帯広で映画を観た!シネマ de 十勝は、帯広で働く腐女子。「総統」と呼ばれた女子が、身の回りの幸せ(美味しいご飯・趣味・脳内妄想など)で足るを知る小市民として、十勝の観光文化検定(とかち検定)上級合格の実力を発揮しつつ、帯広・十勝の話をしつつ、映画を語るコラムです。
前回のコラム「帯広で映画を観た!」はコチラ
いきなりですが「666」といえば・・・?
あなたの「獣の数字 666」はオーメンから?
アレスター・クロウリーから?
いや、普通に「新約聖書」ヨハネの黙示録からの方もいると思うんですが。
映画本編を見たことがない人でも「666」といえば→『オーメン』は割合有名なイメージなのではないでしょうか。
見たことがない人も知ってるレベルにおいては「ブリッジで階段降りてくる」といえば→『エクソシスト』級だと勝手に思ってます。
『オーメン:ザ・ファースト』
さて、今回見た映画『オーメン:ザ・ファースト』。6月6日6時に生まれた悪魔の子ダミアンで有名な『オーメン』の前日譚です。「ダミアンはいかにして生まれたか」を描く、ホラー作品!!
私、長期的な記憶力が薄いので、余程の作品でもない限り、映画も小説も新鮮な気持ちで見ることができる方です。(なのでこのコラムを書くときは、前作や原作、関連作品がある映画も「初めてさんでも大丈夫か?」あえて事前には見返さない・見ない状態で行くことにしています)
断片的に中途半端な記憶は残っているので「あの人『オーメン』出てくるはずなのに、死にそう……死んだ!?」「『オーメン』出てたの、同じ名字なだけで兄弟か何かだったのかしら!?」みたいな目に遭ったりするわけですが……。
知っていても知らなくても『オーメン:ザ・ファースト』は十分に単体で完結した作品だと思いました。
観客は、幻視能力や過去のトラウマに悩まされながら、ローマの女子修道院(&その中にある孤児院)で起こっている不穏な出来事に巻き込まれていくマーガレットを通じて、ダミアン出生の秘密(何のために? どうやって?等)を知っていきます。
有名作のタイトル・世界観を引き継いだシリーズ作品は、それだけで「ある程度興行収入は見込める」と気の抜けた作品を作ることもできるのに、『オーメン:ザ・ファースト』は全然あぐらをかいてない作品でした。気が抜けていないどころか、パワーアップしている印象すらある。
2024/5/16現在、今年見た中で(そんなに見てないですが……)
洋画・超大作部門でのマイベストは『オッペンハイマー』ですが
長編部門での暫定1位は『オーメン:ザ・ファースト』
主演女優賞はネル・タイガー・フリーに決定です!!
(邦画部門のマイベストは『ゴジラ -1.0』)
とはいえ私、そんなにホラー作品が得意ではないです。よく分かっていないなりに、自分にとってのホラーの醍醐味は
・不条理
・怖さの盛り上げ
・正直者のグロテスクさ
だと思っています。特に一番最後の、極限状態など際に置かれた人間だから許される(通常運行のヒューマンドラマ等でその言動をすると怒られかねない)身勝手さやゲスい言動がいかに引き出されているか、に魅力を感じます。
怪異現象や大量虐殺がメインのホラーだと、相手がエイリアンや謎の怪物、正体不明の殺人鬼にせよ「急にヒグマのターゲットとなり、襲われ、追い詰められていく」話に近い怖さや不条理さが核だと思っていますが、『オーメン:ザ・ファースト』はそれだけに留まっていません。
しっかり怖がらせてくれるのに、「ダミアン出生の秘密」という謎解きパートもしっかりしていて、散りばめられた謎ピースが最後に綺麗にはめられていくのを見て「そうだったのか!」「こういうのが見たくて映画を見てるんだよ!」と、思わせてもらいました。
何なら、完成度が高いのに「続編まだ出せます! 出させてください!」と言わんばかりの勢いを感じました。スピンオフとして、ターミネーター『サラ・コナー クロニクルズ』みたいな展開の仕方をしてもおかしくない。というか「その後の話を見せて?」と大変気になる終わり方です。
グロテスク表現にご注意を!
ともあれ悪魔の子ダミアン出生にまつわる話なので、当然作品中には、強制生殖・不同意性交が登場します。
行為自体は『オッペンハイマー』ほど直接的ではないけれど、ほのめかし性描写は有り。
しかし、その点については「ノリノリで子供作る方が怖いし、テーマから察して!!」で済むので、そもそも家族や友人と見に行って気まずい思いをする人は少ないかと思うんですが、むしろ気をつけた方がいいのはそれより、グロテスクなシーンだと思います。
映画としての出来はすごくいいと思うので、映画館でなくてもぜひレンタルサービスや、サブスクなどで見てほしい!! 洋画好きには推せる!!「ただし気持ち悪い映像が苦手な人は除く」作品です。
例えば、幻視能力のある主人公が、孤児院の分娩室で出産を垣間見た時、妊婦の膣から悪魔の手が出てきて「これは現実か幻視か!?」みたいなシーンがあるのですが、そのシーンが引っかかって本国でNC-17(18禁相当)になりかけたところ、多少ボカしてレーティングが下がったという……。
しかし、個人的にはとてもいい映画だと思っているのに、このコラムの公開日が帯広での上映終了日なんです……。
割とそういう、自分の評価と世間の評価って、ずれることありますよね……。
私の中での『ホラー×十勝』の印象
気を取り直して、ホラーでグロテスクな話と十勝ゆかりのものとを繋げるのは難しいので、内容全く無視して「欧米」「キリスト教会」「孤児院の子供たち」の連想から、帯広最初の幼稚園「双葉幼稚園」の話をしたいと思います。
2011年に開園100周年を迎え、2013年に100回目の保育証授与式をもって閉園した帯広の双葉幼稚園は、1911年(明治44年)に「双葉園」として聖公会伝道師が開設しました。
私が「十勝の観光文化検定(とかち検定)」上級試験に合格した時(四者択一や記述式含めた全66問、100点満点中80点以上で合格)
最後に出た記述問題(配点10点)で出てきたのが、この双葉幼稚園です。
問「双葉幼稚園について、次の3つの単語すべてを使用して、150字以上200字以内で記述しなさい」
①重要文化財
②臼田梅
③青い目の人形
「150字も書けるかあっ!!??」「詰んだ……」「重要文化財……国、北海道、帯広市のどれだっけ……」と思ったのを懐かしく思い出します。
そんな風に、キリスト教系幼稚園でスリリングな思いをしたわけですが。
帯広双葉幼稚園の概要
梅鉢型と丸屋根ドームが特徴的な旧双葉幼稚園園舎は、1922年(大正11年)の落成です。
2017年に国の重要文化財に指定されており、今はNPO法人「双葉の露」によって、土・日・祝のみ10時〜15時に公開され、内部の見学が可能となっています。(大人300円、高校生以下無料)
駐車場の場所や許可証については、幼稚園の受付でご確認ください。(土・日・祝のみ東四条交番北側、オカモトの社員駐車場を利用する形式のため)
園舎内は撮影禁止となっていますが「では直接訪れた人以外見られないのか?」というと、意外なシーンで使われており、全国誰でも中の光景を(一部ですが)見ることが可能です。
スピッツファンの巡礼地としての顔
スピッツのデビュー30周年を機に帯広で収録、WOWOWで放送・配信された『優しいスピッツ a secret session in Obihiro』の収録場所が、旧双葉幼稚園の園舎だったためです。(既に、メイキングなどを加えた劇場版『優しいスピッツ』のDVD&ブルーレイも販売されています)
楽屋として使用された部屋の壁にはメンバーのサインが残されており、幼稚園の卒業生含めた地域住民のみならず、スピッツファンの巡礼地ともなっています。
歴史を感じる青い目の人形
またテストにも出た「青い目の人形」が、保存状態良く残されています。
これは1927年(昭和2年)アメリカ人宣教師シドニー・ギューリック氏の発案で、両国の友好を願い日本に贈られた友情人形の1体です。
新一万円札の顔となる「近代日本経済の父」渋沢栄一がその人形の仲介役を担い、日本からも答礼人形が送られました。
しかし後に敵性人形として廃棄されるなどし、1万2000体を超えた「青い目の人形」は激減し全国でも残っているのは300体ほど。十勝には4体が現存しています。
双葉幼稚園の「ベティー・ジェーン・ローズ」は二代目園長・臼田梅が匿ったことで難を逃れ、今も衣装やパスポートなどとともに綺麗な状態で展示されている姿を見ることができます。(ポストカードも販売されています)
しかし情緒がある人間ではないので、そんな歴史ある建物を訪れ可愛い人形を見ても、シドニー・ギューリック氏の孫ギューリック3世から贈られた「スザンヌ」を見て、「個人的にはどちらがホラー映画に登場しそうかというと、スザンヌの方が趣がある……」などと思っていたことは内緒です。
スザンヌがどんな顔・造形をしているか、気になる方は直接ご確認ください。