作品名:夫妻集
著者:小野寺史宜
出版社:講談社
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それぞれの家庭にある問題と、その先にある幸せを描いた日常系ストーリー
この作品は小野寺ワールド全開の日常系ほっこり短編集。物語は5つの短編から構成されていて、4つの夫婦のストーリーが交差ながら展開していくんです。
はい。このストーリーの交差が小野寺ワールドの醍醐味なんです。
それぞれの夫婦に突然訪れるアクシデント。それをどう乗り越え、どう未来に繋げていくのかが最大の見どころです。
著者の小野寺さんの描くキャラクターたちはリアル感が強く、それが物語の世界に引き込んでくれるとボクは思っています。
今時の言葉で言わせてください。沼ります。
作品の中の世界も、現実世界と同じで世間は狭く、実はみんな繋がっているところは、性善説と同じくらい興味深いんです。またクライマックスの、とある夫婦が起こる問題と現実、そして自分自身に向き合い下す決断。
その決断がこの作品の真骨頂です。
どんな決断であっても〝前に進むための前向きな決断〟
そして、なんだかんだあっても「夫婦っていいな」と思わせてくれるあったかホーミングな作品です。
各ストーリーの人物が繋がっているのは、読み進めるのが楽しくなりそうですね!
そうなんです!頭の中で相関図を描きながら読むのが楽しいんです。
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自分が◯◯の立場だったらと感情移入が止まらない
まずはじめに登場するのは佐原夫妻。
娘を持つ父親の誰しもが体験したくないアレに直面するんです。
はい。彼氏を連れてくるんです。
僕に娘はいないけど、気がついたら感情移入しちゃって彼氏を査定しちゃうんです。そしてまた、沸いてきた感情も同じで疑似体験している感覚に陥りました。
次に登場する足立夫妻は、新婚早々奥様の転勤で別居。そしてちょっとしたすれ違いから気まずい関係になってしまうのですが、このすれ違いの理由も共感できちゃう。
共感できちゃうと言うか、そりゃそうだろ的な。
はい。先に謝っておきます。ごめんなさい。
こんな感じでどのストーリーにも共感できるのが面白いんです。
男性が読んだ感想、女性が読んだ感想を話し合える場があると、きっと気まずい雰囲気になるので、それはやめておきましょう。笑
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夫婦のカタチに正解はない
夫婦と聞くとイメージするのはやっぱり、ノムさんとサッチーですよね。
あ、違うか。
だけど、おしどり夫婦とも言うようにお互いに仲が良くて、協力し合い、いつも一緒にいるイメージはありますよね。
この物語にでてくる夫婦は、年齢も結婚期間も家族構成もバラバラ。なので夫婦のカタチもバラバラで、それぞれなんです。
なのに「どれもいい!」と思わせてくれるのは、いざこざの背景に「寄り添い」を散りばめているかかもしれません。この寄り添いを全面に出さないで背景に隠しているから温かい。
各危機に直面した時こそ、さりげない寄り添いって大事ですよね。
さりげない優しさって素敵ですよね。なのに男性ってうまくできないみたいです。その不器用さにも温かさはあるんですよね。
それぞれの夫婦の問題と危機。そしてその先の物語。夫婦で読んでみるのもいいかもしれません。
Profile
小川 洋輝 | ブックカフェ「Sen」オーナー
1985年、北海道幕別町出身。高校を卒業後、福祉施設にて勤務。知的障がい者の入所施設や就労支援施設、障がい児の通所施設の経験を経て一般社団法人青鳥舎を設立。 障がい者の親が安心して死ねる社会を創るために 障がい者雇用のコンサルテーションや障がい福祉サービス事業所のコンサルテーションを行う。2015年10月より自ら障がい児の通所施設を開設。障がい福祉や子育て関連の専門書などが並ぶブックカフェ「Sen(せん)」は2022年4月オープン。23年、絵本『やっちゃれ ほっちゃれ もっきっきー!』(みらいパブリッシング)か出版。毎週金にスマヒロで書評を担当
楽しく生きるためのヒントが詰まったこの1冊は、未来の自分に期待をさせてくれるかもしれません。
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