作品名:市場
著者:北川ナヲ
出版社:文芸社
幾度の困難を乗り越え、辿り着いた場所は…!?
300年以上の歴史を持つ日本橋市場。その市場に移転問題が生じ、移転派と非移転派に分かれ、ハブとマングースのような攻防がはじまるのです。
知らんけど。
その攻防の最中、震災、戦争といった壁も立ちはだかりひっちゃかめっちゃか。
はい。紆余曲折です。
そんな幾度の困難を乗り越え、たどり着いた先は〝築地〟
みなさん築地市場はご存知ですよね。
今は豊洲に市場が移りましたが、その際にも移転問題でひっちゃかめっちゃかだったことを記憶しております。
何か大きな出来事が起こる時にドラマが生まれるのかもしれませんね。
メークドラマでしょうか。
んー。どうでしょう。
そんな背景も含め、日本橋市場、築地市場、豊洲市場といった歴史の立役者、〝奥村豊〟の物語に注目です。
なにかを成し遂げたい人はこの本を読もう!
主人公の奥村豊の活躍は、一見、ロックンロールよろしく矢沢永吉ばりの成り上がりのようにも見えますが、私はそのようには感じませんでした。
周囲の人に信頼され、期待され〝押し上げられた〟ように感じました。
まさに、なるべくしてなった。という感じ。
あぁ。私も彼のような人望のある人間になりたい。
人を大切にすることで人に大切にされることをこの本から学んだ気がします。
また「面白いな。そう考えると不謹慎かもしれないが、東京に未曾有の被害をもたらした大地震も、魚河岸の未来を発展させるために仕組まれた必然だったのかもしれないな」
この文章にはキャッツ❤︎アイの魂が宿っているのか、心を奪われてしまいました。
不幸なできごとも、なにかの〝きっかけ〟と捉えられると、行き詰まった時や苦しかった時の出来事が、必要だったと思うことができるのかもしれないですね。
上を向いてばかりではなく、ちゃんと足元を見よう!
この本は、日々の忙しさに追われ〝日常〟の大切さを、横山やすし師匠の「メガネメガネ」のように見失っている人に読んでほしいんです。
だって、そこにあるんですから。
日本で生活していると当たり前に食べている魚。その魚をいい品質で、安く食卓に届けるためには彼らのような存在が必要不可欠なのです。
このストーリーから、彼らの想い、努力を知り〝当たり前〟の尊さを再認識して日々を過ごしてほしいと思います。
日本の食文化を支えた、奥村豊の波乱万丈な人生。
あなたにも知っていただきたい1冊です。
Profile
小川 洋輝 | ブックカフェ「Sen」オーナー
1985年、北海道幕別町出身。高校を卒業後、福祉施設にて勤務。知的障がい者の入所施設や就労支援施設、障がい児の通所施設の経験を経て一般社団法人青鳥舎を設立。 障がい者の親が安心して死ねる社会を創るために 障がい者雇用のコンサルテーションや障がい福祉サービス事業所のコンサルテーションを行う。2015年10月より自ら障がい児の通所施設を開設。障がい福祉や子育て関連の専門書などが並ぶブックカフェ「Sen(せん)」は2022年4月オープン。23年、絵本『やっちゃれ ほっちゃれ もっきっきー!』(みらいパブリッシング)か出版。毎週金にスマヒロで書評を担当