帯広で映画を観た!シネマ de 十勝は、帯広で働く腐女子。「総統」と呼ばれた女子が、身の回りの幸せ(美味しいご飯・趣味・脳内妄想など)で足るを知る小市民として、十勝の観光文化検定(とかち検定)上級合格の実力を発揮しつつ、帯広・十勝の話をしつつ、映画を語るコラムです。
前回のコラムはコチラ
ナレーションが津田健次郎さん(テレビアニメ版・尾形役)なだけでも嬉しい!!
実写版も尾形は尾形だし、谷垣は谷垣だし!しかも変態キャラはしっかり変態でした〜。
玉木宏さん(鶴見中尉)と舘ひろしさん(土方歳三)、よく引き受けてくれましたよね!!
「鶴見中尉スゴ〜〜〜〜〜イ!!!」と鯉戸少尉のような目で見つめ、土方さんのダンディさを「ありがてぇ……ありがてぇ……」と拝んでまいりました。
特に、銀行での鶴見と土方の邂逅シーン。
北海道が舞台のマカロニウエスタンならぬ闇鍋ウエスタンを強く感じましたよ!
勿論、全31巻からなる長編マンガを原作とした映画作品ですから、触れられる範囲は限られています。
本作品で登場するのは、主だった人物と世界観の紹介、そして「金塊争奪戦」の導入部といえます。(続編は「WOWOW」でドラマ配信予定とのこと)
なので大事なことなので再度強調します。安心して勧められるのは「原作ファンには」です!
というのも、映画を見終わった後の「何も知らずにゴールデンカムイ好きに連れらこられた」らしき人達と、その同伴者さんの雰囲気が……決してよくなかったんです……。(体感、映画『ロード・オブ・ザ・リング』1作目を、3部作の第1作と知らずに見せられた人よりなお悪し)
不穏な空気を漂わせるお連れ様に「これは総集編みたいなものだから……」とフォローを入れる人々。「楽しかったね」などと感想戦ではなく、まず始まるのが弁解。大変よろしからぬ事態です。
『ゴールデンカムイ』って割と「エロ・グロ・ナンセンス」な話で、見る人を選ぶわけで……。
まして最初の方といえば「『デスノート』か!?」というくらい、次から次へと人が登場してきては、誰が重要人物かもよく分からないまま、感情移入する前に退場したりしなかったりするお話なわけで……。
好きすぎて客観性を失ったファンが「こんなに面白いんだから、みんなにとって面白いはず!」「みんな好きになるはず!」という勘違いで何も知らない人を誘ってしまうと、その寒暖差によって事故が発生しうるわけで……。
それでいて映画は「全体の導入部」なわけで……。(既にこの世界観を知っている人へのファンサービスにはなっても、映画単体としての力は弱くなってしまいます)
ということで、自分は好きだし「総集編みたいなものだから、漫画やアニメより所要時間も短いし、映画の方が親しみやすいはず!」という安易な気持ちで『ゴールデンカムイ』の世界にご新規さんを取り込もうとする人へ!
「好きな作品を周りにも布教したい!」「こんなに面白いんだから誰が見ても楽しいはず!」という熱意と勘違いは、逆に作品に対する心象を悪くする危険を孕んでいる、と自戒を込めて……。
映画を楽しみたい方には、せめて最初の方だけでも原作を読むかアニメでの事前予習をお勧めいたします。
さて、この作品と十勝の関わりは薄いですが、物語の序盤に縁のものが登場します。主人公の杉元が川で砂金を掘っているシーンです。残念ながら、アシㇼパさんは小樽方面のコタンの住人ですし、撮影された川も別の場所ですが。
大樹町が所有する砂金掘りセットが撮影に貸し出され、使われていたもよう!!
大樹町・歴舟川(れきふねがわ)はかつてゴールドラッシュにわいた場所で、杉元が一攫千金を求めて北海道に来た時期は丁度、歴舟川での砂金掘りの最盛期にかかっています。
金塊と言えるほど大粒のものは採れなくなっても、今も川には砂金が眠っています。
暖かい時期には、昔ながらの道具を使った砂金掘りを体験することも可能です。
大樹町「砂金掘り体験」のページ
北海道に黄金を求めてやってきたのは杉元たちだけではありません。幾度となくゴールドラッシュを迎えた北海道、アイヌが金を採り交易に用いていた痕跡がそこかしこに残されています。
中でも興味深いのは、奥州藤原氏との縁です。
「中尊寺金色堂の金箔に、北海道産の金が使われていた」「奥州藤原氏に関係する一団が12世紀には北海道に移住していた」可能性も指摘されています。(『アイヌ学入門』瀬川拓郎 講談社現代新書)
金についてはまだ不確定要素が多いですが、アザラシの毛皮や大鷲の尾根などの取扱品から、奥州藤原氏が北海道のアイヌと交易を行なっていたことは間違いない事実です。
北海道にも各地に義経伝説が残っています。
十勝に残る義経伝説ゆかりの地は、本別町の「弁慶洞」。一行が隠れたという山の中腹にある洞に、弁慶の名前がつけられました。
そう、伝承とはいえそれこそ『ゴールデンカムイ』よりあちこちに行ってるんです!!杉元達より移動も何も不便な時代に、かなりの大冒険!!!
なりすましが同時多発したのだとしても「君達どれだけ元気いっぱいなの?」というくらい、現地妻をつくったり健脚ぶりが発揮されています。「義経も弁慶も実は亡くなっておらず蝦夷地に渡っていた」どころか、逃亡者にしては意気盛んです。
ここで【義経一行と奥州藤原氏滅亡までの3つの疑問】が浮かびます。
①北との交易ルートを持っていて、北に金があると知っている大商売人一族が、厄介な客人&無駄飯食い達をそのまま住まわせるものか?
②客達の方も理解ある庇護者亡き後、身の危険を感じてなかったのか?
③義経・奥州藤原氏関係者の誰も、差し迫った状況になっても座して死を待つだけではなく「そうだ、北海道行こう!」とはならなかったのか?
これらの疑問も、奥州藤原氏と北海道の繋がりを考えると、妄想が捗ります。
つまり、いよいよの段になってから北へ落ち延びさせようというだけでなく「北海道に行って新たな金鉱探してきてちょ。ある程度持たせるけど、生活資金は現地調達ガンバ!」と、早い段階で義経あるいは一族の人間を前向きに送り出していた可能性も「有り得ないとは言い切れないな」と思えてくるわけです。
DNA鑑定なんて無い時代、身代わり遺体とかいかようにもできるわけで。
「奥州藤原氏の交易ルートを使い北海道に人を送っていた」は、少なくとも「源義経は大陸に渡ってチンギス=ハンになった」よりも荒唐無稽ではないわけで。
少なくとも、藤原泰衡の「実在するか分からない」とされる子供達や、対立で誅殺されたとされる弟達の誰かは蝦夷地に渡っていた可能性――あると思います!!
オタクの妄想というだけでなく、それ系の推論が書かれた本どこかで目にしたことがあるはずなんですけれど、記憶力が弱くてすみません……。(このコラムを書いている時点で出典を探しきれませんでしたが、恐らく前述の瀬川氏……?)
そう考えると、一人の所業とは思えない北海道の義経伝説の多さも、縁の地とされる本別・弁慶洞の「蝦夷地に土地勘のない鎌倉からの追手を警戒している人達が、なぜ山の中の行き止まりに隠れるのだろう?(むしろ開けた場所に逃げた方がよくない?)」という疑問も
勿論、その中に義経本人が混じっていても面白いですけどね!!
金にまつわるお話、夢が捗ります。
PROFILE
三崎 裕美子 | 腐女子 / 総統
1980年生まれ。北海道帯広市出身|釧路→新橋のサラリーマン(港区女子)→などを経て基本帯広で働く腐女子。「総統」と呼ばれた女。しかしてその実体は、身の回りの幸せ(美味しいご飯・趣味・脳内妄想など)で足るを知る小市民。十勝の観光文化検定(とかち検定)上級合格。同年生まれのハリー・ポッター氏が通うホグワーツ・スリザリン寮に組み分けされたかったゲラート・グリンデルバルド信奉者。