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フォトグラファーから経営者へ 印刷会社からメディア会社へ 未来の一手を進める高原淳という男

北海道十勝の情報発信を続けて30年。印刷会社から地元に愛されるメディアへと変貌したクナウパブリッシングは「northern style スロウ」の発行のほか、イベントの企画や動画・印刷物の制作も行う総合カンパニー。同社を牽引しながら、経営者としてビジネス本を書き、北海道中小企業家同友会のとかち支部長としても活躍する高原淳代表取締役に、お話を伺いました。

高原 淳 | Takahara Atsushi

株式会社クナウパブリッシング(旧ソーゴー印刷株式会社)代表取締役 | 1961年帯広市生まれ。帯広柏葉高等学校、大阪芸術大学芸術学部写真学科卒。1985年より、フォトグラファー、ライターとして活動。1989年雑誌・広告制作会社(株)遊文館設立。2000年5月ソーゴー印刷(株)入社、同年12月代表取締役社長就任。2004年5月雑誌「northern style スロウ」創刊。以来、自社企画による数多くの雑誌、ムック本、単行本、電子書籍を手がける。

自分の考えをまとめたビジネス書「激訳」シリーズを出版

—まず、ご自分の本を書かれたきっかけについてお聞かせください。

高原:2016年に、北海道中小企業家同友会(以下、同友会)の集まりが函館であった際に、先輩経営者から「経営者たるもの、本を出さなきゃダメだ」という言葉を頂いたのがきっかけなんです。

–本を書くのは大変ではなかったですか。

高原:それが、わりとすんなり書けちゃったんですよ。書籍用の見出し1つに対して、ブログを1本ずつ書いていこうと計画を立て進めたことがよかったんだと思います。2017年2月頃から書きはじめて、5月には『ある日突然社長になった人のための激訳(げきやく)・経営指針成文化』を出版できました。調子に乗って、その年の秋に2冊目『学生と地域企業で働く人のための激訳・キャリアデザイン』を出しました。残念ながら、ブログは最近途切れてしまいましたが、16年間、一日も欠かさずブログを書き続けてきました。

–激しくわかる、訳がわかる「激訳」シリーズですね。

高原:そうです。昔も今もそうですけど、多くの学生は大企業や大手志向が強くて、大企業に多くの学生が入社したがります。でも、本当にそれでいいんだろうか、という問題意識から書きました。

大企業に入社すると、そこで社長になることは至難の業です。それが中小企業だと、社長になってくれ、という話も場合によってはあります。規模の大小はありますが、私は中小企業のほうがチャンスがいっぱいあるのではないかと思っているんです。

大手上場企業に入った友人もいますが、働く目的が不明確なまま、今に至っている人もいます。経営者が言うと語弊もありし、仕事内容にもよりますが、究極的には仕事は一人でやるほうが幸せなんじゃないか、と思う部分もあるんです。仕事の目的を理解しながら職域を広げられるのが、中小企業の良さだと思います

十勝で育ち、大阪で写真を学び、東京で起業へ

–会社がコンパクトなほうが動きやすい、ということですか。

高原:理想としては、小さい組織がいくつもあり、グループ企業としてやっていくかたちです。少数精鋭のチームがいくつかあり、同じような立場の社長が何人もいて、それらが協力し合うほうが強いのではないか、ということです。私の代に実現するのは難しいかもしれませんが、そんな考えもあります。

–小さいチームをたくさん持つのが強い、と考えるきっかけは。

高原:私は帯広で育ち、大阪芸術大学で写真を学び、その後、東京でフォトグラファー、ライターとして活動し、東京で小さな会社を経営していたことがあるからです

最初は比較的大きな会社に入社して1年後、社員数が4、5人くらいの会社に転職しました。その会社に半年在籍した後、制作会社を立ち上げたのですが、自分たちでやっていくほうが自分の働きで収入が決まるところもあり、そのほうが面白いと感じていたんです。

東京の会社は10年ちょっと運営し、最後は少し大きくなったのですが、スタッフ4人程度の時が仕事としてはいちばん楽しく、やりがいがありましたね。

「学びより仕事が大切」でなく「仕事より学びが大切」と考えてほしい

–その後、Uターンで戻られたのですね。

高原:はい、2000年に父の会社「ソーゴー印刷」に入社し、翌年に父から事業継承。振り返れば、Uターンしてから20年以上になります。会社としては2022年、ソーゴー印刷からクナウパブリッシングに社名を変更しました。

–現在、社員数はどのくらいですか。

高原:約40名の社員がいます。私は2001年に代表取締役社長に就任しましたが、社長にはどんな能力が必要か、今でも自問自答しています。中でも大事なのが、物事の本質をとらえ、わかりやすく伝える概念化能力と、リーダーシップ。最後が愛着心。この3つだと思います。

特に2つ目のリーダーシップは、大部分の社員がトップに求めているのではないかと思います。的確に指示してくれる、力強いリーダーシップです。今の若い人は、具体的に指示されたことをきちんとやります、そんなタイプの人が弊社に限らず、多い印象ですね。

一方で、自分が納得しなければ動かないところがあると感じています。だからといって、理論的に伝えようとしても、なかなか期待通りにはいきません。

–将来を担う若い人たちは、今後どうすべきだと思いますか。

高原:セミナー受講や読書など、自主的にいろいろ勉強することでしょうね。でも、実際には動きが鈍い感じがします。理由は、ほとんどの人が勉強より仕事が大切だと考えているからです。でも、私の考えは逆なんです。もちろん仕事は大切ですが、学ぶことにもっと時間を割くべきでしょう。

仕事の内容によっては後回しにできない場合もありますが、優先順位を変えて、スケジュールを調整することは可能だと思います。たとえば、同友会の例会は学びの場でもありますが、これは自分の都合でスケジュールを変更するわけにはいきません。つまり、学びをきちんと行うには、学びの優先順位を仕事よりも上に持ってこないといけない場合もあるということです。

誰もが容易にできるわけではないかもしれませんが、学びを継続するためには、時に学びの優先順位を仕事よりも上に持っていくことも必要だと思います。

デジタル時代における、印刷の今後とは

–十勝のフリーマガジン「月刊しゅん」が2023年10月号をもって休刊になりました。そのことについての思いは。

高原:1998年の創刊から皆様に長らく支えていただいていました。とても残念ですが、メディア環境の激変などもあり、休刊する運びとなりました。地域の人々から本当に求められている情報とはどのようなものか、ウェブサイトや動画サイト・SNS等を活用しながら、新たな発信のかたちを模索しています。

–印刷物やクナウパブリッシングの今後については、どうお考えですか。

高原:デジタルメディアは、これからも発展していくに違いありません。だからといって、紙はなくならないし、紙の印刷物や紙媒体がなくなることはないでしょう。それに、高校や中学校、小学校の記念誌や、私たちが制作した写真集『十勝・帯広 昭和の記憶』のように、紙媒体での記録が求められる出版物・印刷物もあります

一方で、長期間保存されるものに印刷物は向いているとはいえ、印刷以外の事業が今後ますます重要です。「紙」は数ある媒体のひとつ。印刷物を作ることよりも、価値ある情報を発信することこそ大切だと考えています。

そのように、私たちクナウパプリッシングも、印刷物はこれからも主業務のひとつでありながら、時代の変化を見据え、紙、デジタル、リアルを組み合わせて情報を発信するなど、柔軟に取り組む必要があります。

弊社が育まれた十勝というエリアを大切にし、DXによる効率化や新規事業の開拓など目を向け、新たな道のりを模索していきます。

まとめ

クナウパプリッシングの代表取締役で、北海道中小企業家同友会とかち支部長でもある高原淳氏。教育の重要性にも触れ、十勝の若い人たちへの期待も感じました。また、小さくて強いチームを束ねることも構想にあるなど、これからの事業についてさまざまな考えを巡らせながら、今後の十勝の発展に寄与していく重要な一人だと確信した取材でした。ありがとうございます。

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北川 宏

北川 宏

SUMAHIRO 編集長

記者12年→編集者8年→広報→起業|2022年7月『圧倒的におもしろいメディアが地方を救う』を掲るメディア会社 株式会社スマヒロの代表。新聞・経済誌の記者、雑誌編集者(日本)、週刊誌(海外)編集長、広報を経て2022年夏に起業。北海道十勝出身。東京13年→バンコク7年→北海道。

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