【書評】本の虫 小川の本棚 「ほしじいたけ　ほしばあたけ　〜じめじめ谷でききいっぱつ〜」presented by Book cafe & bar Sen 070

作品名：ほしじいたけ　ほしばあたけ　〜じめじめ谷でききいっぱつ〜
著者：石川基子
出版社：講談社

子どもと関わるプロからいただいた読み聞かせ即戦力の１冊

ボクが運営するブックカフェには、今日もさまざまなお客様が訪れてくれる。福祉関係者に教育関係者、そして子どもたちと日々奮闘する保育関係者まで。それに加え“読書の猛者”と呼ばれる本が大好きな人たちが集まる場所だ。彼ら彼女らはカフェにある本や持参した本を片手に、いつも読書談義に花を咲かせている。

そんなブックカフェに、ある日「お土産」としていただいたのが、この「ほしいじいたけ ほしばあたけ」という絵本。

「え、何これ？！」とタイトルにまず心を奪われる。

しっかりと脳裏に刻まれるインパクト。これを贈ってくれたのは、毎日子どもたちと遊んでいるプロの保育士。「子どもたちが絶対食いつきますよ」と、言わんばかりの自信たっぷりな笑顔が印象的。

タイトルからして、もう子どもたちが興味を示さないわけがない。何せ「ほしいじいたけ」と「ほしばあたけ」だ。

読んでいるうちに、「一体どういうきのこなのか」と、こちらも気になり始める。じいたけもばあたけもきっと個性豊かなキャラクターに違いない。そんな絵本を渡されたら、次に誰かに読み聞かせたくなるのが人情というもの。

と、いうことでおがわに活動にも、ブックカフェの絵本コーナーの目玉にも活躍する１冊なのです。

 

きのこたちの魅力とユーモアのコラボレーションに心を奪われた

ボクは絵本の文章作家としても活動しているので、絵本を読むときには、物語を楽しむだけじゃなく、「これ使えるかも…」と創作のヒントを探す目も働いてしまう。

そんな中で、この絵本に出会ったときは、正直、「やられた！」と思った。

だって、主人公が子どもたちの生活に馴染み深いきのこ。しかも「干し」が冠につく。もうこの時点で、なにやらただならぬ予感がするじゃないか。

物語は、カラッカラに乾いた「ほしじいたけ」が大風に飛ばされるところから始まるのだが、この幕開けがまた最高。風に乗ってたどり着いた先で待ち受ける危険や大冒険は、どれもワクワクと驚きに満ちていて、ページをめくる手が止まらない。読みながら、「あっ、危ない！」「えっ、どうなるの!?」と、ついつい声が出ちゃう。

大人のボクでさえ、読んでいるとつい子ども心に返ってしまい、きのこの冒険仲間になった気分。

さぁ、あなたも冒険に踏み出してみませんか？

ちょっとした学びにも繋がるエンタメ絵本

この「ほしじいたけ ほしばあたけ」、ただの絵本だと思ったら大間違い。

実は、シリーズものなのだが、どの話にも共通しているのが「水を吸うと若返る」という、なんともシュールな設定。「まさかアンチエイジング？」水をちょっと吸っただけで、ピチピチの若者に変身。そんなことができるのなら、３９歳のおがわだって全力で水を吸いたい気分。

しかもこの若返り現象、家庭で簡単に再現できちゃうのが重要。

干し椎茸を水にドボンとつけるだけ。「食育じゃん！」とツッコミたくなるほど、教育効果抜群。そこから興味を持ち、親近感が湧き、ひと口でも食べてくれれば、大人たちの作戦成功。

それだけじゃなく、オノマトペを上手に盛り込んでいるのもまた魅力。これ、子どもたちの語彙を増やすのにも一役買いそうです。

これ読んだら、次の買い物で干し椎茸がついついカゴに入っちゃうかも？

 

楽しさと学びの要素が詰まったこに絵本。少しでも気になった方はお手に取ってみることをオススメいたします。

Profile

小川 洋輝 | ブックカフェ「Sen」オーナー
1985年、北海道幕別町出身。高校を卒業後、福祉施設にて勤務。知的障がい者の入所施設や就労支援施設、障がい児の通所施設の経験を経て一般社団法人青鳥舎を設立。 障がい者の親が安心して死ねる社会を創るために 障がい者雇用のコンサルテーションや障がい福祉サービス事業所のコンサルテーションを行う。2015年10月より自ら障がい児の通所施設を開設。障がい福祉や子育て関連の専門書などが並ぶブックカフェ「Sen（せん）」は2022年4月オープン。23年、絵本『やっちゃれ ほっちゃれ もっきっきー！』（みらいパブリッシング）か出版。毎週金にスマヒロで書評を担当

楽しく生きるためのヒントが詰まったこの１冊は、未来の自分に期待をさせてくれるかもしれません。