作品名:ポンコツ一家
著者:にしおかすみこ
出版社:講談社
元SM女王様キャラで一発屋芸人の衝撃で笑劇な人生
認知症の母、ダウン症の姉、ただの酔っ払いの父。
そんな家族のもとに数十年ぶりに戻った一発屋の芸人にしおかすみこ。
まさにポンコツ一家。
かくかくしかじかあり、実家に戻ると、家がものすごく汚く、そして臭い。
半分セメント化したミカンや黒炭のようなバナナの皮などの食べ残し。。。
俗に言うゴミ屋敷状態であった。
さらに、追い討ちをかけるように母の様子がおかしい。
そんな背景から一緒に病院受診、診断がつき、介護生活がスタート。
壮絶だけど、笑って泣ける家族と介護のハートフルストーリー。
すべては捉え方次第!!辛くするか面白くするかは自分で決める!
いきなりですが、博学を見せつけます。
「面白きこともなき世をおもしろく、住みなすものは心なりけり」
これは、知る人ぞ知る高杉晋作の名言です。
解釈としては、〝おもしろくないこの世の中を、面白く生きるかどうかは心の在り方次第だ〟となるのが一般的です。
さらに、あのMr.Childrenの桜井和寿さんも〝CENTER OF UNIVERSE〟という曲で「どんな不幸からも、喜びを拾い上げ
笑って暮らす才能を誰もが持ってる」と声高に歌っているのです。
脱線した話のこの本に戻すと、まさにこの上記の内容と同じやんけ!!と思わず膝を打ちました。
だって、実家に戻り、家が汚く、臭く、母が認知症になっていたら、ちびまる子ちゃんでいう永沢くんくんのように悲壮感漂う人生になりますよ普通は。
絶対的に辛くて泣きたいし苦しくて大変な事実。
なのに、涙がでるほど笑えて、涙がでるほど温かくて感動する。
これってすみこにしおかさんの捉え方で辛い出来事が面白くなったってことですよね?
本当に頭が下がりますし勉強になります。
もっと自分の〝親〟を大事にしなさい!!のメッセージを受け取りました。
ウチの親はまだ大丈夫。
にしおかすみこさんだってそう思っていたことだと思います。これを読んでくれているあなたも、そう思っている方は多いのではないでしょうか?
自分も例外ではありません。
事件は会議室ではなく、現場で起きるように、家族の一大事はテレビの中でなく、現実で起きちゃうんです。
起きてから後悔してはいけない。この本からはそんなメッセージを受け取った気がします。
私自身、帯広に住んでいて、母は札内にひとりで住んでいます。
たぶん、ポンコツです。
長兄が近くに住んでいますが、おそらくポンコツです。
次兄もわりと近くに住んでいますが、まちがいなくポンコツです。
末っ子の私は、一番遠くに住んでいますが、それでも帯広市内。
結構、デキる男。
ポンコツだからけの家族だけど、みんな近くにいるので、まだ大丈夫、あと数年は大丈夫。
そんな風に考えていて、年に1回帰ればいいところで、数年顔を合わせない時もありました。
今までは「カゾク?ナニソレ?オイシイノ?」状態だったのですが、これからは、実家ともう少し連絡をとったり、ちょこちょこ顔をだしたりしてみようかなと再認識させてくれました。
家族の愛を取り戻すこの1冊は、幅広い年齢の方に読んでほしい一冊です。
Profile
小川 洋輝 | ブックカフェ「Sen」オーナー
1985年、北海道幕別町出身。高校を卒業後、福祉施設にて勤務。知的障がい者の入所施設や就労支援施設、障がい児の通所施設の経験を経て一般社団法人青鳥舎を設立。 障がい者の親が安心して死ねる社会を創るために 障がい者雇用のコンサルテーションや障がい福祉サービス事業所のコンサルテーションを行う。2015年10月より自ら障がい児の通所施設を開設。障がい福祉や子育て関連の専門書などが並ぶブックカフェ「Sen(せん)」は2022年4月オープン。23年、絵本『やっちゃれ ほっちゃれ もっきっきー!』(みらいパブリッシング)か出版。毎週金にスマヒロで書評を担当