十勝の自然と食物が大好きな自然料理研究家・食育講師の岡田五十鈴です。今回は、生産者との距離が近いからこそ手に入る新鮮な食材を用い、食べる瞬間に最もおいしくなるよう計算して調理するという移住者シェフの心意気を感じられるイタリア料理店「BASSA osteria(バッサ・オステリア)」を取材してきました。
道東の食材を中心とした常識にとらわれないイタリア料理
「BASSA osteria」があるのは十勝観光の玄関口・帯広市。JR帯広駅方面から市内を貫く大通り、その名も「大通南」を南下して、JRの高架を潜ってすぐ左手の帯広市大通南15に位置します。ベージュがかった一軒家の外観が目印です。
「もしも開拓時代にイタリア人が入植していたら、どんな料理を作ったのだろうか……?」こんなユニークな発想を形にしたこちらのお店。オーナーシェフの齊藤翼(さいとうつばさ)さんにお話をうかがいました。
「当店のテーマは地産地消。野菜や乳製品は十勝産のみを使用し、お肉もここ帯広を中心とした道東産をメインに厳選しています。もちろん食材だけでなく、十勝和牛の炭火焼きに使う炭は北海道浦幌町で生産される『浦幌木炭』を選ぶなど、調理にもなるべく地元の素材を取り入れるようにしています」(齊藤さん)
“北海道らしさ溢れるイタリアン”も同店が掲げるテーマのひとつ。一般的なイタリア料理には用いられることのない山菜を使ってみたり、冷凍した魚を凍ったまま刺身でいただくアイヌの人々の郷土料理『ルイベ』のエッセンスも料理に生かしていると言います。
その時期、その瞬間だけのおいしさを感じられるメニュー構成
店の顔とも言えるパスタは、注文を受けてから目の前で製麺する自家製のタリアテッレ(平たいリボン状のロングパスタ)がメイン。私たちが普段口にすることの多い外国産小麦のパスタとは異なり、同店では北海道産小麦にこだわっています。また、通常は製麺後に生地を寝かせてモチモチとした食感感を出すのが一般的ですが、同店ではあえて寝かせず歯切れの良い状態に仕上げることで小麦の持ち味を引き出しているのだとか。
また、魚介類は北海道東部の厚岸町から取り寄せるというこだわりも。その日にもっとも良い状態のネタが届くため、フタを開けるまでシェフにもどんな種類が入っているかわからないのだとか。「届いた素材でどんな料理を作ろうかと考えると毎日ワクワクするし、ここが料理人としての腕の見せどころでもあります」と齊藤さんはつぶらな瞳を輝かせます。
食材や土地柄、生産者との近さに魅了され帯広へ移住。多くのファンに愛されるお店に
齊藤シェフは、千葉県出身の現在30歳。都内の調理師専門学校を卒業後は東京のレストランなどで腕を磨き、やがて料理人として独立を考えるように……。そうして食材をつくる生産者巡りを始めたところ、生産者との距離感が近く、土地柄も自分に合っていると直感した帯広に移住することになったのだと言います。
「牧草のみを食べて育つ牛希少なグラスフェッドビーフや牛乳、羊肉など、ここ十勝・帯広はわたしにとって理想の食材の宝庫なんです。顔見知りの生産者さんから仕入れられるからこちらも安心だし、一般的には入手しにくい食材を使用できるのもこの土地ならではの距離感ですよね。旬の地場食材を使った一期一会のイタリア料理を、ぜひお楽しみいただきたいです」
【INFORMATION】
所在地:北海道帯広市大通南15-6-3
電話番号:050-8884-9894
営業時間:11:30〜13:00 L.O. / 18:00〜21:00 L.O.
休業日:不定休
アクセス:JR帯広駅から徒歩8分
駐車場:2台