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ますやパン(満寿屋商店)杉山雅則社長インタビュー 〜十勝産小麦100%のパンから十勝産食材100%を目指す。そして十勝パン王国へ〜

十勝在住者なら誰しもが一度は食べたことがある「ますや」のパン。1950年創業の帯広・十勝の老舗「満寿屋商店」のパンは、いまやソウルフードとして親しまれています。祖父、父、母の後継として4代目社長となった杉山雅則さん。2007年の社長就任から16年。父の思いである十勝産小麦100%を実現し、「2030年、十勝がパン王国になる」を掲げ奮闘する杉山さんをインビュー。経営者として見据える未来と意外な横顔をご紹介します。

PROFILE

杉山 雅則 | すぎやま まさのり
満寿屋商店 代表取締役社長 | 1976年生まれ。帯広市出身。帯広柏葉高校、第一工業大学(鹿児島)。アメリカ製パン科学研究所(AIB)で勉強後、ニューヨークのベーカリーで製パン修業。帰国後、2000年に東京の製粉会社へ就職。02年満寿屋商店入社。07年に4代目社長に就任。09年に日本で一番大きいパン屋「麦音」を開店。10年に「2030年 十勝がパン王国になる」ビジョンを掲げる。

トコトン十勝産にこだわる「ますやパン(満寿屋商店)」とは

帯広市を中心に十勝管内に7店舗を構える「ますやパン(満寿屋商店)」が誕生したのは1950年。今回の主人公で4代目社長の杉山雅則さんの祖父 杉山健一さんが東京でのパン修行を経て創業しました。その後、2代目健治さん(雅則さんの父)が引き継ぐと道内屈指の人気店に。その頃、健治さんは「輸入小麦からより安全性が確認できる国産小麦にしたい。できれば小麦の大生産地である地元十勝の小麦を使いたい」と十勝産小麦100%にすることを決意するも、志半ばの44歳で他界。3代目に奥様の輝子さん(雅則さんの母)が就任します。

父・健治さんの挑戦について、雅則さんは「十勝産小麦の使用率が100%になったのは2012年ですが、最初に挑戦したのは私ではなく、父でした。父はある農家さんから『ますやのパンは十勝の小麦をどれくらい使っている?』と聞かれたのがきっかけでした。当時の日本のパンの原料は、ほぼ全量輸入小麦。十勝の目の前に広がる小麦畑を見ながら、地元の人が口にできていないことに衝撃を受けたと聞いています。ただし、実現するにはパンに適した小麦の生産を農家さんにお願いすることからはじめなくてはいけなかったのです」と回想します。

ただし、今でこそ、父の夢を託され、母、輝子さんからバトンを託され偉業を達成した雅則さんですが、十勝産小麦100%への挑戦を引き続ぐには、少しだけ時間を要しました。

ますやパンを継ぐ意思のなかった青年。ところがパン屋のDNAが魅力へと引き込みます

それもそのはず、健治さんを亡くされたとき雅則さんは十代。「当時、稼業を継ぐ意識はなかったですよ。正直、パンへの情熱もなく、高校後の大学進学も工学部を選びました」と雅則さん。

ところが、パン屋のDNAはしっかりと引き継がれていました。

大学時代に何気なくアルバイト先として選んだのが大学近くのパン屋さんでした。そこで、パン作りの面白さと美味しさへの追求のような感情を得たんですよ。もちろん稼業のことも頭にあったのは確かです」(雅則さん)

まさに蛙の子は蛙なのでしょう。

街のパン屋で得た感情は本物でした。大学卒業後は、アメリカへ留学。アメリカ製パン科学研究所(AIB)で学び、ニューヨークのベーカリーでパン製造の修行を経験します。

「アメリカを選んだ理由は、当時、世界一の経済大国アメリカを見てみたいことと、日本のパンに使われている小麦のほとんどが北米産だったことです。世界トップクラスの生産地を見て、それを使って作るパン屋で経験を積みたかったからですね」(雅則さん)

帰国後は東京の製粉会社へ就職。

担当は、関東圏のコンビニエンスストアで販売されるパンの新商品開発でした。ところが、コンビニのパンは保存条件を満たすために、添加物が多く入ります。雅則さんは、それを自ら開発して販売することに対して疑念を抱き2年ほどで退職します。

やっぱり、蛙の子は蛙だったのでしょう。父・健治さんも抱いた「安全性への疑問」が雅則さんを突き動かしたのです。

気づけば、帯広を出てから10年が経っていました。多くの経験と結婚をしたことも一つのきっかけとなったのでしょう。

2002年に雅則さんは稼業の「満寿屋商店」に入社。東京事務所勤務を経て04年に故郷・帯広へと戻ってきます。

帯広に帰る前には、新婚旅行を兼ねてヨーロッパのパン屋さんを徹底的に視察してきました。さすがはパンの歴史が長く、深いヨーロッパです。驚くほど美味しいパン屋さんがいっぱいでしたし、どこも地元に根付いているんです。住む人たちの生活を支えるインフラのようでしたよ」(雅則さん)

日本一広いパン屋「麦音」と十勝産小麦100%を達成するまで

帯広に戻った雅則さんはとにかく動きます。当時について「とりあえずやる気はありましたし、やりたいこともいっぱいです。もっと会社を良くしたい、もっと良いパン屋になりたいとか。見聞も広がっていたのでヨーロッパのような本当の意味で地元に根付いた地産地消や食育もしていきたいなど、とにかく前しか向いていませんでした。もちろん足りないこともたくさんありました」と振り返します。

帯広に戻って2年。やる気が無くなることはありません。07年に母・輝子さんから社長のバトンを受け取ると、父の夢と自分のやりたいことに邁進します。

そのひとつが、日本で最も大きいパン屋「麦音」でした。麦音の敷地面積は1万2000㎡。開放的なテラス席は150席。オープンから14年経った今では、毎日多くの人たちが通い、朝食を食べる人、子どもと公園に遊びに来る感覚で楽しむ人など、地元民にとってなくてはならないパン屋さんとなりました。また、人気は口コミで広がり、連日、たくさんの観光客も訪れる観光スポットでもあります。

「自由な空間にしたかったんです。パンを食べながらパン作りを感じてもらったり、家族との憩いの時間として使ってもらい、子どもたちの心に残る場所。そうした想いが残ることで、また戻ってきたいとも思いますよね」(雅則さん)

新コンセプトの「麦音」の建設を進める一方で、父・健治さんの悲願である「十勝産小麦100%」への挑戦は母・輝子さんと共に進めていました。

十勝産小麦100%にするためには、パンに適した小麦の品種改良と安定生産を農家さんにお願いするところからはじまるとても時間のかかるものです。亡くなる前の父や引き継いだ母の努力もあり20年ぐらいかかって、新しい品種が増えていたので、私の代になってから早かったと思います」(雅則さん)

その言葉通り、09年の麦音オープン時は同店のみだった十勝産小麦100%を、3年後には全店切り替えに至ります。今では、全7店で200種類以上あるパンはすべて地元・十勝産の小麦を使用しています。

十勝産小麦100%がもたらす副産物がすごかった!

十勝産小麦100%への切り替えは、経営にも直結しました。

コスト面での心配をされることもありましたが、100%に切り替えて売り上げが3割上がったんです。不思議なのが、十勝産の前に北海道産小麦に切り替えていたのですが、その際は売り上げが落ちたんです。まさに『ますやパン』がある場所は北海道の十勝だということです。真の地産地消だからこそ、地元のお客様に受け入れられたんです」(雅則さん)

この成功の裏には、十勝の小麦生産者の弛まぬ努力があったことは間違いありません。これも3代にわたって、地元十勝のポテンシャルを信じ抜いたからこその結果でもあります。

4代目の社長就任から次々に繰り出す一手。もちろん、全てが成功しているわけでもない。

2016年の東京出店は残念ながら撤退となりました。ただ、得たものを大きかったです」と雅則さんが話す通り、「十勝産100%使用のパン」という言葉が全国区となり、多くの取材を受けることで「十勝産100%使用のますやパン」の名が全国に轟くことにつながります。

「もともと北海道の名称はブランド化されていましたが、その中でも十勝は品質が高い」という上位ブランド的な位置付けで発信されたことは嬉しかったですし、東京出店の副産物としては大きな付加価値を得ましたよ。一番嬉しかったのは『このパンは小麦の味がする』でした」(雅則さん)

「2030年 十勝がパン王国になる」宣言と実現までのロードマップ

成功と失敗を繰り返しながらも経営者として歩み16年。父の夢「十勝産小麦100%のパン作り」の実現から10年。

雅則さんの次なる一手は、2010年に構想を発表した「2030年 十勝がパン王国になる」宣言の実現化です。

雅則さんは語ります。

国内の小麦流通量は、今でも国産小麦15%と外国産小麦が大半。また、日本で売られているパンのうち、国産小麦のパンはわずか5%ほどです。だからこそ、小麦を原料とするパンで、生産量日本一の十勝産小麦の美味しさを知ってもらい、価値を高めていきたいと思っています。昨年は『2030年 十勝がパン王国になる』に一歩前進するために、新しく「とかちパン王国準備室」を設立いたしました。そして、2年後くらいには麦音が大きく変わりはじめ、とかちパン王国のフラッグシップ的な役割を担う場所となりますよ。そこではパンの美味しさを追求できる仕組みがいっぱいあり、遊びながら、暮らしながら、パンの可能性を体験できる空間にしたいと思っています。そこから『十勝パン』が誕生もするかもしれません。スマートフォンと同じです。体感してはじめてわかるイメージです。楽しみにしてください

正直、雅則さんが描く「パン王国」については、1割程度しか理解できなかったかもしれません。ですが、今でも素敵で世界に類を見ない「麦音」がさらに進化すること、そして、そこから「ますやパン」が実現してきた十勝産へのこだわりが世界に発信され、新たな食のイノベーションが起こるのでは?と期待をしながらインタビューを締めたいと思います。

確かなのは、満寿屋商店の杉山雅則社長の進撃はまだまだ止まる気配がないということでしょう。

杉山社長ありがとうございました。

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北川 宏

北川 宏

SUMAHIRO 編集長

記者12年→編集者8年→広報→起業|2022年7月『圧倒的におもしろいメディアが地方を救う』を掲るメディア会社 株式会社スマヒロの代表。新聞・経済誌の記者、雑誌編集者(日本)、週刊誌(海外)編集長、広報を経て2022年夏に起業。北海道十勝出身。東京13年→バンコク7年→北海道。

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