【書評】本の虫 小川の本棚 「生きる力を育むゲームっ子の子育て」presented by Book cafe & bar Sen 100

作品名：生きる力を育むゲームっ子の子育て
著者：佐伯和也
出版社：Clover出版

一緒に活動している仲間が出版したおすすめの本

ボクは、不登校の子どもたちの居場所づくりをしている。

そのネットワーク協議会の仲間である佐伯さんが本を出版したと聞き、すぐに手に取った。

彼が“筋金入りのゲーマー”であることは出版前から知っていて、「ゲームは悪じゃない」と話していたのを覚えている。だから、読む前からワクワクが止まらなかった。

何を隠そう、ボクもゲーム大好きっ子だった。

ドラクエ、パワプロ、桃太郎電鉄、、、、寝ないで遊んだ記憶が鮮明にある。

ひと昔前は、ゲームといえばスーパーファミコンなどの「テレビに繋いでやるもの」だった。

でも今は、タブレットやクロームブック、スマホで、場所を選ばずゲームができる。

手軽になった分、「ゲーム問題」で悩む子どもや大人が増えているように感じる。

この本は、そんな“今の時代”だからこそ出会いたい1冊だ。

ゲームとの付き合い方に悩んでいる人、大人として子どもにどう関わればいいのか迷っている人――そんなすべての人に、ぜひ読んでほしい内容だった。

 

「ゲームばかりして、もういい加減にして！！」

そんなセリフ、言ったことない人の方が少ないんじゃないだろうか。

だけど、この本を読んで、ハッとさせられた。
それって、本当に子どものためになっているんだろうか？って。

著者の佐伯さんは、そんな親の悩みに寄り添いながらも、ズバッとこう問いかけてくる。
「それを言って、子どもは勉強するようになりましたか？」って。

言われてみれば、たしかにそうだ。

「勉強しなさい！」って言われて、自ら机に向かう子どもなんてほとんどいない。

やってる“フリ”をするか、親の目の前だけ頑張るか。でも、そこに“やりたい気持ち”なんてない。

好奇心も、自主性も、どこかに置いてきてしまっている。

この本が教えてくれたのは、子どもが変わるきっかけは「禁止」や「叱責」ではなく、“親とのコミュニケーション”の中にあるということ。

ゲームに夢中な子どもを否定するのではなく、「その子の中にある“好き”や“得意”をどう活かすか」に視点を変えていく。

それが、結果として“自ら学ぶ子”に変わっていく第一歩になる。表向きのテーマは、「ゲームと勉強のせめぎあい」に悩む親の心を軽くすること。

だからこそ、ボクはこの本を、子育てに悩んでいるすべての大人に読んでほしいと思った。

ゲームに熱中する今の子どもたちに必要なのは、“禁止”ではなく“理解”なのだと、やさしく、でも力強く伝えてくれる1冊です。

そうだ！講演会を主催しよう

毎週、書評コラムを書いているボクが言うのもなんだけど、「本を読む人」と「本を読まない人」は、はっきり分かれる。

読む人はどんどん読み続けるけれど、読まない人はどんなに名作を紹介されても手に取らない。
でも、それでいいと思っている。読書って、義務じゃなくて出会いだと思うから。

それでも、この本に書かれていることは、もっとたくさんの人に届いてほしいと心から思った。いや、「求めている人が多いから」というよりも、「伝えたい」が勝っている。
だからこそ、講演会の講師として、著者である佐伯さんを招きたいと考えた。

本との出会いのきっかけは人それぞれ。講演を聴いて、「もっと知りたい」と思って本を開く人もいる。

そんなふうに読書の扉が開くこともあると思う。ボク自身もそうだった。会ったことのある著者の本って、やっぱり特別に感じる。
その人の言葉が浮かんできて、読みながら自然と心に入ってくる。

だから今回の講演会は、「本の紹介」というよりも「伝える手段のひとつ」として考えている。大切なのは、本かどうかじゃなくて、伝わること。その人の言葉で、その人の経験で、誰かの心に灯がともること。

 

この本には、それだけ大切なことが詰まっている。そんな一冊です。

Profile#

小川 洋輝 | ブックカフェ「Sen」オーナー
1985年、北海道幕別町出身。高校を卒業後、福祉施設にて勤務。知的障がい者の入所施設や就労支援施設、障がい児の通所施設の経験を経て一般社団法人青鳥舎を設立。 障がい者の親が安心して死ねる社会を創るために 障がい者雇用のコンサルテーションや障がい福祉サービス事業所のコンサルテーションを行う。2015年10月より自ら障がい児の通所施設を開設。障がい福祉や子育て関連の専門書などが並ぶブックカフェ「Sen（せん）」は2022年4月オープン。23年、絵本『やっちゃれ ほっちゃれ もっきっきー！』（みらいパブリッシング）か出版。毎週金にスマヒロで書評を担当

楽しく生きるためのヒントが詰まったこの１冊は、未来の自分に期待をさせてくれるかもしれません。