帯広市内のホテル「NUPKA Hanare(ヌプカ・ハナレ)」で10月3日、新しい出会いを生み出す不定期開催のオンラインイベント「旅のはじまりナイト」が開かれました。今回のテーマはズバリ、「関係人口型地域商社」。テレプレゼンスシステム「窓」を活用して東京・溜池山王の「KIC(Keizaikai Incubation Center)」と結び、帯広と東京の2つの会場を舞台にプレゼンテーション&トークセッションが行われました。
オープニングは「旅のはじまりのビール」で乾杯から♪
イベントの司会を務めたのは「HOTEL NUPKA」を手掛ける十勝シティデザイン株式会社代表であり、弁護士としても活躍する帯広市出身の柏尾哲哉氏。同ホテルや「馬車BAR」の運営など、十勝エリアを活性化させるさまざまなプロジェクトの仕掛け人です。
東京会場には「都市で生活しつつも地方との関わりを持ちたい」「多拠点型のライフスタイルに興味がある」「志のある地域事業者を応援したい」といった目的を持つ十数名が参加。同ホテルのオリジナルクラフトビール「旅のはじまりのビール」を片手に、リラックスしたムードで親睦を深めます。一方、帯広会場には帯広信用金庫・地域経営サポート部をはじめ、人脈やビジネスチャンスを広げたい地元経営者、コンサルタント、十勝産作物の加工・販売などを担うプロモーターら6名が集い、こちらも参加者同士の交流を深めていきます。
イベントのハイライトは「関係人口型地域商社」の紹介
「旅のはじまりナイト」は、地方の魅力や地元の食材、文化を広めることを目的としたイベントです。なかでも今回は“関係人口”にフォーカス。地域と都市の双方向の繋がりをテーマに、“この人生100年時代に、地方に住まない人々がどのようにして地方活性化に貢献できるのか”を深掘りする形でトークセッションが進められます。
また「関係人口型地域商社」とは、都市に住む人々が地方の産品やサービスを広め、プロモートする役割を担う仕組みを意味するもの。これにより地方産品の販路拡大や、地方と都市の双方向の経済的な繋がりが生まれると言います。イベントでは、このビジネスモデルが地方経済にどのように寄与するのかを解説。「旅のはじまりのビール」をケーススタディとして、具体的な取り組みが紹介され参加者たちの関心を集めました。
十勝の農産物に付加価値を。「はじまりは甘いニンジン『アロマレッド』でした」
続くプレゼンテーションでは帯広会場の参加者であり、北海道産作物等の流通・加工・販売・プロモーションを行う合同会社Renew(リニュー)の田中良治CEOに進行をバトンタッチ。国内最大級の農業生産地である十勝地域の農産物を例に挙げ、単なる生産物としてではなく地域産品に付加価値をつけることで全国展開に成功した取り組みが紹介されました。
最初に取り上げたのは、北海道・新得町で生産されるニンジン「アロマレッド」です。新得特有の自然環境を生かし、JA新得町に加盟する生産者によって大切に育てられるアロマレッドは糖度が高くフルーツのような爽やかさが特長。一方で、いわゆる「歩留まり」が悪く、規格外野菜としての廃棄量が高いという弱みも……。そこで同社では「付加価値を高める」「生産者に還元される」「持続可能である」を信条に、パウダー状に加工した商品を開発。保存期間を延ばし、都市部の消費者にも安定して行き渡る新たな特産品として販売を開始しました。こうした事例は地方産品の潜在的なポテンシャルの高さを示しており、地方創生を担う「地域商社」としての良きビジネスモデルとなるようです。
地方と都市を繋ぐことが「地方経済の活性化」の一翼に
イベントの後半には十勝産食材を楽しむ試食・懇親会が設けられたほか、地方と都市の共存を目指す取り組みについての言及も。都市部から地方への移住や関係人口の増加は、地方経済の活性化に寄与するだけでなく、都市部に住む人々にも新しい価値観やライフスタイルを提供する可能性があるとの意見に多くの参加者が深くうなずいていました。とりわけリモートワークが普及するなかで、いわゆる2拠点生活や副業として地方に関わる人々が増えてきています。これにより地方の資源を活かしたビジネスモデルがますます多様化し、地方と都市が共存する新しい社会の形が出来始めているようです。