【書評】本の虫 小川の本棚 「令和型不登校対応マップ　ゼロからわかる予防と支援ガイド」presented by Book cafe & bar Sen 097

作品名：令和型不登校対応マップ　ゼロからわかる予防と支援ガイド
文：明治図書
出版社：明治図書

気になる“令和型”の正体とは？

まずお伝えしたいのは、本書の著者・千葉孝司さんが、ボクたち北海道十勝とご縁のある方であるということだ。

千葉さんは30年以上にわたり、公立中学校で教鞭をとってきた経験を持ち、現在は「CHIBA T LABO」の代表として、いじめ防止や不登校支援に関する幅広い活動を行っている。

そんな「千葉ティ」（千葉Teacherの愛称）が、今の時代に合わせた“令和型”の不登校支援についてまとめたのが本書である。

はい。チビTではなく、チバTなのでお間違い無く。

読んでまず驚かされたのは、「不登校」という現象そのものが、時代とともに形を変えているという視点だった。

新型コロナウイルスの流行、SNSの急速な普及、そして学校を取り巻く環境の変化。

子どもたちを取り巻く状況が変われば、不登校の背景や理由も当然変わっていく。

だからこそ、私たち大人が持っている「かつての常識」では、今の子どもたちに対応できないことがある。

本書には、そうした時代の変化を踏まえたうえで、予防的な視点や実際の支援方法が、豊富な事例とともに丁寧に紹介されている。

子どもに関わるすべての人にとって、今こそ知っておくべき大切な内容が詰まった一冊である。

 

人間も不登校の理由も「多様化」した時代だからこそ

近ごろ、また不登校が増えてきている。そんな声を耳にすることが増えた気がする。

コロナ禍を経験し、SNSがあたりまえになったこの時代、子どもたちの悩みやつまずきの背景も、どんどん多様になっていると思う。

しかし、ボクらの子ども時代には、そのどちらも存在しなかったのだ。

だからこそ“令和の不登校”に、どう向き合えばいいのか悩んでしまう。

この本は、正解のない時代に生きる私たち大人に、ひとつの道筋を示してくれるのだ。

教師と子ども、それぞれの立場に立った会話のやりとりも紹介されていて、「ああ、こういう場面あるよな」と思わずうなずいてしまうリアルさ。

学校の先生だけでなく、保護者や福祉・教育に関わるすべての人にとって、きっと心に残るヒントがあるはずです。

悩みながらでも前に進もうとする大人に寄り添ってくれる、そんな一冊です。

相手に寄り添うとはこうゆうこと！

まず、「専門書」と聞いて、どんなイメージが浮かぶだろうか。

お堅い文章がずらりと並び、文字もびっしり。

目次だけでお腹いっぱいになりそうで、ページをめくった瞬間に「辞めておこう」と目を伏せたくなる。そんな印象を持っている人も少なくないと思う。

でも、この本はまったく違った。

まず、全144ページとちょうどいいボリューム感。フォントも読みやすく、ところどころに図や表が挿し込まれている。

さらには、教師と子どものリアルな会話形式も随所に登場する。

「専門書」と聞いて身構えていた自分も、読み進めるうちにスルスルと引き込まれていた。

つまり、これは“読める専門書”。それでいて、読み終えたあとには「うん、そうだよな」と深くうなずける言葉がしっかりと残る。

特に心に残ったのが、この2つのフレーズ。

この言葉に出会えただけでも、この本を読んだ価値は十分にあると思っている。

 

学校関係者はもちろん、保護者や地域の大人たちにもぜひ手に取ってもらいたい。

子どもとの向き合い方が、きっと変わっていく。そんな予感をもらえる一冊だ。

Profile#

小川 洋輝 | ブックカフェ「Sen」オーナー
1985年、北海道幕別町出身。高校を卒業後、福祉施設にて勤務。知的障がい者の入所施設や就労支援施設、障がい児の通所施設の経験を経て一般社団法人青鳥舎を設立。 障がい者の親が安心して死ねる社会を創るために 障がい者雇用のコンサルテーションや障がい福祉サービス事業所のコンサルテーションを行う。2015年10月より自ら障がい児の通所施設を開設。障がい福祉や子育て関連の専門書などが並ぶブックカフェ「Sen（せん）」は2022年4月オープン。23年、絵本『やっちゃれ ほっちゃれ もっきっきー！』（みらいパブリッシング）か出版。毎週金にスマヒロで書評を担当

楽しく生きるためのヒントが詰まったこの１冊は、未来の自分に期待をさせてくれるかもしれません。