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大樹町の人口を倍増!アジア初の商業宇宙港を開発・運営する小田切義憲さんをインタビュー

今、北海道で最も熱いまちのひとつが北海道大樹町です。ここで2013年から実業家のホリエモンこと堀江貴文氏が創業した、宇宙の総合インフラ会社インターステラテクノロジズ(以下、IST)がロケット打ち上げに取り組んできました。そんなISTを含めて、将来、宇宙ロケットの打ち上げ事業者が利用する宇宙港「北海道スペースポート(以下、HOSPO)」を運営するSPACE COTAN(スペースコタン)の小田切義憲社長をインタビューしました。宇宙を仕事にするホッとな人です。

アジア初の商業宇宙港が北海道十勝・大樹町にできます

小田切義憲社長の話をする前に、宇宙港「HOSPO」を開発・運営するSPACE COTANの話をしましょう。

HOSPOとは、北海道大樹町に設立されたアジア初の民間に開かれたペースポート(宇宙港)です。ロケットやスペースプレーンの垂直打上げのための発射場や滑走路を使った水平離着陸もできる国内唯一の複合型の宇宙港で、民間企業や政府、大学等の宇宙産業に携わるプレイヤーの誰もが利用することができます。これまで国内およびアジアには民間企業が簡便に利用できるロケット発射場がなく、アジア初の商業宇宙港として2021年春に開港。従来は国内ではロケットも発射場も足りないために日本製の人工衛星を海外まで輸送して宇宙に打ち上げるケースも多かったが、「北海道スペースポート」はこれらのコストや手続き面、経済安全保障上の課題を解決し、宇宙産業のインフラとして試験から打上げまでトータルサポート。宇宙産業に携わるプレイヤーに快適な開発・ビジネス環境を提供する宇宙インフラとして活用されることが期待されています。

掲げたビジョンは「北海道に、宇宙版シリコンバレーをつくる」。こんな大きなお題目を掲げるSPACE COTANには大きな期待も寄せられています。

令和4年度の企業版ふるさと納税等の寄附により、すでに2020年度、2021年度とあわせると、延べ146件、11億3,410万円の支援を得たそう。

2022年9月には、北海道大樹町で商業宇宙港「HOSPO」の人工衛星用ロケット発射場「Launch Complex-1(LC-1)」と、滑走路延伸整備に向けた安全祈願祭と着工セレモニーを開催。着実に確実に十勝と宇宙が近づきつつあるんです。

宇宙港は宇宙に行くだけでなく地球の移動ツールにもなります

ジャパンドリーム「宇宙版シリコンバレー」を現実に近づける男。それがSPACE COTANの小田切義憲社長であり、全日本空輸の勤務を経てエアアジア・ジャパン社長などを歴任してきた、航空産業のプロフェッショナルです。

58歳にして突如、ベンチャー企業とも言える「SPACE COTAN」の代表に就くのですが、まずは、これまでの経歴から紐解いていきます。

全日本空輸(ANA)からエアアジア・ジャパンの代表を歴任しました

大学卒業後、全日本空輸(ANA)に入社し、お客様に接触することはないですが安全運航に直接関係する運航管理業務に携わってきました。天候やアクシデントで機材を着陸させるか、引き返すかなどをお客様の安全を確保するために判断を下す仕事ですね。

その後は、時代と共に成長する成田空港や羽田空港において国際線の充実等オペレーション体制再構築を務めました。2011年にエアアジア・ジャパンが立ち上がる際にメンバーとして参画、その後CEOを引き受け、日本のインバウンド需要増を目の当たりにしながらLCCの展開に寄与してきました。その後、ANA総合研究所に所属し、ここで地方創生業務に携わり、そのタイミングでちょうど「北海道大樹町で宇宙港の会社を立ち上げる」という夢のあるお誘いを受け参画を決めたんです。2021年4月のことです。

航空産業から宇宙産業の違いは?

航空産業と宇宙産業は、業界が異なっておりあまり相互乗り入れはなかったのですが、ビジネススキームに共通点は多いことに気づきましたよ。航空業界で例えると以前いたANAが現在のインターステラさん、つまり輸送業者という位置付けで、当社は北海道エアポートのような空港運営会社の宇宙版ということです。

離発着場を貸す側と利用する側が存在してビジネスが成り立つという構図ですね。長年、運航管理業務を経験したことが生かせると感じていますよ。当面は、宇宙に人工衛星を上げるということがメインになるでしょうが、遠くない将来、地球上の都市間、つまりは拠点間移動の際に、宇宙を通って向かうという運送業(Point to Point/P2P)がビジネスの中心となるのではと思います。

イメージ的には、滑走路から離陸してロケットエンジンで宇宙に出て、その後、違う地点の宇宙港に着陸する感じですね。

例えば、飛行機だと東京からニューヨークまで片道13 時間くらいかかります。ファーストクラスの料金が120万から150万円ほどです。往復26時間かかりますが、これが片道40分で着くことになればどうでしょう。

もちろん、金額は従来より高くはなりますが、ビッグビジネスにおける大事な契約をする際や政治的な利用であれば、まさにタイムイズマネー。需要が増加することで、運賃単価も段階的に安くなると信じています。

もちろん、人工衛星を飛ばしてビジネスに活用するという需要も増えると思っています。これまではジェットエンジンの飛行機を使ったビジネスでしたが、今後はロケットエンジンを積んだ宇宙機も加わってくると思います。東京〜大阪間に新幹線、飛行機、夜行バスと複数の交通インフラが存在することに似ていますね。

このサービスは、まず一足先にアメリカで近い将来、実現してくるでしょう。その際に日本で受け入れる体制を整えておくことが我々の使命なんです。

ラストワンマイルは?

大樹町の宇宙港に着いた後は、現実的に東京や大阪には、小型ジェット機で移動することになります。活用する立場の人たちが、ここまで1時間弱でロケットで飛んで来て、近くの帯広空港に移動し、東京まで1.5時間程度要するというのは考えにくい。そのままビジネスジェット機等チャーター便に乗り換えて移動することになるでしょう。

そのために、将来的には3000メートルの滑走路を作る計画を考えています。ロケットと飛行機を併用できるような体制がまさに理想の宇宙港であると思っています。

日本国内でも宇宙港の建設は進んでいます

JAXAの内之浦、種子島、そして大樹町の3つが稼働し、大分、串本、下地島なども併せると現在国内に6つの宇宙港があります。民間が広く使える垂直型打ち上げの発射場は大樹町しかなく、私たちは国内外20社のロケット会社から引き合いをいただいていますが垂直型のロケットがメインストリームなのでポテンシャルの高さはあると自負しています。ロケットの打ち上げ方角である東と南がひらけている地の利に加えて、展開用地の広さです。時代によりニーズは変わりますが、それに合わせて自由度の高い射場を建設できるという点は大樹町の強さですよ。

写真はJAXA内之浦発射場

宇宙版シリコンバレーとは

当社の役割は、射場、すなわち宇宙港の開発と運営です。ロケットを飛ばしたい事業者を誘致して、安全に飛ばせる環境を整備するのがミッションです。そこで、イメージしてほしいのは宇宙港が誕生することで何が起こるかということです。

まずは、雇用が生まれます。ロケット・人工衛星製造、整備に関連する企業が集まってきます。また宇宙産業は最先端技術が必要ですから研究部門も集うでしょう。人が集まれば、その人たちに向けた様々なサービスが生まれ、人口が増えれば住む家も必要になりますね

また、時間の経過で様々な変化も起こります。以前働いていた成田空港の周辺は元々、成田山新勝寺の門前町でしたから、参道にある飲食店は鰻屋さん、天ぷら屋さんといった小江戸風景が広がっていました。

しかし、時間を経て成田空港を利用する人たち、とくに外国人が増えたことで、食の風景もラーメン屋さんやイタリアン、ファーストフードといった利用者に合わせた変化が起こっていき、今はそれが上手く共存しています。参道にある外国人も多く集まるバーではコロナ前の週末には大混雑していました。大樹町も成田周辺と同じような変化が長い年月をかけて起こってくるであろうことが私の中では容易に予想できます。

大樹町には近い将来、高度な専門人材が必要になります

成田空港のような変化はどのくらい未来ですか?

早ければ10年くらいで変化が生じてくると思います。まずは宇宙関連の研究者・事業者が増えてくるでしょう。そうした人たちの生活のためのサービスも生まれます。インターステラさんに加えて複数の事業者が増えれば、整備や部品関連の企業も進出してきます。早ければ年内に一社くらいは進出してくると思います。

大樹町はポテンシャルの高さが強みです。アジアの東の端にあることで、アメリカへの出入口であることや、宇宙港そのものの拡張性の高さを生かして勝負できると考えています。

実現に向けた課題はありますか

足りないものはいっぱいあるんですが、今、最も大事なことの一つのは人材の確保でしょう。宇宙産業は地球上で最先端の部類に入ります。だからこそ、北海道大樹町という場所に日本や世界のトップレベルの人材を集めなければ、実現はしません。

ロケットを作る人、整備する人、使用される部品を製造する企業、管理・運営するためのシステムを構築する人など、航空・宇宙工学を学んだ人材のほか、前述した部品やシステムを構築するための専門知識を持った人材や企業が必要です。

今はまだ、就業企業がほとんどないので北海道内の高専や大学の工学部で学んだ学生が働けるだけの産業構造が道内では構築できていませんが、これからどんどん進む中で、今からしっかりと情報を発信して、近い将来「あなた方や、あるいは宇宙工学や専門分野を学んだ人たちが大樹町に働く場所ができる」ということを伝えていくことも重要だと思っていますし、そのために学校や大学との連携も重要です。

加えて宇宙の町が出来上がることで様々な産業が新たに生まれてきますので、航空宇宙の専門家以外にも、レストラン、ホテル、保育士、介護士等様々な職種も必要となってきます。

大樹町の人口が増えるということですね

私のKPIのひとつに大樹町の人口をピーク時に戻すということを掲げています。現在の大樹町の人口は5,400人程度ですが、今から60年以上前は1万人を超えていたんです。私はまずは、そこに戻したいと本気で思っています

北海道の中で、十勝は人口が増えている地域があるくらい特異地域で、農業基盤を中心に産業が成長しているほか、宇宙港といった未来の産業も含めて、ポテンシャルを秘めた地域なんですね。アジア初の商業宇宙港ができれば、十勝だけじゃなく、北海道そのものが変わると信じています。人口減少が続くニッポンで人が集まる場所が十勝になるでしょう。これは夢ではなく、チャレンジすることで手に入るものと考えています。皆さんも活気あるとかちとすべく、新たな事業等を一緒に考えましょう。

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北川 宏

北川 宏

SUMAHIRO 編集長

記者12年→編集者8年→広報→起業|2022年7月『圧倒的におもしろいメディアが地方を救う』を掲るメディア会社 株式会社スマヒロの代表。新聞・経済誌の記者、雑誌編集者(日本)、週刊誌(海外)編集長、広報を経て2022年夏に起業。北海道十勝出身。東京13年→バンコク7年→北海道。

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