「ここは東京じゃない。無理だよ。難しいよ」と諦めていませんか。2022年7月。「圧倒的におもしろいメディアが地方を救う」を掲げて誕生した株式会社スマヒロは、Webメディアの力で、地方の人材採用をガラリと変え、「田舎暮らしをしたいけど仕事が…」などの不安を解決する会社です。すべての力の根源は“ひと”。だからこそ、地方を救うために、ひとの問題を解決することからはじめました。
金融機関ではなく地元企業がスタートアップ投資
北海道十勝は、帯広市を中心に19市町村、約36万人が住む地域です。基幹産業は“農業”ですが、不況・不景気もなんのその農業産出額(年間)は約3,000億円を超え、ここ数年は過去最高を更新し続け、実に北海道全体の約3割弱を担う農業王国です。
景気の良い十勝ですが、ご多分に漏れず、目下の課題は「人手・人材不足」。好調な農業を背景に、恩恵を受ける企業が設備投資をしたくとも、人材不足を理由に投資に待ったをかけているそう。
そんな中、2022年7月7日、北海道十勝の起業家やベンチャー企業に対して出資等のファイナンス支援、事業支援、ビジネス講習、人材支援等を行う合同会社コントレイルは、都市圏の人材と十勝の企業をマッチングさせるUIJターン専門求人Webメディアを立ち上げる北川宏氏への出資を決定しました。
そして、同氏が立ち上げたのが株式会社スマヒロ(本社:帯広市、代表:北川宏、以下 スマヒロ)。同案件は、コントレイルとして1号案件だそうです。
スマヒロは、「圧倒的におもしろいメディアが地方を救う」というコンセプトのもと、デジタルメディアの力で十勝のあらゆる課題を解決する企業です。
先ずは、地域最大の課題のひとつ「人材不足」を解消するため、移住促進事業「U・I・Jターン専門求人Webメディア」を立ち上げるとともに、地域住民のコミュニケーションツール「地域SNS」とブロックチェーン技術を使った仮想通貨(地域通貨)を組み合わせた地域活性化事業のほか、地域のBtoBとBtoCでのローカルダイレクトマーケティングを可能にするシステムを組み込んだ新たなWebメディアを誕生させ、地域活性化と地域の魅力発信を兼ね備えたデジタルメディア運営を通して、十勝地域の発展に寄与することを掲げています。長いですね。
同氏に出資を決めた合同会社コントレイル
の代表社員である株式会社そらの代表・米田健史氏は、「大都市圏への人口流入が続く中で、地方の力は徐々に失われつつあります。人口減少→人材不足→企業の衰退→地域の衰退という悪循環を好転させるには、地域に根差した企業が生まれ、雇用を創造し、地域を活性化させる必要があります。スマヒロはデジタルメディアを通して“人”に対し、情報提供の最大化を図ることで地域課題を解決できます」と期待。
同じく代表社員の株式会社山忠ホールディングスの池内幸介氏も「移住促進事業は自治体を中心に頑張ってきましたが、情報発信力とコンテンツづくりなど運営面で苦戦しています。東京と海外で実績を積み、実現力の高い北川さんが地元に帰ってきたことは、渡りに舟でした。移住エンゲージメントが高い現在だからこそ必要な人材です」と話します。
UIJターン専門求人Webメディアが地方移住を加速?
スマヒロが最初に手掛ける「UIJターン専門求人Webメディア」とは、地元十勝のために成長を続ける企業と、都心で仕事や学識などの経験を積みながら、田舎暮らしや地方移住を希望する人をマッチングさせるWebメディア。
「十勝から全国・世界に羽ばたく企業と、夢や情熱に溢れ、豊かな食文化を求める、Uターン・Iターン・Jターンを希望する方に、とかちの仕事と暮らしを紹介してつなげます」(北川氏)。
働き方は、「十勝の企業で働く」と「十勝で働く」の2通りで、十勝の企業の将来を担う優秀な人材を求める野心的な企業と向上心あふれる野心的な人材をつなげるとともに、十勝にいながら全国の企業の仕事を請け負える仕組みです。十勝の企業に勤めるだけじゃなく、リモートワークを推奨し、働く場所を自由化させた企業に所属しながら、十勝で働くひとを対象に情報を発信していくそうです。
果たして、本当に都心に住む人材に情報が伝わるのでしょうか。
「ご安心ください。ターゲットである地方移住のエンゲージメントの高い人の検索キーワードを分析して、ターゲットがGoogle検索した際に目につくよう、上位に表示される記事を量産します」(同氏)
スマヒロの強みは、インターネット検索した際に上位に表示されるSEO記事が量産できることに尽きます。
「もちろん、求人情報やクライアントのWebページへ自然にターゲットが流入する導線を作った後は、訴求効果が確実に見込めるWeb広告をあわせるとともに、新聞・テレビ・雑誌・Webメディアへのプロモーションなど総合的に支援できる点です」(同)
移住促進事業は、全国の自治体で力を注いでいますが課題はひとつ。移住希望者に移住を検討するきっかけとなる情報を確実に伝えられるかです。
ある自治体の移住促進担当は言います。「移住促進専用のWebページは作ってきましたが、定期的な記事の更新やターゲット層に訴求できているかを測るまでには至っていません。単年度予算で動く行政機能では限界があるんです」。
だからこそ、スマヒロは「UIJターン専門求人Webメディア」を立ち上げるというわけです。北川氏は業界紙・地方紙・経済誌の記者として、取材を通して政治・経済を学び、その後は出版社で編集者となり、メディアを作り、運営するノウハウを経験。2013年から2020年までタイに住み、ASEANを中心に視野を広げ研鑽を積み上げてきました。
本帰国後と同時に24年ぶりにふるさと十勝に戻り、いかに、自らの経験が地元の地域課題に役立たせるかを考え抜いた後に、株式会社スマヒロを立ち上げたそうです。
「十勝を離れてから24年。常に、いずれはふるさとに戻りたい、子どもを地元で育てないと考えていました。ただ、数年のキャリアでは足りないので、絶対に役立てると確信が持てるまで経験を積み上げていきました」(北川氏)
圧倒的におもしろいメディアが地方を救う
コントレイルの投資1号案件となったスマヒロですが、事業創発した際は、現在のビジネスプランではなかったそう。
起業前、北川氏は北海道帯広市長の米沢則寿氏と野村総合研究所、帯広信用金庫など地元金融機関が十勝から事業を創造する起業家を育成するプログラム「とかち・イノベーション・プログラム(略称:TIP)」に参加。そこで、発表したのが「シン・地方メディアDX事業」でした。このとき、すでに「圧倒的におもしろいメディアが地方を救う」というスマヒロのビジョンでありコンセプトは決まっていました。
同事業は、DX化されていない地方メディアが多い中、テクノロジーを積極的に採用したメディア開発をするとともに、地元十勝を題材にしたあらゆるコンテンツで魅力を発信。十勝に住む人にとって、なくてはならないメディアでありつつ、十勝以外に住む人たちから注目されるメディアを目指しました。
TIPでの最終発表では多くの反響を呼び、それを見たコントレイルが北川氏に声をかけ、起業に至りました。
その過程で、先ずは直近の課題である「人材」事業やWebメディア開発や運用、広報支援などのコンサルティングで収益を上げた後に「シン・地方メディアDX事業」を実現させるプランへと変更したそうです。
とはいえ、「圧倒的におもしろいメディアが地方を救う」とはどう救っていくのでしょうか。北川氏の想いが込められた「シン・地方メディアDX事業」の発表動画を観るのが一番わかりやすいので御覧ください。7分です。
いかがでしたでしょうか。北海道十勝発のシン・メディア会社「スマヒロ」の強みは、帯広市長をはじめ、地元金融機関や地元企業がファンになっている点かもしれません。もちろん、移住者を増やし、十勝を世界に発信するという結果も大事です。なにより、「スマヒロ(北川)ならやってくれるんじゃないか」という期待感の高さも感じました。そして、スマヒロに感じたのは、十勝が必要としていた確実に具現化する力を持つプレイヤーの登場でした。