8月18日(月)帯広市のスタートアップ支援スペース「LAND」で「株式会社ソルプレーサ・イノベーションズ(以下、ソルプレーサ)」と「北海道十勝スカイアーススポーツ株式会社(以下、スカイアース)」がパートナー協定を締結しました。
サッカーとフットサル。異なるフィールドで高みを目指す二つのクラブが、手を結ぶ今回の歴史的な協定。会場では両社の代表が登壇し、地域スポーツとビジネスの新たな可能性について語り合いました。
今回のパートナー協定は、十勝を拠点とする両クラブが「全国で戦えるチーム」から「全国で勝てるチーム」へと進化を遂げるための大きな一歩であり、スポーツを通じた地域活性化を見据える重要な節目でもあります。
パートナー協定締結式──十勝が誇る二つのクラブが共闘へ

スポンサーやサポーター、選手が見守るなか、調印式は和やかな雰囲気で進みます。書面へのサインを終えると、両代表から今回のパートナー協定の目的について語られました。
スカイアースの金澤宗一郎社長は「サッカーとフットサル、それぞれの競技で十勝から全国に挑戦するチームがあるというのは、まさに奇跡であり、地域の大きな可能性を示すものだと思います。だからこそ、並行して歩むだけでなく、交わることで『全国で戦えるチーム』ではなく『全国で勝てるチーム』をともに目指していきたい。」と、今回の協定の意義を力強く示しました。

北海道十勝スカイアーススポーツ株式会社 金澤宗一郎社長
ソルプレーサの大久保航也社長は「サッカーとフットサルが共に地域に根づくことで、十勝に新しい価値を生み出せる」と語り、スポーツ文化の発展が地方活性化につながる可能性を、まっすぐなまなざしで語ってくれました。

株式会社ソルプレーサ・イノベーションズ 大久保航也社長
トークショーでの運命的な出会いから共創へ──社長たちの想い
今回の協定の背景には、トップ同士が重ねてきた対話があります。今年3月のトークショーで顔を合わせた金澤社長と大久保社長。その後の懇親の場でワインバーに立ち寄り、十勝の未来やクラブの在り方について率直に語り合いました。
両者とも十勝出身ということもあり、自然に共鳴する部分が多かったといいます。金澤社長は「話すうちに、一緒に取り組まない理由はないと強く感じた」と振り返ります。

固い絆で結ばれた二人の姿
十勝は規模の小さな地域だからこそ、二つのクラブが別々に活動すれば、運営の面で競い合うことにもなりかねません。力を合わせて活動することに大きなメリットがある。スポンサーや地域の子どもたちへのアプローチも、両クラブが協力した方がずっと良いかたちになると考えたそうです。
大久保社長もまた「フットサルとサッカーが共存することは地域にとって大きなメリット。しかし、並行して活動するだけでは誤解を招いてしまう場面もある。直接交わり協力し合うことで、より前向きな力を地域に届けられる」と語ります。
この言葉の背景には、大久保社長自身が選手として東京ヴェルディでプレーしていた時の体験があります。サッカーとフットサルが同じクラブの中で息づく姿を身近で見てきたことが、今回の協定に明るい未来を見出す確信へとつながったそうです。

パートナー協定は、共通の想いを抱いていた二人が、腹を割って語り合うなかで自然に導かれた結論でした。
協定を起点に描く未来──動き出す両クラブの次のステップ
協定を結んだことで、両クラブはさっそく次のステップに向けた準備を進めています。
ソルプレーサは、ユースチームの新設や執行役員の増員など、組織基盤の強化を着実に進めています。大久保社長は「スポーツ業界は『ビジネスとして成立しにくい』という厳しい声をいただくこともある。だからこそ、トップリーグを目指す挑戦を通じて、スポーツの価値を地域に広めていきたい。そのためにも地域全体のスポーツリテラシーを高めていくことが重要」と語りました。
一方のスカイアースは現在「全国社会人選手権」や「JFL昇格」を視野に入れ、戦いを続けています。金澤社長は「スタジアムの整備など地域課題の解決も含め、クラブが地域と一体で歩むことが不可欠」と指摘しました。
そのための布石として、大久保社長がスカイアースの経営体制に加わることも決まっています。フットサル選手として東京ヴェルディに在籍し、サッカーとフットサル両方の運営を見てきた経験を持つ大久保社長がジョインすることで、クラブが地域と歩む力はさらに厚みを増します。
育成面でも両社の歩調はそろっています。スカイアースが来年度からユースチームを立ち上げる予定であるのに対し、ソルプレーサは展開中の「ソルプレーサとかちアカデミー」で新たにU-15を新設予定。
両クラブが教育面のノウハウを共有し合うことで、十勝の子どもたちがサッカー・フットサル双方の環境に触れながら、夢を育める土壌がさらに広がります。
子どもたちの夢を広げる──トークショーで示された未来
調印式の後には、両クラブの選手が登壇する特別トークショーも開かれました。帯広北高校出身で同級生、名字も同じという吉田哲登選手(スカイアース)と吉田愁平選手(ソルプレーサ)が参加。
各々、異なるカラーのユニフォームを身にまといながらも、今後は同じ方向を向き、地域を背負って共に戦うにあたっての決意を語りました。

青をまとう吉田哲登選手と緑をまとう吉田愁平選手。パートナー協定が生んだ、奇跡の4ショット。
哲登選手は「来年から両クラブがジュニアユースを立ち上げる予定です。子どもたちが小さい頃からプロの選手と近い距離で練習に取り組めるのは大きな価値になる」とコメント。愁平選手も「サッカーとフットサルが一緒になることで、世界へ挑戦できる環境を提供できるのは楽しみ」と語り、会場を沸かせました。
地元出身の選手がクラブを代表して言葉を発する姿は、まさに次世代へ夢をつなぐ象徴そのもの。協定はクラブ同士の約束にとどまらず、十勝の子どもたちに希望を与えるメッセージとなりました。
今回のパートナー協定は、地域に根差した二つのクラブが手を取り合い、十勝を“フットボールのまち”として育てていくための、確かな第一歩。調印式の余韻のなか、地域全体がスポーツを通じて前に進んでいく、そんな未来への力強い一歩になっていくように感じられました。
