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【書評】本の虫 小川の本棚 「カンヴァスの恋人たち」presented by Book cafe & bar Sen 039

作品名:カンヴァスの恋人たち
著者:一色さゆり
出版社:小学館

愛と芸術をテーマとしたワクワク・ドキドキの物語

美術館で学芸員として勤める貴山史絵は、かつて地元で活躍した高齢の女性画家、ヨシダカヲルの展覧会の担当に抜擢される。そのヨシダは美術界から一線を退き、山奥ににあるアトリエでひとり絵を描き続けていたのです。史絵は、今ではほとんど名を聞くことがなくなった作家の展覧会の開催に疑問を抱きながらも、ヨシダとの交流を重ねるうちに、彼女の人柄と作品の魅力に惹き込まれていくのです。

はい。人生を変える出会いだったのです。

東京で働く恋人との関係、職場での人間関係、学芸員としてのキャリアなど、史絵の悩みは現代を生きる女性たちのリアルな悩みと言っても言い過ぎではないでしょう。

迫る展覧会に立ち塞がるいくつもの壁。それでも絶対に開催したい強い想い。

最後の1ページまで、目が離せない一色さゆりさんの渾身の一冊です。

この作品を書き上げるまでたくさんの時間を費やした著者の意識さんは語ってますね!
そうなんです。どうしても納得のいくものにならず丸三年かかったそうです!

文章の中からでも見えるヨシダカヲルの作品とメッセージ

登場する画家ヨシダカヲルは架空の人物であり、もちろんその作品も架空です。それなのに登場人物と同じように、私たちも彼女に心を奪われ、作品に優しく包まれる感覚は、すごく不思議な感覚です。

それはもう、頭の中で作品展が開催されている状態です。

それだけ、キャラクターの人間味を表現できているのだと私は理解しています。

文字の中に命が宿っているんです。

そんな風に実在する人を描いたかのような温もりさえ感じます。

はい。赤ちゃんの時に感じた母の体温のような心地よさです。

芸術家であり、のび太のおばあちゃんのような優しさいっぱいのヨシダカヲルと、その芸術作品はあなたのままで大丈夫」と語りかけてくるでしょう。

その他にも「私は、幸せになるために芸術をやるんです」など、多くの読者の心の奥に届くキーフレーズが満載です。

作者の人となりを入り口にアート作品の興味に持ってみる

今でこそ、時どき美術館に足を運ぶようになったボクも、まだまだアートの「ア」すら理解していません。そんなボクがアートに興味を持ったきっかけも「アート小説」でした。作品よりも先にアーティストの生涯を知ることで、「作品も見てみたい!」と思えたのです。

だからこそ、この物語、いいやヨシダカヲルに惹かれることで、いったいぜんたいどんな作品を描くのか気になってくるはずです。

実在する作家さんや作品も登場するので調べながら読みました。

残念ながらヨシダカヲルの作品を見ることはできませんが、この小説がきっかけでアート作品やアーティストと距離が縮まるきっかけになるかもしれません。

たしかに、その人を知っている方が作品に興味が持てますよね!
興味を持つきっかけはなんだっていいと思います。むしろたくさんの入り口をつくることが大切です。

表紙からも伝わる〝アートのチカラ〟

そのチカラを存分に発揮しているヨシダカヲルに、あなたも会いに行きませんか?

 

Profile

小川 洋輝 | ブックカフェ「Sen」オーナー
1985年、北海道幕別町出身。高校を卒業後、福祉施設にて勤務。知的障がい者の入所施設や就労支援施設、障がい児の通所施設の経験を経て一般社団法人青鳥舎を設立。 障がい者の親が安心して死ねる社会を創るために 障がい者雇用のコンサルテーションや障がい福祉サービス事業所のコンサルテーションを行う。2015年10月より自ら障がい児の通所施設を開設。障がい福祉や子育て関連の専門書などが並ぶブックカフェ「Sen(せん)」は2022年4月オープン。23年、絵本『やっちゃれ ほっちゃれ もっきっきー!』(みらいパブリッシング)か出版。毎週金にスマヒロで書評を担当

楽しく生きるためのヒントが詰まったこの1冊は、未来の自分に期待をさせてくれるかもしれません。







































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