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【書評】本の虫 小川の本棚 「あいにくあんたのためじゃない」presented by Book cafe & bar Sen 041

作品名:あいにくあんたのためじゃない
著者:柚木麻子
出版社:新潮社

6つのストーリーのすべてが最高傑作!元気になれるエンタメ小説

ボクがこの本を知ったけっかけはとある作家さんのSNS。大好きな作家さんが新幹線の中でこれを読むと呟いていたのを見て気になっていました。もちろんそれだけではなく、エッヂの効いたタイトルに心を奪われました。

はい。タイトル重要です。

実際に読んでみると、過去のブログが炎上中のラーメン評論家の物語からスタートするのですが、これがまた痛快でスカッとするんです。その後、夢を語るが行動できないフリーター、なぜか潰れないマダムショップのお話。そして、あの『笑い犬の生活』に登場する小菅部長の名ゼリフ「がんばれ、負けるな、力のかぎり生きてやれ」を彷彿とさせ、感情移入しまくりで応援したくなる落ち目の元アイドルの物語で終わる超エンタメ小説だったのです。

余談ですが、冒頭のとある作家さんを真似て特急列車で一気読みしました。

はい。大作家気分です。

まさにこの令和の時代に生きる私たちの共感ど真ん中の話題がてんこ盛りなんです。

表紙の緑色の背景にオレンジ色の文字にもインパクトがありますね!
この表紙からも、内容と同じくらいの力強さを感じます!

読むだけで元気がもらえるエナジードリンクのような本

日々前向きに生きているボクらだって、気分が落ち込む時だって必ずあります。

そんな時にSNSを見ると、隣の芝は青く見え、ことさら落ち込んでしまうものです。

心がお疲れなあなたへ次ぐ。

「今すぐにスマホを置いて、この本に持ち替えなさい」

はい。それくらい世知辛いこの世の中を生き抜く勇気をもらえます。

読むと背中に翼が生えてくる感覚に陥る理由は、6つの短編ストーリーすべてに共通する〝優しさ〟なんです。その優しさは、「甘さ」ではなく「叱咤激励」の優しさなんです。

どのストーリーにも「やれやれ」感がダダ漏れしている人物がいて、最後にはちゃんと〝愛のあるヤキ〟を入れるんです。

その愛情たっぷりの〝ヤキ〟は読んでいるボクらの心にもしっかりと届き、「頑張ろう」と思えるのです。

言ってみれば「頼れる先輩」のような作品です。

読むなら今!!この本は鮮度が大切です。

2019年から2023年までに書いた短編をまとめたこの本は、社会風刺もある尖った作品です。

はい。かつて切れたナイフと言われた出川哲郎さんのような尖り方です。

毒舌あり、ユーモアあり、奇想天外なストーリーありの中に、しっかりと〝現代〟があるのです。

現代を生きる我々、そしてその現代を生きるストーリーの登場人物。

その鮮度を保っている今読むことで、この本の面白さは本領発揮できるのだと思います。

「スカッとジャパン」のミニドラマを見ている感覚で読めるこの本は、活字に苦手意識のある10代から30代の方にどストライクかもしれません。

短いストーリーの中でのスカッと感!!おもしろそうです!

この本は、「痛快!」という言葉がピッタリです!

短編だからこそ、順番に関係なく気になる1話だけ読めばいいんです。

そんなライトでポップなこの本は、誰にとっても読みやすい1冊です。

 

Profile

小川 洋輝 | ブックカフェ「Sen」オーナー
1985年、北海道幕別町出身。高校を卒業後、福祉施設にて勤務。知的障がい者の入所施設や就労支援施設、障がい児の通所施設の経験を経て一般社団法人青鳥舎を設立。 障がい者の親が安心して死ねる社会を創るために 障がい者雇用のコンサルテーションや障がい福祉サービス事業所のコンサルテーションを行う。2015年10月より自ら障がい児の通所施設を開設。障がい福祉や子育て関連の専門書などが並ぶブックカフェ「Sen(せん)」は2022年4月オープン。23年、絵本『やっちゃれ ほっちゃれ もっきっきー!』(みらいパブリッシング)か出版。毎週金にスマヒロで書評を担当

楽しく生きるためのヒントが詰まったこの1冊は、未来の自分に期待をさせてくれるかもしれません。









































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