【書評】本の虫 小川の本棚 「特別支援教育に学ぶ　発達の気になる子の教え方　The BEST」presented by Book cafe & bar Sen 091

作品名：特別支援教育に学ぶ　発達の気になる子の教え方　The BEST
著者：渡辺道治
出版社：東洋館出版社

表紙のデザインに目が奪われ、タイトルに心が奪われた

本の装丁にも流行り廃りがあるようで、最近では“大人アニメ”のような雰囲気をまとった人物が描かれることが多くなった印象がある。華やかで目を引く反面、どこか似たような印象の表紙が並ぶ中で、ふと目に留まったのがこの本だった。

シンプルなのにどこかオシャレな色づかい、余白の使い方も絶妙で、何よりもタイトルに惹かれた。「発達の気になる子」——それだけでも気になるワードだが、そこに「BEST」とついている。これはもう読むしかない、と迷わず手に取った。

著者の渡辺道治さんについては、正直なところ、それまで名前も知らなかった。でも調べてみると、なんと北海道に縁のある方だと知り、ここで一気に親近感が倍増。勝手に「同郷のよしみ」のつもりで応援したくなってしまった。

読み進めるうちに、その文章のわかりやすさと視点の鋭さに引き込まれていった。そして、まだ半分ほど読み終えたところで、思わず友人に「これ、読んだほうがいいよ！」とメッセージを送ってしまうほど、お気に入りの一冊になった。

子どもに関わるすべての人に、ぜひ手に取ってほしい。専門書のようでいて、どこか温もりがあり、読む人の視野を広げてくれる。そんな一冊です。

 

この１冊に「救われる人」がどれだけいるか考えてみたい

この本は、「発達の気になる子」への基本的な知識と、具体的な関わり方の技術がていねいに解説されている一冊だ。著者の渡辺道治さんが、現場で積み重ねてきた実践をもとに、24のリアルなケースが収録されているのだが——これがもう、多くの人にとって、喉から手が出るほど欲しい情報の宝庫だと感じた。

たとえば、「癇癪を起こす子・不貞腐れる子への対応」「学校や教室に行き渋る子への対応」「衝動性が強く立ち歩いてしまう子への対応」など、挙げればキリがない。でも、正直この３つだけでも十分に読む価値があると思う。実際に関わっている人なら、きっと「これこれ！」「こういうのが知りたかった！」と膝を打つ内容ばかりだ。

そして何より、この本に書かれていることを、ほんの少しでも実践できたなら。子どもたちの自尊心の低下を防ぎ、その子らしい育ちを支える力になるはずだ。さらには、大人自身も「こうすればよかったのか」と関わりの中に手応えを感じられ、これまでモヤモヤしていた日常が、少しワクワクするものに変わっていくと思う。

そういう意味でも、この本はきっと、多くの子どもたち、そして関わる大人たちの“救い”になる一冊。迷っている人がいたら、ぜひ手に取ってみてほしい。

情報発信の大切さを知り、情報発信を誓う

前述した通り、この本を何人かの友人や知人に紹介した。すると、「めちゃくちゃ良かった！」「すごくわかりやすいね」と感謝の言葉が次々と返ってきたのである。

そのとき、ふと思った。

自分の中にある「情報」や「経験」って、もっともっと多くの人にシェアしていいんじゃないか、と。いや、むしろシェアすべきなんじゃないか、と。

だから、ここでひとつ誓います。

今後、自分が学んだこと、心に残ったこと、実践してうまくいったこと——それらは包み隠さず発信していこうと。

もちろん、そのためには“学び続けること”が大前提。そしてもうひとつ大事なのは、“それが正しい情報かどうかを見極める目”を持つこと。何を伝えるかだけでなく、「どう伝えるか」も含めて、責任を伴うのが発信という行為なのだと、この本を通じて改めて感じさせられた。

この一冊との出合いをきっかけに、自分自身の毎日をもっと丁寧に見つめ直し、そこで得たものを言葉にして、人に伝えていこうと心に決めたのだった。

 

発達の気になる子だけではなく、どんな人にも通じるこの内容は、誰かの生きやすさに繋がる１冊です。

Profile

小川 洋輝 | ブックカフェ「Sen」オーナー
1985年、北海道幕別町出身。高校を卒業後、福祉施設にて勤務。知的障がい者の入所施設や就労支援施設、障がい児の通所施設の経験を経て一般社団法人青鳥舎を設立。 障がい者の親が安心して死ねる社会を創るために 障がい者雇用のコンサルテーションや障がい福祉サービス事業所のコンサルテーションを行う。2015年10月より自ら障がい児の通所施設を開設。障がい福祉や子育て関連の専門書などが並ぶブックカフェ「Sen（せん）」は2022年4月オープン。23年、絵本『やっちゃれ ほっちゃれ もっきっきー！』（みらいパブリッシング）か出版。毎週金にスマヒロで書評を担当

楽しく生きるためのヒントが詰まったこの１冊は、未来の自分に期待をさせてくれるかもしれません。