【書評】本の虫 小川の本棚 「ポストが怖くて開けられない　発達障害の人のための「先延ばし」解決ブック」presented by Book cafe & bar Sen 125

作品名：ポストが怖くて開けられない　発達障害の人のための「先延ばし」解決ブック
著者：柏本知成
出版社：サンマーク出版

タイトルに騙されてはいけない。これは“みんなのため”の本だ。

ボクは障害福祉サービス事業所を運営している立場なので、何の迷いもなくこの本を手に取った。

しかし、サブタイトルにある「発達障害の人のための」という言葉を見た瞬間に、「自分には関係ない」と距離を置いてしまう人も少なくないだろう。

だからこそ、ここではっきり言いたい。

この本は、「先延ばし」に心当たりのあるすべての人にヒントを与えてくれる一冊だ。

発達に特性のある人に向けてまとめられたライフハックは、実は驚くほど汎用性が高い。

抜け漏れ、後回し、やる気が出ない、締切ギリギリ——
これらに一度も悩んだことがない人の方が、むしろ少数派ではないだろうか。

そう考えると、この本を読まない選択肢はない。

さて、話は少し逸れるが、なんとも興味を引くタイトルである。
書店でこのタイトルを見かけたら、思わず足を止め、手に取ってしまうのは自然な流れだろう。

仮に発達障害に関する本でなかったとしても、間違いなく手に取っていた。

それほど、この本は“今を生きる多くの人”に刺さる内容なのだ。

先延ばしに悩んでいるあなたへ。
この本は、きっとあなたの人生を少し楽にしてくれる一冊になる。

やる気はあるのに、どうしても動けない。それは“怠け”ではなく、“特性”の話だった。

「やる気はあるのに動けない」
「集中したいのに続かない」
「予定が変わると、頭も体も止まってしまう」

ADHDやASDの人が抱えやすい、こうした“先延ばし”の悩み。

この本が教えてくれるのは、その原因が能力不足ではなく、「特性」と「環境」のミスマッチだということだ。

この本に書いてあることは、無理に周囲に合わせるのではなく、自分の特性に合ったやり方で動きやすくなる方法を、とても具体的に、そして現実的に示してくれる一冊だ。

支援現場での豊富な事例をもとに書かれているから、「あるある」「それ自分だ」と思わず頷いてしまう場面が何度も出てくる。

たとえば、「うっかり忘れ」を減らす、付箋1枚のシンプルな工夫。そんな実例が、すぐに真似できる形で紹介されている。

この本を読んで感じたのは、「できない自分を責めなくていい」ということ。
必要なのは、気合でも根性でもなく、自分に合った仕組みなのだ。

先延ばしに悩んでいる人。
集中できない自分にうんざりしている人。
そして、誰かを支える立場にいる人にも。

この本は、きっと思考と気持ちを軽くしてくれる一冊だ。

自分なりの方法を見つけよう！！

この本には、実際に試されてきた工夫や実例がいくつも紹介されている。

だからといって、書いてある方法をそのまま真似する必要はない。

大切なのは、そこに書かれている考え方や視点をヒントにして、自分に合う形にカスタマイズすることだ。

そうすることで、対策は「一時しのぎ」ではなく、これからの生活を支えてくれる“相棒”になってくれると思う。

ちなみにボクはというと、スケジュール管理がとにかく苦手だ。

ダブルブッキングは当たり前、調子がいいとトリプルブッキングまでいく。

もはや才能と言っていいかもしれないが、もちろん褒められない。

これまではスマホで予定を管理していた。
けれど、通話中にスケジュールを確認できない。

その結果、「たぶん大丈夫です！」と記憶頼みで返事をして、あとから「あ……かぶってた……」となる。いつもの流れだ。

この本を読んで気づいた。
問題は注意力ではなく、「仕組み」が合っていなかっただけだと。

そこで思いついた対策が、スマホケースに入れられるカードサイズのスケジュール帳。
すぐ見られる。言い訳できない。逃げ場がない。最高だ。

おかげで、以前のおがわよりは確実に一段階進化している……はずである。

この本は、「正解」を押しつけない。
代わりに、「自分なりの正解をつくるヒント」を渡してくれる。
だからこそ、読んだあとに行動が変わる一冊なのだ。

今後のあなたの暮らしにすぐ活かせるヒントが詰まったこの本は、
日常生活だけでなく、これからの仕事や働き方にも確かな支えとなる一冊です。

Profile#

小川 洋輝 | ブックカフェ「Sen」オーナー
1985年、北海道幕別町出身。高校を卒業後、福祉施設にて勤務。知的障がい者の入所施設や就労支援施設、障がい児の通所施設の経験を経て一般社団法人青鳥舎を設立。 障がい者の親が安心して死ねる社会を創るために 障がい者雇用のコンサルテーションや障がい福祉サービス事業所のコンサルテーションを行う。2015年10月より自ら障がい児の通所施設を開設。障がい福祉や子育て関連の専門書などが並ぶブックカフェ「Sen（せん）」は2022年4月オープン。23年、絵本『やっちゃれ ほっちゃれ もっきっきー！』（みらいパブリッシング）を出版。毎週金にスマヒロで書評を担当。