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未来に残したい 柔らかな挑戦の場「十勝ドリームマップ会議 2023」レポート

十勝で新しい事業の創発をサポートするプログラム「とかち・イノベーション・プログラム(TIP)」をご存知でしょうか。毎年7月~11月に開催され、すでに24の事業を輩出した実績のあるプログラムです。そして、2024年2月16日(金)TIPの卒業生が一堂に会する「十勝ドリームマップ会議」が北海道ホテルで開催されました。TIPを振り返ることで見えた、TIPの魅力やTIP卒業生が考える10周年企画の様子を、参加者だった私(ありとよ)が紹介していきます。

挑戦者たちに気づきを与え続ける場

TIPは、帯広信用金庫が主催し、野村総合研究所の協力のもと、2015年より開催されている起業支援プログラムです。数々のグループワークを通して、事業テーマを見つけ、チームで事業内容を構想し、投資家や地域関係者に向けて事業プランを発表します。そして、TIP卒業生になると、年に一度、対面で集まる、ネットワーキングイベント、十勝ドリームマップ会議に参加することができます。

TIPは、主に十勝管内の人々が集まるプログラムですが、十勝ドリームマップ会議は、十勝管外の人との交流を中心とし、新しい気付きを得る場所として開催されています。十勝ドリームマップ会議のテーマは毎年変わり、過去にはTIP関係者が、首都圏に行って事業者と交流を深めたり、芸術家とのトークイベントもありました。


しかし、今年は十勝管外との交流ではありませんでした。

来年で10周年を迎える十勝ドリームマップ会議の企画が、まっさらな状態のため、TIP卒業生に各自が楽しめる企画を出して欲しいという目論見です。

そのため、今回は「TIP大同窓会~縦糸を紡ぐ~」というテーマのもと、TIP卒業生が一堂に会しました。

これまでのTIPをムービーと各期代表の挨拶で振り返り、グループワークで10周年の企画を考えるというのが今回のプログラムです。

TIPに十勝の持続可能な未来のヒントがある/米沢市長の挨拶

9年間のTIPを振り返る前に、米沢市長が、市長になったきっかけについて話しました。

15年ほど前、野村総研の齋藤さんから『周囲の人の賛同と共感を前提とせず、まずは自らの心と直感に従う勇気を持たなければならない』という言葉を聞きました。この言葉は、自分が生涯をかけてやりたいことを問うきっかけになり、気がつけば、前職をを辞めて、市長に立候補をし、今に至ります。

豊かな資源と諦めない意志を持つ挑戦者たちがいる、十勝には持続的に発展できる力がある、と米沢市長は確信し、TIPという施策を始めました。

そもそもTIPが始まったのも、野村総研の齋藤さんとの対話がきっかけであることから「TIPの産みの親は齋藤さんです、そしてTIPの育ての親は、TIP卒業生である皆さんです」と話しました。

続けて「十勝ドリームマップ会議では、毎回新鮮なアイデアや意外な成長に出会える喜びがある。今日もTIP卒業生が、十勝ドリームマップ会議の10周年企画としてどんなアイデアを出してくれるのか、とても楽しみにしています」と、TIP卒業生のチャレンジ精神を焚き付けて挨拶を終えました。

参加したからこそ得られるもの


10周年の企画を考える前に、これまでのTIPを映像で見ながら、各期代表が当時の思い出とTIPに入ってよかったことを話し、振り返りました。

TIPは、新規事業の創発を支援するプログラムですが「成功する方法」を教えてくれる場所ではありません。自分自身のやりたいことと、地域の発展を掛け合わせ、挑戦する機会がある場所です。

そのためTIPには、起業を目指す人もいれば、何かに挑戦したい、何かを見つけたい、という気持ちの人も集まります。

各期代表の話からは、参加の期や目的が違っていても、TIPに参加してよかったと思う、3つの共通点が見えました。

1つめは、自分の軸が見つかることです。

TIPでは、まず自分のやりたいことを書き出し、やりたい理由やストーリーを突き詰めて考え、自分が生涯をかけてやりたいと思えることを探します。これをTIPでは”Wants”と呼びます。

Wantsを事業の軸として、チームを形成するため、Wantsはチームの中で何度も立ち返り、さらに深堀りをすることもあります。
この作業を繰り返すことで、自分の軸が太くなり、使命感を持ったという方がいました。

次に、仲間ができることです。


形成されたチームで事業プランを練り上げていく時間は、励まし合い、ぶつかり合いながらの泥臭い時間の繰り返しです。濃密な時間を過ごせたからこそ、チームが解散した今でも相談ができ、活動の支えになる一生ものの仲間に出会えたという人たちがいました。

最後は、TIPが終わった後もTIPを通じた繋がりがあることです。

TIPが9年続いていることで、十勝管内に起業家の繋がりである、エコシステムが少しずつ築かれています。同期ではなくてもTIPという言葉で、関係者との繋がりが生まれ、行き詰っていたアイデアが思いもよらない方向に発展し、助けられたという話がありました。

いずれの共通点もTIPに参加した私自身も体感できたことであり、TIPで得られることが9年間変わらないことは、TIPの最大の魅力だと感じました。

10周年にやりたいこと

いよいよ10周年の企画を考えるプログラムです。これまでの振り返りを踏まえて、米沢市長から企画を考える際のキーワードと、キーワードを選んだ理由が発表されました。

今回選んだキーワードは、「楽」「創」「絆」の3つです

人に押し付けられて働くのではなく、自らがプレイヤーとなって楽しんで働いてほしいという思いから『楽』を選びました。

そして『創る』は、一般的な創造ではなく、イノベーションに不可欠な「クレイジー」という意味を込めています。

最後の『絆』には、ネットワークという意味も含めていますが、機械的なものやお金で買えるものではなく、TIP卒業生なら体感している、人との繋がり、信頼関係を意味しています。

3つのキーワードを基に、14チームがそれぞれ企画を考えたんです。TIPでは恒例のグループワーク時間に、懐かしさと熱気を感じました。

グループワーク時間後、全長20mのホワイトボードに各チームが案を描いていきます。

描かれた案には、TIPの繋がりを活かす、TIPメンバーの事業を巡るツアーや、全国に点在する「イノベーション・プログラム」の参加地を巡るツアーがありました。

他には、子どもと関わることをテーマに、TIPメンバーの事業を子どもが体験するイベントや”10周年”にかけて、10歳が審査員のコンテストを開催するという企画案も出てきました。

どの企画も、今は見えない可能性を信じ、人が繋がることで起こる、新しい化学反応を期待しているようでした。

最後は、TIPの「産みの親」である野村総研の齋藤さんの挨拶で、十勝ドリームマップ会議を締めくくります。

「たくさんの人が”TIP”という言葉で、繋がっていく光景を見られたことが、とても嬉しく幸せに思います。TIPを10年続けられたことには感謝していますが、10年で終わるのではなく、ぜひ100年続けていってほしい。そしてTIPだけの100年記念館が創れることを願っています」

十勝ドリームマップ会議の案内がきたときは、たんなるアイデア出しの手伝いだと思いました。しかし、参加してみると私がTIPで体感した思いは、先輩方も感じていることだと知り、TIPの魅力を再認識しました。「TIPは、ほんの数か月で私を変えてくれた」と話した人もいます。

TIPという柔らかな挑戦の場がきっかけで、自分の思いや可能性に気づき、十勝とかけ合わせることで、十勝で生きる楽しみを見つけられたような気がしました。そして、この恵まれた機会を、より多くの人に繋いでいきたいと思いました。

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ありとよ

ライター

1987年生まれ。約10年東京に住み、2020年にUターンで帯広に戻ってきた。料理と食べることが好きで、Instagramは食べもので埋め尽くし、食べた時に感じたことを書いている。事務とSNSの運用代行、ライター、食関係の仕事をしており、料理を通したコミュニケーションプレイスを作ることを思い描き中。読んだ人の「きっかけ」になることを願いながら、体験して感じたことを、心の底から素直に紡いでいきます。

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