作品名:リカバリー・カバヒコ
著者:青山 美智子
出版社:光文社
誰もが共感できる悩みに寄り添う温かい物語
新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒル。そこに住む住人達の〝悩み〟の回復ストーリー。
成績不振、ママ友との関係、嫌なことから逃げるための嘘、ストレスからの体調不良、親子関係のこじれ・・・・。
みなさんもこの悩みのどれかには共感できるのではないでしょうか?
それぞれの悩みの解決の糸口を見つけてくれるのは、都市伝説となった古いカバの遊具。
人呼んで、〝リカバリー・カバヒコ〟。
はい。ご存知の通りカバとカバをを掛けてます。
誰もが抱える悩みに優しく寄り添うこの物語は。青山美智子さんの真骨頂。
お母さんの体温のように心地い温かさで、あなたの心を軽くすること間違いありません。
〝不安〟が強い人へ。その不安は、とても大切なことなんです。
なにを隠そう不安の塊の私。
読書をはじめたきっかけも、不安を埋めるための手段のひとつでした。そんな私の心を鷲掴みにした文章を2つ紹介させていただきますね。
「不安っていうのは、まだ起きてないこととか、他人に対して抱くものだろ。それを思い描けるっていうのは、想像力がある証拠」
「心遣いも思いやりも、すべて想像力だからね。不安がりなあなたは、きっと優しい人だと思うよ」
この文章に救われる人も多いのでしょうか?
私自身〝不安=ネガティブ〟なイメージを持っていたので、この文章には羽生結弦くんの突然の結婚と同じくらい大きな衝撃を受けました。それと同時に、ちょっとだけ不安を抱く自分を認めたい気持ちにもなったのです。
ありがとう。カバヒコ。
無意識に抱いてしまう不安は、せっかくなら誰かのために使ってみたいと思います。
リカバリーは元に戻るだことではない。ひとまわり大きくなることだ。
みなさんは、リカバリー(回復)と聞くとどんなイメージがありますか?
私は、元の状態に戻ることと思っていましたがどうやら違うようです。
もしカバヒコが江戸っ子だったならば「てやんでぇ!」と威勢よく言い返してくるのだと思います。
と、なるとどう解釈すればいいのか。
経験と記憶がつき、前の自分とは違う自分になること。
こう考えることができるのだそうです。
言ってみればドラゴンボールの〝仙豆〟と同じなんです。
傷つき、その傷をリカバリーできたとき、以前の自分より強くなる。そう考えるとその傷も決して悪いものではない。むしろ、成長のために必要な経験だったのだと。
もちろん渦中にいるとそんな風に考えるのは難しいのですが、頭には入れておきたいですね。
そんな、傷ついた人に寄り添うカバヒコと、それを乗り越え成長した人たちの物語。
これを読んであなたもリカバリーされませんか?
心の傷を癒してくれるこの1冊は、救急箱として常備しておきたい1冊です。
Profile
小川 洋輝 | ブックカフェ「Sen」オーナー
1985年、北海道幕別町出身。高校を卒業後、福祉施設にて勤務。知的障がい者の入所施設や就労支援施設、障がい児の通所施設の経験を経て一般社団法人青鳥舎を設立。 障がい者の親が安心して死ねる社会を創るために 障がい者雇用のコンサルテーションや障がい福祉サービス事業所のコンサルテーションを行う。2015年10月より自ら障がい児の通所施設を開設。障がい福祉や子育て関連の専門書などが並ぶブックカフェ「Sen(せん)」は2022年4月オープン。23年、絵本『やっちゃれ ほっちゃれ もっきっきー!』(みらいパブリッシング)か出版。毎週金にスマヒロで書評を担当