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地方で起業を志す7チームがアイデア発表。5ヶ月間のプログラムを経て十勝の未来を担う事業を創発!

地方で起業する人材を増やす!起業家を育成して、産業そのものを創り出そうという試みが北海道十勝で生まれ、根付きつつあります。11月10日、投資家や金融機関が見守る中、地方起業を志す7チームが事業化構想を発表。5ヶ月間のプログラムで実現可能性を極限まで高めた構想は、まさに“とかちの未来”を予想させる事業でした。

野村総合研究所(東京)2030研究室が中心となり、次世代経営者や地元出身クリエイター、地域の金融機関、自治体、シンクタンク、メディアなどと連携して創り出した「イノベーションプログラム」。約3年の歳月を経て、地域の”稼ぐ力”を生み出すことを主眼とし、地方創生の切り札として開発されました。そして、イノベーションプログラムを全国ではじめて導入したのが、北海道十勝でした。

とかち・イノベーション・プログラム
野村総合研究所(東京)2030研究室が開発した地方創生のための起業家育成プログラム「イノベーションプログラム」を帯広信⽤⾦庫と⼗勝19市町村が共同で、新たな事業創造を⽬指す「とかち・イノベーション・プログラム 」(TIP)として2015年から毎年開催。この事業は、創造的なビジネスモデルを実践して今注⽬されている全国の⾰新的経営者と、⼗勝の事業者や起業予定者との知的混⾎・コラボレーションによる化学反応で、地域の稼ぐ力を呼び起こそうとするものです。2021年の第7期(TIP7)までで58事業、13の会社が立ち上がりました。

地方で起業するための7事業(アイデア)

今年で8期目となった「とかち・イノベーション・プログラム2022(以下TIP8)」では、7つの事業構想が誕生。11月10日に行われた最終セッションでは、5ヶ月間に及ぶプログラムでブラッシュアップされた事業案が発表され、オンラインやリアルの会場で視聴した経営者や投資家を魅了しました。

トップバッターは、エンターテインメントとカーリングを融合させて新たな価値を創出し、新市場の開拓・拡大を目指す「エンタメ×カーリング」。チームリーダーの大野福公さんは、地元十勝出身であり、カーリングの元日本代表。日本のカーリング発祥地である十勝で、認知度の低さをなんとかしたいと、本場カナダや世界のカーリング文化を体感してきた経験を生かし、エンターテインメントでカーリングの楽しさを普及させるビジネスプランを発表しました。

続いて、「わんおぺfamily」と題して発表した原田志麻さんは「お母さんと子どもを笑顔にするコミュニティ事業とワンオペ育児をポジティブに変換できる活動を続けたい」とこれまでのイベント開催経験を生かして、スポンサーを募り、事業化させたいと訴えました。

スイーツ王国と呼ばれる十勝でありながら、十勝管内のお菓子店が苦境に陥っていることを助けたいと「トカチメイド」というテーマで、十勝のお菓子の知名度向上を図ることを目的に情報発信事業を発案した西島圭子さん。グラフィックデザイナーとして活躍する傍ら、自ら「菓子王国十勝」というスイーツマップを発刊。今後は、Webメディアやイベントなど横展開を図ることで、十勝のスイーツファンを全国に作りたいと意気込みました。

地方起業の王道を超えたアイデアが揃う

タイトルですぐに連想できたのが事業名「超十勝美食倶楽部」です。読んで字の如く、これまで十勝になかった特別な食事会を企画運営します。チームリーダーの杉山雅則さんは、テレビ東京のカンブリア宮殿でも特集された十勝を代表するパン屋「満寿屋商店(ますやパン)」の代表取締役です。

杉山さんは、ミシュラン星付きレストランが密集する世界屈指の美食の街、サン・セバスチャン(スペイン)を引き合いに、「十勝と同じような地方都市でもあり、食の宝庫である十勝ができない理由はない」と、これまでにない特別な食事体験を開発。世界屈指の美食地域として十勝を発信していくと発表しました。

日本の食糧庫であり農業王国・十勝を支える農家(生産者)に熱い視線を注いだのが、アスリートフード市場の開拓と、農業に特化したトレーニングで事業化を目指す折笠恵さんです。

日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーでもある折笠さんは、千葉と十勝の2拠点生活をしながら、十勝の生産者の体を労りたいと「生産者が元気に働ける環境をつくることで日本の食を支える。そして、農業王国だからこそ、アスリートフードを開発し、未来のアスリートを支えたい」と自らの経験と農業をかけあわせる事業を発案しました。

開発という視点では、地元高校生に商品開発カリキュラムというテーマで実践的な学びの場を提供している真浦綾子さん。すでに地元十勝の高校で実践。大人たちが教えないことで、生徒に考えさせ、自ら成長することを「考育」と名づけ、ゼロベースで高校生たちが商品開発に至る教育プログラムを考案しました。

最後は、地方起業に多いアルコールビジネスです。ただし、数多のクラフトビールが全国で生まれるなか、池田町役場でワイン造りを経験した宮澤嘉裕さんが挑むのは、十勝初のスピリッツ蒸留所です。スピリッツは精神。酒の世界では蒸溜酒のことを指します。

宮澤さんが目指すのはアクアビットと呼ばれるジャガイモを主原料とした蒸留酒。北欧ではメジャーですが、日本ではほぼ認知度がありません。宮澤さんは「大好きなスピリッツを事業化しようと考えた際に、十勝が日本一の生産量をほこるジャガイモが主原料のアクアビットしかないと考えた。ただ、事業をブラッシュアップするなかで、十勝であれば他の農産物を活用したスピリッツも豊富に作れる」とし、十勝に新しい文化「とかちスピリッツカルチャー」を創造することを念頭にビジネスを拡大させるそうです。

以上がTIP8の7つの事業案です。

農業・食・子育て・教育・エンタメで起業目指す7アイデア

実はTIPでは、事業化を図る上で、チームであることで実現制やスピード感が増すとの考えから、すべての案はリーダーのもと、異なる複数人のサポーターが入っています。今後は、チームで事業化を目指すのか、それとも一度、解散してリーダーを中心に新たなチームで事業化を目指すのかは自由だそうです。

野村総合研究所が開発した地方創生のための「イノベーションプログラム」。それを全国に先駆けて十勝で実践したのが、米沢則寿帯広市長です。

TIP8では、総評を担当しました。

発表後、米沢市長は「十勝が必要として移住者を増やすためのお母さんと子どもを笑顔にするコミュニティ事業や、十勝発祥地のカーリングを世界に広める視点、十勝らしさを全面に押し出すことのできる“農業”と“食”をテーマにした企画など、必要性や実現性、時代にマッチする案ばかりでした。世界に誇れるビジネスに成長させてほしいですし、帯広市としては全力で応援したいです」と評価しました。

また、起業家を応援し続ける経営者であり、東証1部上場企業へと成長を遂げた株式会社アルプス技研の創業者である松井利夫最高顧問は「本気で投資するならば、という視点で見せていただいたので、辛口コメントをさせてもらう」とした上で、5点満点中、「超十勝美食倶楽部」に4.5点、スピリッツ蒸留所を設立する「十勝フロンティアスピリッツ」に4点の評価をつけました。

さらに、エンジェル投資家としても有名な村田利文さんも「超美食倶楽部の事業は最もクレイジーで楽しみ。商品開発カリキュラムを高校で実践する真浦さんたちの事業は、社会起業家的な視点ですが、もっともお金を集めやすいと感じました。その他の事業案もつぶぞろいでした」と絶賛。

最後にイノベーションプログラムの開発責任者である野村総合研究所の2030研究室長の齊藤義明さんは「十勝池田町出身のDREAMS COME TRUE(ドリカム)のボーカル、吉田美和さんが歌う未来予想図という歌があるが、今回の事業構想はすべてとかちの未来予想図にかかわることだった。7つの未来図を見た気がした。未来図に到達するための羅針盤が指している北には、皆さんの最初の想いが記されています。航海が進むにつれて振れることもあるでしょうが、一番最初に指した北(想い)を忘れずに事業化していってほしい」と激励して締めました。

写真はすべて「写真映像工房くろかりんとう」の佐藤カメラマンです。

【INFORMATION】
とかち・イノベーション・プログラム2022

主催|帯広信用金庫
共催|十勝19市町村
協⼒|野村総合研究所、とかち財団、信金中央金庫
開催日 2022年7月〜11月
公式Facebook

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。



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北川 宏

北川 宏

SUMAHIRO 編集長

記者12年→編集者8年→広報→起業|2022年7月『圧倒的におもしろいメディアが地方を救う』を掲るメディア会社 株式会社スマヒロの代表。新聞・経済誌の記者、雑誌編集者(日本)、週刊誌(海外)編集長、広報を経て2022年夏に起業。北海道十勝出身。東京13年→バンコク7年→北海道。

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