十勝の食と一次産業の未来を考えるビジネスカンファレンス「十勝アグリ&フードサミット」が9月29日、十勝帯広市で開催されました。日本No.1の農業産出額を誇る北海道の中でも、最大規模の十勝に、全国の農業関係者や農業のICT化を進めるアグリテック系の人たちが集まり、情報交換しました。
北海道の農業産出額は不動の1位、中でも十勝がトップ
農林水産省によると、2020年の日本の農業総産出額は8兆8,938億円で、農業産出額の上位5道県は、1位が北海道で1兆2,667億円(対前年増減率0.9%増加)、次いで鹿児島県4,772億円(同2.4%減少)、茨城県4,417億円(同2.7%増加)、千葉県3,853億円(同0.2%減少)、熊本県3,407億円(同1.3%増加)となりました。毎年、変わらないのですが北海道は2位に倍以上の差をつけて不動の1位です。北海道は例年1兆円超えで、首位を独走しています。
そんな、ダントツの農業産出額を誇る北海道の中で、これまた優秀な地域が十勝です。農業産出額は北海道の中でも圧倒的にトップで産出額は3,000億円を超え、北海道全体の2割から3割を占めます。2位のオホーツク1,954億円に大きな差をつけ、まさに農業王国・十勝なのです。
北海道十勝の一流の素材を生かした一流のメニューが必要です!
そんな日本No.1の農業産出額を誇る十勝で9月29日、十勝の食と一次産業の未来を考えるビジネスカンファレンス「十勝アグリ&フードサミット」が開催されました。
初開催となった「十勝アグリ&フードサミット」(とかち財団主催)では、さまざまなトークセッションが開かれ、北海道内外の1次産業に関わる企業や食のキーマンのほか、東京大学、筑波大学、北海道大学など、全国から農業系サークルの大学生らが登壇しました。
中でも、「1次産業と食の未来 / 2030年を見据えて」をテーマにしたセッション①では、敷島製パンの盛田淳夫社長、山忠ホールディングスの山本英明社長、JA系の事業創発を支援するアグベンチャーラボの荻野浩輝代表理事らが登壇。
3人は、ウクライナ情勢によりあらゆる農産品が高騰している点について、「食料危機は待ったなしです。食料自給率の低さを改めて問題視し、いまこそ抜本的な対策を考えなくてはなりません」と指摘。
一方で、日本の社会の変化についても触れ、 40年前に640万世帯だった共働き家庭が今では約2倍の1240万世帯に増えたことや、女性の社会進出も進み、消費者動向が40年前とは全く異なっていることに言及した上で、「消費者のライフスタイルにあわせた商品開発が必要ですし、昔の販売手法が全く通じないんです」(盛田社長)と多様化した時代に合わせた対応の大切さを示しました。
また、地元企業の山本社長は「十勝の食料自給率は1200%を超える農業王国だが、素材の良さに胡座をかき、本気で商品開発やマーケティングをしてこなかったことで、一流の素材は多くても自慢のメニューが少ない」と十勝の一流の素材を生かしたメニュー提案が必要と話しました。
さらに、アグベンチャーラボの荻野浩輝代表理事は、「時代の変化に対応するにはテクノロジーの活用が不可欠だが、日本にはあまりにもスタートアップ企業が少ない。日本の未来の農業を良くするスタートアップ企業がもっともっと必要だ」と訴えました。
北海道農業トップの十勝で大学生が農業課題を発見
十勝アグリ&フードサミットでは、十勝の農業の未来をテーマにしていることもあり、全国の大学の農業系サークルに所属する大学生らを招集。サミットでは、tokachi field action LabとLANDのコラボ企画として、全国から6つの大学の学生26名が、十勝地域の一次産業の現場や地元企業にフィールドワークを行い、期間中に感じた課題や十勝の価値についてサミットで発表しました。
6つの大学は、東京大学「東大むら塾」、立命館大学「食マネジメント学部・学生団体カノール」、筑波大学「のうりんむら」、東海大学「阿蘇援農コミュニティープロジェクト」、北海道大学「ほくだい畑」、宮崎大学「地域資源創成学部・宮崎大学学生起業家」。
学生たちは、「農業×経済」、「農業×技術」、「農業×環境」、「農業×つながり」の4つテーマ(コース)に別れて十勝管内の農業現場や企業にフィールドワークワークを行いました。サミットの前日は、現場で感じた課題や十勝の価値について、まとめるのに遅くまでかかったそうです。当日は、全国から駆けつけた農業関係者ら大人を前に発表。学生らが登場すると、会場はそれまでの雰囲気とは一変。学生らの熱気に包まれ大盛況となりました。
4つのチームは、以下の12の企業や農業現場を訪問。
チーム【農業×稼ぐ】は、雑穀卸を営む「山本忠信商店」、総合畜産業を営む「ノベルズ」、1899年から続く、北海道・十勝の畑作生産法「前田農産」
チーム【農業×技術】
衛星リモセンデータを基に農業に役立つ情報を配信する「スペースアグリ」、カルビーのグループ会社「カルビーポテト」、農作業を手軽に効率化・見える化し、スマート農業を実現する「農業情報設計社」
チーム【農業×環境】
製造・販売するミルキングパーラーや糞尿処理システムなど「土谷特殊農機」、有機農産物や有機畜産物を主原料とする食品シリーズを発売「アグリシステム」、人も牛も健康に私たちは、地球に優しい循環型酪農業を目指す「鈴木牧場」
チーム【農業×つながり】
多様な一次産業を繋ぎ、体験型観光や商品開発する「ピロロ企画」、十勝のソウルフード!老舗パン屋さん「満寿屋商店」、十勝の畑をピクニックするガイドツアー「農場ピクニック」を運営する「いただきますカンパニー」
各チームが等しく驚いたのは、「十勝の大地の広さと農業の規模」でした。参加した学生らは「これほど大規模な農業と最先端のテクノロジーが活用されているのに驚いた」や「効率だけではなく、農業への熱量の高さや愛情の深さを感じた」など、十勝の農業の底知れぬ深さを感じたそうです。
また、学生らが感じた課題でもっとも多かったのは「十勝の人たちは十勝をしらない。できれば一度、十勝以外に住み、視野を広げてほしい。もしくは十勝外の人たちとの交流を増やして、外から見た十勝の良さや課題に耳を傾けてください。そうすることで見えてくる課題をICTやAIといった新たなテクノロジーで解決することで、十勝農業の未来は明るい」と訴え、会場の大人たちを響めかせる場面もありました。
ちなみに「十勝アグリ&フードサミット」は、北海道の新たな成長産業として期待されている「宇宙ビジネス」について企業などが意見を交わす「北海道宇宙サミット」と同時開催でした。
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