●KDDI「スターリンク」を使ったモバイル回線基地局「サテライト・モバイル・リンク」
KDDIが今年度から本格サービスを開始したパッケージ商品で、どうしてもモバイル通信で「圏外」になりがちな、山岳地帯や森林部、僻地で威力を発揮する無線通信インフラだ。
あのイーロン・マスク氏が設立、衛星高速ネットサービス「スターリンク」を、バックホール回線(基幹通信網と端末アクセス回線をつなぐ回線)に導入した点がポイント。
白くて四角い板状のものが、スターリンク。アクセス用アンテナ、中央の搭状のものはモバイル基地局で、これを介して周囲のモバイル機器やドローンとの間で、安定した高速無線通信のやり取りを行う。
アンテナ下のボックスは、スターリンク通信をWi-Fi通信に変換する装置。写真の機器には、ルーターや電源ユニットが収納される。現在清水建設が北海道のトンネル工事で使用中だという。
●ACSE純国産ドローン「PF2-AE」「PF2-VIO」「PF4/PF4-CAT3」
東京江戸川区に本社を構える純国産ドローン・メーカー
日本初の、補助なし目視外飛行実現(2018年)や、ドローン専業メーカーで世界初の上場(東証マザーズ上場)を果たすなど、日本のドローン開発の牽引役でもある。
昨今世界のドローン市場では中国のDJIが台頭するが、国家安全保障上の観点から、欧米では公的機関で同社製品使用を制限する動きも。
日本も同様で、今後国や自治体関連の仕事などでは、「国産」がますます求められる。基本プラットフォーム「PF2-AE」(第一種型式認証機体)をベースに、レーザー測量機を装備した「PF2-SV」は、広大な十勝平野の牧草地や農地をベースに、共同事業体を興そうと計画中のスタートアップ企業に。
同じくIR(赤外線)カメラ搭載の「PF2-VIO」は、闇夜でもバッチリお見通しの利点をフル活用して、クマやシカなど害獣や、昨今急増する銅線ケーブル盗難者の監視・撃退に。
第一種型式認証申請中で、最大積載重量5kg、航続距離35kmを誇る物流専用機「PF4/PF4-CAT3」は、人口希薄な遠隔地に郵便物や宅配便、医薬品、新聞・雑誌(スマホやネットに不慣れな高齢者受けに)などを空輸する手段に。
●Liberaware「国産の超狭小空間点検ドローンIBIS2」
大きさは20cm四方の”手乗せ”サイズで、直径50cmの配管やダクトに入り込んで点検することを目的に、千葉市に本社を構える日本企業Liberawareが開発の純国産マシンだ。特徴はアフターサービスのよさ。
買取なら3年間、リースなら期間中ドローンが故障・破損しても、何度でも無料で修理・交換してくれる。
しかも千葉市の本社に送れば、5営業日以内に全国のほとんどの地域に返送対応するという。まさに国産ならではの”神対応”だ。ちなみに外国製の場合、配送に数十万円もかかったり、返送までに半年ほどかかったりすることも。無線通信にはデジタル方式ではなく、電波障害や遅延に強いアナログ方式を使っている点もミソ。
黒いパッケージに収められた実機、狭小なデモコースを難なく飛行する様子。
展示会で見かけたイチオシ「未来の技術者」たち
長岡技術科学大学
宮原 歩さん(機械工学分野 レスキュー工学研究室)
「無人航空機の運用に必要な安全管理に関する研究開発」
急速に普及するドローンだが、金属製・硬質プラスチック製のプロペラが高速回転する代物だけに、これにぶつかればただでは済まない。
実際、負傷事故は国内で年間50~60件ほど発生、手袋をしていてもケガをしたり、JIS規格のヘルメットを被っていてもスパッと切られたり、つけていたゴーグル自体が粉々になったりと、惨劇も珍しくない。
だが、こうした危険を測る「ものさし」が存在しないのが実情だ。
そこで宮原さん、実際にさまざまなアイテムを回転するプロペラで実際に切ってみながらデータを収集し、リスクを定量化。データ公開により、悲惨なドローン事故の減少を目指している。
ドローンのプロペラの破壊力は凄まじい。中央にあるのが破損したプロペラ、切断された腕の模型や、簡単に切れてしまったJIS規格のヘルメットなど、なかなかのインパクトだ。
神奈川県立海洋科学高等学校
全国で唯一、”ドローン免許”の実地が免除
「海」に関する様々な事柄を勉強し、四方を海に鴨まれる島国・ニッポンを牽引する将来のリーダー・技術者たちを育むのが、この学校。
「船舶運航科」「水産食品科」「無線技術科」「生物環境科」の4つからなり、卒業後さらに「専攻科」(2年間)に進学、「漁業生産科」では海技士(航海士)や無線通信士の国家資格取得も目指す。
ユニークなのが、全国の高校で唯一、国交省からドローンの登録講習機関として認定された点だろう。
在校生は講習を修了すれば、ドローンの国家資格取得のための実地試験が免除されるゾ。