猫を家族として迎えたいと思ったとき、足を運ぶ場所はペットショップ以外にもあります。
保護猫活動団体「つなぐねこ」が主催する保護猫譲渡会が、5月18〜19日の2日間にわたって開催されました。会場の子育て支援ハウスChips(帯広市西4条南15丁目12)には、保護猫との新たな出会いを求めて、約140人が訪れました。
動物を飼ったことがない私ですが、猫が入ったケージに書かれた紹介文を見ているだけで愛着が湧いてきて、一緒に暮らした時の生活も想像できるイベントでした。
「つなぐねこ」とは
飼い主がいない、あるいは飼育放棄された猫を「保護猫」と言います。
保護猫活動団体「つなぐねこ」は、北海道十勝在住の3人の主婦が中心となり、保護猫の相談を受け、状況に応じて受け入れし、譲渡できるようになるまで飼育しています。メンバー以外にも里親や預かりボランティアで、乳飲み子、子猫、成猫など様々な年齢の猫を保護しています。
保護猫の主な相談は2つあります。
- 通報
- 単身者、高齢者の生活環境の変化
通報は、外で歩いている猫を見かけた方からの連絡。生活環境の変化は、飼い主が入院、死亡、あるいは施設へ入所することになったとき、家族での飼育が難しい、という相談です。
しかし、保護できるスペースは限られているため、「つなぐねこ」では、いずれの経緯でも、すぐに受け入れるのではなく、通報者や家族の方と今後の対応を一緒に考えて、譲渡までの時間をできるだけ短くする工夫をしています。
保護猫譲渡会とは
飼育できる猫の頭数には上限があるため、保護猫の受け入れを増やすには定期的に引き取り手を見つける必要があります。
保護猫の譲渡については、Instagramやブログで呼びかけを行っていますが、一度に多くの猫を見てもらい、譲渡の機会を増やすため、また自分たちの活動を知ってもらうためにイベントとして開催するようになったそうです。
さらに、飼育にかかる餌代や病院代はすべて団体メンバーが自腹で負担しているため、活動資金を募る目的もあります。
譲渡会の様子
普段は、子育て支援ハウス Chips まちなかAid店が、保育園のホールとして使用しているスペースに、子猫から成猫(6歳)まで合計16匹の猫が参加していました。
ほかにも猫をモチーフにしたグッズや「つなぐねこ」の活動を応援するショップの物販コーナーもあり、来場者の年齢層や客層も幅広く、20代のカップルや、中高年のご夫婦、家族連れなどが訪れていました。
猫は環境の変化にとても敏感なので、緊張してるのかケージが揺れるほど、怯えてるような猫も居れば、ぐーぐー寝てる猫も居て、個性豊か。
猫が入ったケージには、健康状態だけではなく、保護した状況や性格、好きなこと、苦手なこと、飼育時に配慮してほしいことが細かく書かれた紹介文が貼られており、紹介文に書ききれないことは、係りの人が丁寧に補足してくれます。
紹介文を見たり、話を伺っていると、それぞれの猫を飼った時の生活イメージが湧いてきました。
参加しているのは、主に人馴れした猫ですが、参加していない猫についても貼り紙をしており、後日面会することが可能です。
譲渡までの流れ
譲渡会で迎えたい猫がいた場合でも、当日譲渡はなく、次のような手続きがあります。
- 書類に必要事項を記入する
- 団体メンバーからの連絡で、面談日を決める
- 団体メンバーが希望の猫を連れて、ご自宅を訪問
- ご自宅が飼育に適した環境かを確認
- 希望する猫の状態を改めてお伝え
- 問題が無ければ、譲渡
譲渡には他にも、高齢や単身の場合の後見人を立てられるか、経済的状況などの条件があります。
猫は外を歩いていたり、脱走することがあるので、外に出しても良いように思いますが、繁殖や病気などのリスクがあります。寿命も、外飼いの猫は5年、室内飼いの猫は15~20年と言われており、譲渡する際には「室内飼い」を条件として、「脱走対策」のアドバイスもしています。
このように譲渡会で申し込み希望をいただいてから、最終的に譲渡が成立するのは7割くらい。おおよそ8匹前後だそう。
「餌やり」と「多頭飼育崩壊」
保健所では施設の状況に応じて、動物保護の受け入れを断れるようになっていることから、殺処分の件数は年々減少しているものの、その分「つなぐねこ」のような保護団体に負担がかかっています。
「保健所で受け入れられず、捨てられる猫や私たちへの相談が増えています。現在50匹の猫を保護していますが、今いるメンバーではこれ以上、猫を受け入れることが難しい状況です」と「つなぐねこ」の桑原さんは話します。
また、捨て猫に対して飼育をしない「餌やり」も問題で「情けや見て見ぬふりができないという気持ちで、餌やりをされていると思いますが、餌やりをすると、そのエリアに住みついてしまい、糞尿問題で近所の人からの苦情が通報として入ってきます。去勢、避妊手術をしなければ、繁殖し続けてしまうので、餌やりと保護のイタチごっこになっています」とも話します。
結果、近年では去勢や避妊手術といった適切な処置を行わなかったことによる大量繁殖で、「多頭飼育崩壊」という問題にも繋がっていると言います。
実例として、2023年には帯広のあるアパートで数十匹の猫が発見される「多頭飼育崩壊」が発生し、「つなぐねこ」が対応したそうです。「多頭飼育崩壊になると、近隣の方の迷惑になるだけでなく、猫たちも栄養失調や病気による体調不良のリスクが増えるため、引き取りが急務になるんです」(桑原さん)
一緒の暮らしをイメージする
「保護猫」というと、荒々しく、人見知りが強くて手間がかかるイメージがありました。しかし、譲渡会を通じて、里親が猫を人馴れさせる過程や猫の性格や好みについて詳しく知ることができ、必要な環境についてのアドバイスも受けられるため、初めて飼う人でも安心して猫を迎えられるイベントだと感じました。
また、譲り受けることで、猫への愛情と命を預かる責任を実感し、互いに心地よく長く一緒にいられる環境を整えることの重要性を認識させられました。
今後も譲渡会は2~3か月ごとに開催される予定で、譲渡会以外でも、譲渡可能な猫についてはInstagramやブログで随時情報が更新されます。猫を迎えたいと思った時には、ぜひこのような譲渡会に足を運んでみてはいかがでしょうか。
information
【主催者:つなぐねこ】
・SNS(Instagram):@tunagu_neko
・アメブロ:https://profile.ameba.jp/ameba/tunagu-cat
【開催場所:子育て支援ハウス Chips まちなかAid店】
・住所:帯広市西4条南15丁目12