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帯広 藤丸百貨店が閉店 122年の歴史に幕。最後の姿と歴史をまとめました

「藤丸さん」の愛称で親しまれた、帯広のランドマーク「藤丸百貨店」が1月31日に閉店し、122年の歴史に幕を閉じました。改めて、最後の姿とその歴史をまとめました。

1月31日「藤丸百貨店閉店」。最後のシャッターは授業員の顔とともに閉まりました

2023年1月31日、創業1900年の道東唯一の百貨店にして、北海道最後の地元資本の「藤丸百貨店」が午後7時に閉店。122年の歴史に幕を下ろしました。北海道十勝・帯広にあった「藤丸百貨店」は、1900年(明治33年)に前身の呉服店で開業。その後、屋号を「藤丸」に変え、地元からは「藤丸さん」の愛称で親しまれてきました。

閉店を迎えた1月31日夜、最後の姿を記憶に焼き付けようと大勢の人が駆けつけました。

午後7時からは「閉店セレモニー」が行われ、藤丸の藤本長章社長から「たくさんのお客様からの惜しむ声をいただき、心から感謝いたします。藤丸の122年という歴史は帯広十勝の歴史そのものでした。本当に、長い間、ありがとうございました」と最後の挨拶がされると、詰めかけた人々から「ありがとう」「はやく戻ってきて」との声が発せられ、中には涙ぐむ人の姿も……。いかに「藤丸さん」が十勝帯広で親しまれてきたのかがわかります。

このあと、店舗入口前に社長をはじめ多くの従業員が集まり、入口前に集った大勢の人たちに対して、深々と頭を下げながらシャッターがゆっくりと閉められました。すると周囲からは「ありがとう」と感謝の言葉が飛び交い、多くの地元民に見守られながら、藤丸は122年の歴史に幕を下ろしました。

「藤丸百貨店」の閉店を惜しみ、感謝を伝える人たち

藤丸百貨店の最終日となった1月31日には、朝から大勢の人が最後の買い物を楽しみつつ、寂しさを声にしました。

東京からきた30代の女性は「帯広出身で月末に札幌に出張が入り、仕事を終えてふるさと帯広に帰省しました。小さい頃は家族ときたし、中学・高校生の頃は友達と買い物したり、冬は寒いので、暖をとる場所としてもきていました。なくなってしまうのは寂しいですね

帯広に住む60代の女性は「関東に住む親戚へのお中元・お歳暮は藤丸さんの包み紙じゃないとだめなんです。これから困っちゃいます」

帯広の40代の男性は「幼い頃、少しだけ小綺麗な洋服に着替えて家族と来たのが思い出です。正直、大人になってからはなかなか訪れる機会が減っていました。いざなくなってしまうと寂しいですね」

帯広の70代の男性は「道東唯一の百貨店ということで誇らしかったです。今後は街中の空洞化が心配です。はやく復活してほしいです」

惜しむ声はテレビの向こうからも聞こえてきました。

2月1日、帯広出身の安住紳一郎アナウンサーが総合司会を務めるTBSの朝の番組「THE TIM,」では、東京・渋谷の東急百貨店本店が1月31日に幕を下ろしたことを特集しました。その中で、安住アナの出身地である帯広の「藤丸百貨店」閉店についても触れると、安住アナは「藤丸は地元だったので、もう少し買い物すればよかった。ありがとうございました」とテレビ越しに感謝を伝えつつ閉店を惜しみました。

一方、藤丸百貨店については、一旦は閉店するものの再生・再建計画の話があります。

昨年、地方創生ベンチャーの株式会社そらと帯広日産自動車の持ち株会社「村松HD(帯広市、村松一樹社長)」が、「藤丸再建」に向けて新会社を設立。閉店後の再建計画やその後の事業運営などを担うことが決まっています。

詳しくは、株式会社そらのオンラインメディア「SORAto(ソラト)」の記事をご覧ください。

【藤丸百貨店。「そら」米田社長の本心。新藤丸への想いと現実……】

藤丸百貨店。「そら」米田社長の本心。新藤丸への想いと現実……

「藤丸百貨店」閉店は、全国の百貨店閉店のひとつに過ぎず。厳しい百貨店経営の現実

藤丸百貨店の閉店は地元民にとっては寂しい話ですが、全国でも同様に多くの百貨店が幕を下ろしています。それもそのはず、近年、日本の百貨店においては、売り上げの低下やオンラインショッピングの普及などにより、多くの百貨店が閉店を余儀なくされています。

北海道でも次々と百貨店が閉店。北海道で最も有名な百貨店だった「丸井今井」も、最盛期に7店舗ありましたが、現在は札幌と函館のみです。

2000年以降に閉店した北海道の百貨店は以下です。

2000年 札幌そごう
2002年 小樽ビブレ、鶴丸百貨店(苫小牧市)
2003年 函館西武
2005年 丸井今井苫小牧店、丸井今井小樽店
2006年 丸井今井釧路店
2007年 きたみ東急百貨店(北見市)
2009年 丸井今井旭川店、ロビンソン百貨店札幌店
2010年 丸井今井室蘭店
2016年 西武旭川店
2019年 棒二森屋(函館市)
2023年 藤丸(帯広市)

こうした百貨店の閉店は全国各地で起こっています。前述した通り、百貨店を取り巻く環境は極めて厳しい状況です。専門店の台頭やオンラインショッピングの拡大でコロナ禍前から低迷は続いていました。1990年代に年間約10兆円あった売上高は、ほぼ半減。1999年のピーク時に311店舗あった全国の百貨店は、2022年末には前年比4店減の185店まで減ったそうです。(日本百貨店協会)

全国規模で百貨店の閉店も加速しています。直近では、小田急百貨店の新宿店本館、そごう・西武の地方店、新潟三越などの大手資本のほか、山形県の大沼百貨店、福島県の中合といった地方の地場資本の百貨店も相次いで閉店。そして、今回の藤丸と同じ日に閉店した東急百貨店本店を含め、日本の百貨店は次々に閉店しています。

最後に「藤丸百貨店」の歴史を綴ります

2023年1月31日、多くの人たちから惜しまれながら122年の幕を下ろした帯広の藤丸百貨店。1900年に創業。道東(北海道東部)唯一の百貨店として親しまれ、最盛期の1992年には売上高約145億円にも上ったそうです。

そんな藤丸の歴史は、藤本社長が「十勝帯広とともにあった」と話すとおり、藤丸を語る際には帯広開拓の歴史から紐解く必要があります。

依田勉三をはじめとする晩成社開拓団が帯広の地に入植したのが1883年。その時の帯広市(当時は帯広村)の人口は27人(13戸)でした。

藤丸の創設者である藤本長蔵氏が帯広の地を訪れたのは、そのわずか14年後、1897年のことです。藤本氏は呉服太物類やニシンの行商で下帯広村を訪れ、その活況ぶりに注目し、この時に移住を決意。後に下帯広村大通6丁目の借家で太物商を開業したそうです。

1900年8月に一度富山県に戻り、藤丸の前身となる「北越呉服株式会社」を設立後、同年11月に下帯広村に戻って店員を雇い、東京や大阪から仕入れた古着や古毛布などを販売しました。

1901年に店舗を大通5丁目19番地の木造平屋建てに移転、1915年には故郷の富山から瓦を取り寄せて土蔵造り2階建てに改築します。改築後の店舗は、道内有数の規模でした。

翌1902年、帯広にも大きな変化が訪れます。下帯広外8ヶ村を廃合し、帯広町・伏古村・幸震村・売買村・上帯広村の1町4村組合として二級町村が施行され「帯広町」となりました。

この頃の大通5丁目は帯広の中心地として、大変栄えていたそうです。

呉服店から百貨店へ。鉄筋コンクリート4階建て道東初のエレベーター設置

1930年に「藤丸呉服店」を「藤丸百貨店」と改め、西2条8丁目に木造一部鉄筋コンクリート4階建ての店舗を新築・移転。

1階は雑貨、食料品。2階は呉服類。3階は洋服類、和洋小間物。4階は貴金属、家具類、理髪・美容室の構成で、売場の他には1階に預かり所とトイレ、2階に休憩室、3階に大食堂・喫茶室、4階には大ホールを設けていました。

高さは27メートルで、この年の春に完成した本願寺西別院を超えないように1メートル低くしたそうです。

道東初のエレベーターを設置し、屋上から街並みを見下ろせることからも大評判だったそう。このエレベーターは蛇腹式の扉で、エレベーターガールが手動式ハンドルで操作していて、動き出すと各階の床が上下するのが見える造りでした。

初めて見る、未知の乗り物なので、靴を脱いで乗ろうとしたり、「失礼します」「お邪魔します」と言って入る人もいたんだそう。

1931年、屋上にサル・ウサギ・子熊などがいる小動物園を開園し、子どもからも大人気の場所になりました。

大ホールでは、絵画展や書道展、生花展など各種行事が開催され、ただ物を売るだけではなく「十勝・帯広の文化の発信地」として大きく貢献する商業施設へと成長。

当時、人口わずか約28,000人の帯広町で、昭和初期の不況のさなかにもかかわらず呉服店から百貨店に切り替えて軌道に乗せることに成功しました。

1933年、市制施行で帯広市となり、市章を制定します。

1945年に初代・藤本長蔵氏が死去、甥の孫信が二代目・藤本長蔵を襲名し、1949年に社長に就任。1950年に現在の社名である「株式会社藤丸」に改称。

その後、西2条南9丁目角地に新店舗を建設することが決定。1961年3月から工事が始まり、同年11月に二代目となる新館を新築し、移転・拡張されました。この建物は、総工費2億8,000万円がかけられ、総面積7421.8㎡。地下1階、地上6階、塔屋2階の十勝一モダンな高層建築物で、内部設備もエレベーター2基を備えた道東一の最新設備でした。中でも、当時の北海道では珍しいエスカレーターを3階まで設置し、地元民をまたも驚かせました。

1962年4月、屋上遊園地が開園し、同年7月には屋上にロケット型・一部電飾仕掛けのナショナル広告塔が設置されました。この広告塔は、先端が灯台のようになっていて、帯広の夜空を明るく照らしていました。1959年に完成した「かじのビル」屋上の日立のネオン塔とともに、夜の帯広のシンボルになりました。

1965年には、売上高13.8億円を上げ、人口の多い小樽や旭川の百貨店を上回るほどまでに成長させました。

モダン建築にエスカレーター設置。道東の流行最前線。1982年に現在の姿に

1982年3月「帯広二・八西地区第一種市街地再開発」事業で、初代店舗が立地していた場所に「ふじまるビル」を建設し、三代目にあたる現在の店舗を新築・移転しました。こちらのビルは、地上8階、地下3階建てで、地下2・3階は駐車場として使用されています。

1980年代〜2000年代にかけて帯広市では、広小路全蓋アーケードが完成、現在地に新帯広空港(とかち帯広空港)が開港、帯広市民文化ホール開館、国道236号(天馬街道)開通、帯広の森スポーツセンター完成など、市民の生活の基盤となるものも整っていきました。

藤丸では2002年7月から定休日を廃止し、現在にいたるまで、ほぼ年中無休で営業を続てきました。そうして、帯広の発展のそばにいつも寄り添い、多くの市民から愛され続けてきました。

いかがでしたでしょうか。当面、藤丸さんの閉店を惜しむ声はやまないでしょう。しかし、新たな「藤丸」への道筋は残りました。全国で閉店する百貨店の多くが再建断念を余儀なくされていますが、藤丸は違います。新時代の藤丸への準備ははじまったばかりです。そう思えば、十勝・帯広の未来は明るいはず。スマヒロでは、今後も新生「藤丸」を応援しながら、追いかけていきます。


※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。

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北川 宏

北川 宏

SUMAHIRO 編集長

記者12年→編集者8年→広報→起業|2022年7月『圧倒的におもしろいメディアが地方を救う』を掲るメディア会社 株式会社スマヒロの代表。新聞・経済誌の記者、雑誌編集者(日本)、週刊誌(海外)編集長、広報を経て2022年夏に起業。北海道十勝出身。東京13年→バンコク7年→北海道。

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