作品名：ぎょらん
著者：町田そのこ
出版社：新潮社
2024.07.19作品名：おはなしのは
著者：森本千絵
出版社：講談社アートディレクターが描くあたたかな母子の物語
著者である森本千絵さんは、ア...
たまたま手にした本が、お気に入りの１冊に
ボクの運営するBook cafe&bar Senには、たびたび本を寄贈してくれる人が来店するのです。今回紹介するこの本も、数冊まとめて寄贈していただいた中に紛れていた１冊でした。
さらに買ったもののまだ読んでいない本、いわゆる積読もたくさんあったため、本をいただけいてから読むまでに３ヶ月以上は経ってしまいました。
もちのろん、町田さんの他の作品はいくつか読んでいたので、興味はあったのですよ。
はい。カッコ悪い言い訳です。
で、で、ですよ。
いざ、読んでみると「なんで、もっと早く読まなかったんだ！」と後悔するほどおもしろく、一気読みするくらい自分にぴったりだったんです。
何気ないきっかけで手にした本、それが自分と相性が良く、その著者がもっと好きになる。
そんな経験をしたのがこの『ぎょらん』です。
たまたま読んだ本が、自分にぴったりって嬉しいですね！
むしろ、こうゆう本との出合いが読書の幅を広げてくれるのだと思います。
『タイトル』からは想像できない深いストーリー
この本を手にした時、「魚の卵か」と安易に想像し、読み始めるまでに時間がかかったのですが、同じような経験はありませんか？
タイトルだけで勝手に想像し、いい本との出合いを逃していることも多いのだと気が付かされました。
さて、この本の内容に話を移しますね。
人が死ぬ際に残す赤い珠が「ぎょらん」。なぜそんな名前で呼ばれているのかは、想像の通りです。この「ぎょらん」を噛み潰せば、死者の最後の願いがわかるのだというのだが、これは事実なのか都市伝説なのか？主人公の朱鷺は地方都市の葬儀会社に勤める元引きこもり。この朱鷺の傷ついた心の再生を描くこの物語は、７編のストーリーで構成されています。
身近な人の死に直面した際、もし「ぎょらん」を見つけたとしたら、あなたはそれを噛み潰しますか？それとも、そうせずにいますか？
ひとつひとつのストーリーを、噛み締めるように読むのがおすすめ
この作品は２つの視点で楽しめるとボクは思っています。まずは、主人公の朱鷺の成長ストーリー。もうひとつは「死」をテーマとした死生観を学べるストーリーとして。
一見すると、成長と死は相反するのですが、その「死」を通しての成長は、痛いほどよくわかります。冒頭で「一気読み」と書きましたが、本当はそんな読み方じゃなく、イクラをひと粒ずつプチっと噛み潰すように、１話づつ噛み締め、味わって読んで欲しいと思います。
そうすることで、何倍もこの本の旨みを感じることができると思います。
惹きつけられる本を、ゆっくり読むのって難しそうですね。
そうなんです。でも、この本は、大切な人を想像し、味わいながら読んで欲しいです。
大切な人を、より大切に思えるこの本は、読んで損のない１冊です。
Profile
小川 洋輝 | ブックカフェ「Sen」オーナー
1985年、北海道幕別町出身。高校を卒業後、福祉施設にて勤務。知的障がい者の入所施設や就労支援施設、障がい児の通所施設の経験を経て一般社団法人青鳥舎を設立。 障がい者の親が安心して死ねる社会を創るために 障がい者雇用のコンサルテーションや障がい福祉サービス事業所のコンサルテーションを行う。2015年10月より自ら障がい児の通所施設を開設。障がい福祉や子育て関連の専門書などが並ぶブックカフェ「Sen（せん）」は2022年4月オープン。23年、絵本『やっちゃれ ほっちゃれ もっきっきー！』（みらいパブリッシング）か出版。毎週金にスマヒロで書評を担当
楽しく生きるためのヒントが詰まったこの１冊は、未来の自分に期待をさせてくれるかもしれません。
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