【書評】本の虫 小川の本棚 「滅びの前のシャングリラ」presented by Book cafe & bar Sen 057

作品名：滅びの前のシャングリラ
著者：凪良ゆう
出版社：:中央公論新社

気になっている著者の作品はやっぱり良かった

『流浪の月』を読んだ時に「凪良ゆう さんの作品は好きかも」と感じ、『汝、星のごとく』もそのあとすぐに読んだ。

そして確信したのです。

私は、彼女の作品が好きだと。

確信のその後すぐに、次はどの作品を読もうかと思案していた時に紹介していただいたのが、『滅びの前のシャングリラ』。この本を手にした時、言うなればページをめくる前からワクワクの予感しかしません。

この記事を読んでいるあなたはどうでしょうか？手にしただけでワクワクすることありますよね。もちろん、あまりに期待しすぎてハードルを上げてしまい、ガッカリすることもあります。

でも、彼女の作品は違う。

どれだけ期待値が高くても、必ずそれを超えてくるんです。

それを体験してもらうには最適な１冊。

それだけではなく、生きる意味、さらに幸せについて問う傑作です。

一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる

1999年7月、空から恐怖の大王が降りてくる。そんなチャンチャラおかしいことが起こると信じていたことも記憶に残っている人も少なくはないはず。

はい。ノストラダムスの大予言です。

今とはなってはあり得ないことだとわかるのに、当時は頭の片隅に「万が一」があったのです。

「地球最後の日になにをする？」というか会話があちらこちらで聞こえていたあの頃。

それと同じかどうかはわからないけれど、地球に隕石が衝突し、人類が滅亡する。

そんな展開から物語がスタート。

主な登場人物は、学校でいじめを受けている17歳の友樹、人を殺めたヤクザの信ニ、恋人から逃げ出した静香、そしてなんとしても東京に行きたい藤森さん。

はい。なんだか物騒な人が混ざってます。

地球滅亡を信じ、人々は荒れ、どんどん荒廃していく世界。その世界で彼らはどう生きていくのか。いいや、地球は滅亡するのか。

圧巻のラストで思わず息を呑むこと間違いなし。

さぁ、結末はいかに。

絶望の中でも幸福を見つけられることができたら幸せなのかもしれない

地球が滅亡するなんて大きなできごとじゃなくても、人は誰だって絶望を経験するもの。その絶望の状態の中でも、「幸せを感じる瞬間」は必ずある。

Mr.Childrenの桜井さんも歌詞の中で「どんな不幸からも喜びを拾い上げ、笑って暮らす才能を誰もが持ってる」と声高に歌っているんで間違いない。

もし、この才能を発揮することができたら私たちは最強だと思いませんか？
そんなことを考えさせてくれるのは、世界の終わりに向かうこと小説だからこそだと私は思う。

それが、この「滅びの前のシャングリラ」というタイトルに込められたメッセージなのではないでしょうか？

自然災害の多いこのご時世だからこそ、読んでおきたいとっておきの一冊です。

 

Profile

小川 洋輝 | ブックカフェ「Sen」オーナー
1985年、北海道幕別町出身。高校を卒業後、福祉施設にて勤務。知的障がい者の入所施設や就労支援施設、障がい児の通所施設の経験を経て一般社団法人青鳥舎を設立。 障がい者の親が安心して死ねる社会を創るために 障がい者雇用のコンサルテーションや障がい福祉サービス事業所のコンサルテーションを行う。2015年10月より自ら障がい児の通所施設を開設。障がい福祉や子育て関連の専門書などが並ぶブックカフェ「Sen（せん）」は2022年4月オープン。23年、絵本『やっちゃれ ほっちゃれ もっきっきー！』（みらいパブリッシング）か出版。毎週金にスマヒロで書評を担当

楽しく生きるためのヒントが詰まったこの１冊は、未来の自分に期待をさせてくれるかもしれません。