伝説が生まれる

今回の2連覇は、単なる受賞ではありません。“地方の焼肉店”が、“世界観を創るクリエイティブチーム”へと進化した証。姉妹が信じる物語が、十勝和牛の力が、支えてくれる人たちの想いが、ひとつの器に凝縮されて光を放った瞬間でした。
挑戦を恐れない心が、地域の味を輝かせる——。帯広・十勝から、再び新たな伝説が始まります。
【information】
住所:北海道帯広市西3条南19丁目1
営業時間:ランチ11:00〜15:00/ディナー17:00〜21:00
定休日:火曜日
席数:1階30席/2階30席
駐車場:15台
電話番号:0155-25-0391
