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修了生が伝える「とかち・イノベーション・プログラム(TIP)」で得られるもの①

10年前から十勝で開催されている「とかち・イノベーション・プログラム(通称TIP)」からは、これまでに多くの事業構想案が発表され、いくつも法人・団体化しています。

代表的な例では、十勝の観光資源のひとつになっている「馬車BAR」、古紙と野菜の廃棄部分を使ったアップサイクル製品作る「やさいくる」などがあります。

法人・団体化した事業は、着々と十勝に根付き、全国にも広まっていることで、十勝の活性化としても期待され、今までにない事業アイデアに興味を抱く人も増えているのではないでしょうか。

TIPが、そんなすごい場所だとは知らずに、2023年開催のTIP9に参加していた私、ありとよが、私自身が感じたことを交えつつ、プログラムの様子を5回に渡ってレポートしていきます。

① TIPとは      <<<今回はこちら。
② TIP体験レポート前篇(チームをつくるまで)
③ TIP体験レポート中編(チームで動き)
④ TIP体験レポート後編(スパーリングとプレゼン資料制作)
⑤ TIP9メンバー座談会(前回の参加者のリアルな声)

とかち・イノベーション・プログラムの概要

イノベーションプログラム自体は、野村総合研究所2030研究室が、地方創生のために開発した起業家育成プログラムであり、他の地域でも開催されていますが、全国で初めて導入したのは十勝です。

帯広信用金庫と十勝19市町村をはじめとする複数団体の共催のもと、2015年から開催され、これまでに392人が参加し、70件以上の新事業案が発表され、うち24件が事業化しています。

5か月間で12~15回のセッションがあり、事業構想はチーム単位で行い、最終的には、全国の投資家や起業支援に興味のある法人、報道機関などが集まるなかで、事業構想案を発表します。

プログラム終了後は、ドリームマップ会議という場で、過去の参加者である「TIPファミリー」と繋がる機会や全国の革新者と交流する機会があり、自分の成長を磨き続けることができます。

TIPの意義・目的

TIPは、地域の稼ぐ力となる「事業」を作りだすための、「共創の場」であり「柔らかな挑戦の場」です。

起業を支援する制度はたくさんあるものの、起業する人自体が少ないため、地域の活性化に結びついていないのが現状です。そもそも起業に必要な、主体的な気持ちとアイデアを生み、育てていく場所がない。そのための場所がTIPです。

起業に必要な素材のひとつである「人材」が、TIPには偏りなく集まるため、「自分のやりたいこと(Wants)」から見つけた事業テーマでも、事業案をひとりで構想するのではなくチームで考えます。ひとりから生まれた事業アイデアに、多くの人の意見が混ざることで、化学反応が起き、型にとらわれず、挑戦のしがいと夢のある事業を作りあげることができます。

そしてセッション中、各自の考えは否定されることなく、参加者同士で「応援しあう」雰囲気があります。先輩起業家、帯広信金や帯広市役所の事務局としてのサポートもあることで、多方面の視点から常に背中を押してもらえ、どんなことにも挑戦しやすい環境になっています。

プログラムの内容

7月~11月の約5か月間で、12~15回のセッションに参加します。TIP10は7月16日~11月28日までで全12回のセッションが予定されているようです。

セッションは「自己理解」「チーム形成」「発表」と、大きく分けると3つのフェーズに分かれます。各自のWants(やりたいこと)を探すことからはじまり、見つかったWantsを起点にチームを作り、事業を構想し、事業プランを発表します。

まず、個人ワークとして次のようなことをしていきます。

ストレングスファインダーを使った資質診断で自分の強みと弱みを知る

・「死ぬまでにやりたいことリスト」をつくり、事業テーマを決める。

事業テーマからを事業アイデアにした後はチームを形成し、セッションを活用しながら事業内容の深掘りを重ねていきます。柔軟で意外性のあるアイデアを生み出すためのセッションや、アイデアをビジネスモデルにするセッション、事業計画の発表と継続に必要な収支を計画するためのセッションなどがあります。

セッションの後半は、最終発表に向けてプレゼン資料の作成発表の練習をしながら、革新者からのアドバイスも入り、さらに事業内容をブラッシュアップさせていきます。

最終発表は「事業開始宣言」にもなるため、発表後、すぐに起業できる絶好の機会でもありますが、発表した事業をどうするかはチーム次第です。

メンバーを変えずに、事業化することもあれば、チームは解散して違うメンバーで事業化する場合など、発表後の活動は様々です。

今年度の参加者募集は、既に始まっており、7月5日までの申し込みが必要です。申し込みフォームや、過去のプログラムの様子などがわかるFacebookべージはこちらです。

とかち・イノベーション・プログラム Facebookページ▼
https://www.facebook.com/tokachiinnovationprogram/

修了生のその後

実際にTIPにはどんな人が参加していたのか、参加したきっかけや感想、TIPが終わった今、どんな活動をしているのか、「起業していて参加」「勤めながら参加」「TIPを機に起業した人」に分けて、5人の方にインタビューしました。

<①岸田 友恵さん/起業していて参加>
からあげグランプリ3年連続金賞の店舗MOGMOG&(モグモグアンド)の経営、合同会社「十勝Plus」代表。
TIP9に参加。「もったいないをなくす、廃棄食材の加工流通革命」事業を発表し、株式会社MXを設立。現在クラウドファンディング中。クラファンページ(6/30まで):https://camp-fire.jp/projects/view/758860

TIP に参加する前から飲食店の経営や合同会社の設立をしている岸田さん。

新しくやりたいと思っていることがあるものの「ひとりの知識では限界がある」と感じて、TIP9に参加。参加中は、自分の知らない単語が飛び交い、プログラムについていけるかという不安もあったと言います。それでもTIPを続けられた理由は、周囲の反応とメンターのアドバイスがあったからだそう。

岸田 友恵
岸田 友恵

私の事業アイデアを発表すると、周囲の反応は予想よりも大きく、応援もいただけたことで事業の必要性を感じました。

 

チーム活動では、ひとりで経営してきたぶん、ある程度できることは多かったものの、チームを作ったことで、伝わらないもどしかしさに苦しみました。

 

しかし、メンターから「できないことや苦手なことは周りに頼っていい」と言われ、肩の力が抜けました。大人になってから、そんなアドバイスをもらえることはないので貴重な思い出です。

 

TIPは、いろんなきっかけがある場所です。

ビジネスを知り、自分を知り、たくさんの人と出会って繋がり、責任をもって踏み出せるきっかけが詰まっています。

今後は、既存の事業とMXを軸に、働く人と生産者の笑顔を見て「やってよかった」と思える事業にしたいと思っています。

 

<②小松 勇斗さん/勤めながら参加>
ふく井ホテル フロント業務に従事。TIP9に参加し「モール足湯」事業の主犯として事業構想案を発表。先日クラウドファンディングで目標を147%で達成。
・ふく井ホテル:https://www.instagram.com/fukuihotelobihiro/
・モール足湯:https://www.instagram.com/moor_footbath/

 

社長からTIPに参加することを促されたものの、TIPのキックオフミーティングに参加して「起業プログラム」だったと知り、場違いだと思った小松さん。ですが、社長からは「他の人と別のフィールドで活躍できることは、唯一の存在になるチャンスだ」と言われて、参加の継続を決めたそう。

小松 勇斗
小松 勇斗
当時は入社したばかりで、他の人と同じ業務で追いつこうと思っていたので、社長からの言葉には驚きましたが、「唯一」という言葉にワクワクしました。

 

メンターやメンバーがたくさんの時間を使ってくれたおかげで、絵だったアイデアが徐々に現実味を帯びました。

それと同時に、みんなが費やしてくれた時間に応えたいという気持ちも積もり、最終発表に持っていくことが恩返しだと思って取り組み、最終発表では事業構想だけでなく、チームの素晴らしさも見せるつもりでプレゼンをしました。

 

TIPは、人との繋がりを大事にしようと思えるきっかけの場所です。
なので、参加の動機は人脈づくりでもいいと思います。

 

今は、ふく井ホテルの認知度や価値を向上するためにどうしたらいいのかを考えながら仕事をしつつ、TIPの代表事例になるようモール足湯の活動も続けています。

 

<③千葉 恵里さん/勤めながら参加>
TIP7・8に参加。外資系金融機関の営業職に勤務

TIPに参加した当時は入社1年目で、起業の意思はないものの、人脈づくりもできると、TIP事務局に声をかけてもらったことがきっかけで、参加したという千葉さん。

千葉 恵里
千葉 恵里
お金のアドバイザーとなるお仕事だったので、起業する人の思いや考え方、どんなことに困るかを知りたいと思って参加しました。

私は職歴が幅広いので、チーム内で事業構想する際に、いろんなアイデアを出せたことがとても楽しく、仕事の息抜きにもなっていました。

もし、今後会社を辞めて起業をすることになったら、またTIPに参加したいと思っています。

 

起業するとなると、他者の意見を聞く機会は少なくなりますが、TIPなら十勝管内から道外の革新者まで様々な意見を聞くことができ、プログラムの内容も年々変わるので新たな刺激を期待できるからです。

 

今後は、私自身の知識や思いを合わせて、食・健康・お金に関することを発信し、幸せになるヒントをお届けしたいと思っています。

 

<④池田 美奈子さん/TIPを機に起業>
TIP4・8に参加。現在ものづくりカフェ〜Misin & Eats~の店主。
・ものづくりカフェ:https://www.instagram.com/monozukuri_obihiro/

池田さんは十勝の自然に魅かれて移住してきた方。十勝の飲食店で働いていくなかで、ご自身のお店を作りたいと思っていたものの、どんな形でやりたいのか定まらずにいたところで、TIPの開催を知り、TIP4に参加。ご自身の思いが明確になり、TIP4終了後、現在の店舗を構えます。

しかし、オープン直後、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、人が集まれない状況に気持ちが落ち込んだといいます。

池田 美奈子
池田 美奈子
私は、プログラム終了後に、TIPの力を実感しています。

 

「人が集まり、楽しく過ごせる場所を作りたい」と思ってお店をオープンした矢先に、コロナで営業自粛となり、だいぶ落ち込みましたが、過去のTIP参加者である「TIPファミリー」が励まし、助けてくれました。

起業することも、起業したあとも、その苦労を分かり合える人が集まったTIPファミリーだからこそ、お互いを応援しあえる仲だと思います。

 

起業自体はひとりで行いましたが、TIPでの繋がりがきっかけで、当時のTIPメンバーだけでなく、TIPファミリーとも一緒に、イベントを企画するなど、幅広い活動ができています。

 

<⑤神部 葵さん/TIPを機に起業>
TIP9に参加。広尾町の地域おこし協力隊の活動をしながら、「青熊笑店(あおくましょうてん)」として十勝を中心に様々なイベントに出没し、”あなたに合うビール”をお届けしています。
・青熊笑店:https://www.instagram.com/blue_beargragh/

参加当時は、広尾町の地域おこし協力隊の1年目。自分のやりたいことがぼんやりとしていて、この先どう形にしたらいいのかと行き詰っていた時に、TIP事務局員に誘われて参加。TIPがきっかけで、自身のやりたいことを見つめ直せたと話します。

神部 葵
神部 葵

TIPは、熱量の高い人が多く、たくさんの刺激とエネルギーをもらえたことで、私自身のやりたいことを深く考えるきっかけになりました。

チームは途中で解散しましたが、そのぶん、私自身がこの先もやりたいと思えるものは何だろう……と改めて考えることができ、「100歳になっても美味しくビールが飲みたい」という気持ちに気づき、「青熊笑店」として活動することを決断できました。

 

TIPが終わった後も、青熊笑店で参加するイベントにはTIP9の人が来てくれて、繋がりが繋がりを呼んで、深まっているのを実感しています。

今は、十勝にビール好きを増やすことを目的に活動し、将来は夫婦でブルワリーを作ることを目標にしています。

 

まとめ

私がTIP9に参加した理由は主に2つでした。1つめは、頭の片隅にあった「やってみたいこと」を形にする方法を知りたいと思ったこと。2つめは、たくさんの「知らない人」と関わり、私自身の視野を広げたい、と思ったことです。

キックオフミーテイングで初めて会った同期は、年代や業種はバラバラで、参加の動機も十勝を盛り上げたい!、自分にできることで誰かを応援したい、そもそも自分にできることを探しに来たなど、様々でした。

今思うと、たくさんの動機から共通して感じたのは「十勝」というキーワード。
「十勝で生きているからこそ、何かをしたい」という気持ちが、参加の動機に隠れているようにに感じました。

参加者の多さと熱気に圧倒され、ここでやっていけるのか、という不安や緊張とともに、いろんな世代の人と関われる機会にワクワクもしました。

次は、TIPの最大の特長である「チームを作るまで」をレポートします!






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ありとよ

ありとよ

ライター

1987年生まれ。約10年東京に住み、2020年にUターンで帯広に戻ってきた。料理と食べることが好きで、Instagramは食べもので埋め尽くし、食べた時に感じたことを書いている。事務とSNSの運用代行、ライター、食関係の仕事をしており、料理を通したコミュニケーションプレイスを作ることを思い描き中。読んだ人の「きっかけ」になることを願いながら、体験して感じたことを、心の底から素直に紡いでいきます。

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