帯広で映画を観た!シネマ de 十勝は、帯広で働く腐女子。「総統」と呼ばれた女子が、身の回りの幸せ(美味しいご飯・趣味・脳内妄想など)で足るを知る小市民として、十勝の観光文化検定(とかち検定)上級合格の実力を発揮しつつ、帯広・十勝の話をしつつ、映画を語るコラムです。今週の映画は『スオミの話をしよう』です。
前回のコラム「帯広で映画を観た!」はコチラ
『スオミの話をしよう』を観た
この作品は、長澤まさみさんを堪能する映画です!
世の映画や本の評論と同じように文中敬称略で行くと決めたのに、好きが溢れて出てしまいました。
大富豪の妻スオミ(長澤まさみ)が行方不明となり、未だ未練のある元夫達があれやこれやで集合し、「失踪か?誘拐か?」その謎を解く――
という、ちょっと「オッサン(作中の表現)」達の割合が多くはありますが。
それでもこれは、様々な長澤まさみを見せてくれる作品です。
私は「長澤まさみを恋愛物のヒロインで消費するのは勿体無い!!」
「もっと、楊端和(『キングダム』)のようなクールビューティーを!!!」
と願ってやまない宗派の人間。
ただ、宣伝に用いられているコピーのような「三谷幸喜最高傑作!」というほどの最高傑作ではない、とは思いました。
「人に薦めることができるか?」という、コラム欄で取り上げる自分内基準は長澤まさみポイントだけで超越しているだけでなく、悪くはなかったんですが。
個人的に、薦められる映画のラインを100点満点中60点と仮定しますと、三谷幸喜監督は60〜79点作品をコンスタントに作ってくれるイメージ。
これはあくまで、個人的嗜好でしかありませんが。
個人的には長回しのセリフ劇って、舞台やドラマならよくても、映画に対しそこは求めていないもので……。
そうは言っても、基本的に邦画があまり得意ではない私でも安心して見られる、好きな脚本家さんではあります。
何というか、三谷幸喜作品はテレビドラマや映画であっても、あちこち場所は変われど、舞台を見ているような感覚になると言いましょうか。
外部との連絡手段が少なく独自の発展を遂げた因習村か、隔絶された山荘を見ている気になると言いましょうか。
現代物ではあるけれど、俳優たちの大仰なセリフ回しや演技は、派手さや大立ち回りのない人情物歌舞伎の発展系のようでもあり。
三谷幸喜という噺家の新作落語のようでもあり。
ノンフィクションであっても、現実世界と地続き感の薄い、三谷幸喜という人の作り上げた箱庭を鑑賞する会のような感覚になります。
(そういう独特の世界観を構築し、そこへ案内してくれることを評価しているのであって、悪口ではないです)
そういう箱庭感が出色だと思うのですが、わざわざお金を払って足を運ぶからには映画作品に派手さや爽快感、スカっとした解決を求める人には、ちょっと方向性が違うだろう。
そういう作品です。
様々な長澤まさみを堪能できる作品
大事なことなので繰り返しますが私はこの作品、監督の「最高傑作!」とまでは言えないけれど、良いと思って褒めています。
神出鬼没の女(宮澤エマ)に対して、「昔だったらこの役を演じていたのは三田寛子さんかしら?」と感じたくらい、懐かしさと昭和感があってよかったです。
ともあれ、様々な長澤まさみを堪能できただけで、私は十分なのでございました。
長澤まさみ&三谷幸喜の二人を、「元々好きではない」という人にとっての見どころは、正直分かりません。
「複数の男を渡り歩く」スオミという役を演じるだけあって、若すぎず、シワ等ができるようになってからこの役を演じたのも、また良かったと思います。
年齢に抗う努力をする人もいれば、あるがままを受け入れる人もいる。
みんな違ってみんないい。
(私はどちらも、好き!!)
本編の最後でミュージカル調になったときに、男性陣の名前の横に振られるナンバリングはお見逃しなく!!
あらゆる長澤まさみ&ここでの数字は必見です。
「十勝」のあの方々が頭に浮かんだ
さて、『スオミの話をしよう』の作中では、無理にこじつけなくても「十勝」という名が登場します。それも頻繁に。
なぜならスオミの二番目の夫、怪しげなYouTuberであり事業家(松坂桃李)が十勝左衛門(とかち・ざえもん)という名前だからです。
十勝出身だとか十勝との関連は触れられていませんが「十勝さん」「十勝さん」と連呼されるので、十勝民としてはニヤケました。
『怪しげなYouTuber』で連想する――とかモデルの一人っぽいなどというと、不名誉な話なので固有名詞は差し控えますが。
実在する十勝関係者には、若くして政治系YouTuberとして名を上げ首都圏に出た方もいますし。
宇宙基地・大樹町に住民票を移した、ネットに強い起業家・経済人の要素もチラついたりしました。
そうはいっても『怪しげなYouTuber』だけあり、「十勝」ときて「マルチ商法にも手を出す」となると、上記のお二人ではない別人物が浮かびます。
性別は違えど、十勝出身で某グループの大幹部となった方がいらっしゃるので……。(知っている人は知っている話だし、どこかから怒られそうなので詳しくは述べません)
これはあくまで想像ですが。
三谷監督の世代的にも、その方達のことを知っていてもおかしくはないと思うのです。
なので、スオミの現在の夫(5人目)も、相田みつをがモデルというよりも、その某グループの創設者を意識してはいないか、と思ったり。
見た人によって「モデルはこの人かな」とか「この人のこの要素をモチーフにしたのかな」などと色々な人が思い浮かんだとしても、あくまでこの映画はフィクション。
現実とは違いますし、詳細は秘します。
十勝の広大な景色が堪能できる展望台
さて十勝関係話を、あまりはっきり言えないムニャムニャ話で終わらせるわけにはいきません!
十勝といえば!!(強引な話題転換)
私が好きなのは。帯広側から芽室・清水・新得方向に向かうときに見える、日高山脈!!
そして、とかち帯広空港を離着陸するときに見える、畑のパッチワーク!!
日高山脈は、道央圏では大雪・大雨が降っていても強風が吹いていても、十勝側に来るのを遮ってくれる天然の要塞です。(逆もまた然りですが)
自分で運転するようになってから、西に向かうときは運転の合間に景色を見る専門。
あえて一旦止まって写真を撮ることもないのですが。
あまり自然を愛でたり、そういう方面の感受性の高い人間ではなくても、雪を冠した日高山脈の勇姿は「美しいな」と感じるものです。
また、私より年上で頻繁に飛行機に乗っていても「あえて窓側に席を取り、飛び立つときと空港が近づいたら写真を撮る」というくらい熱いファンもいる、畑のパッチワーク。
これは、(全員が全員ではないにせよ)十勝の住人だから郷愁的な何かを感じるのか、全く関係ない人でも感じるものなのかは分かりません。
(長澤まさみ or 三谷幸喜好き以外に、この映画が響くのかどうか分からないのと同じく)
そんな食料基地・十勝を感じさせる畑のパッチワークですが、飛行機に乗らずとも俯瞰できる場所があります。
帯広市から比較的アクセスが近いその一つが、芽室の新嵐山スカイパーク展望台です。
(行きに日高山脈も見ることができます!)
またしても、自分一人で行ってもコンディションがアレだったので、5年前の2019年に撮っていただいた写真を発掘しました。
お客様が「太って帰る」ことに定評がある十勝地方ですが、そこで育まれた食材だけでなく、広大な景色と清凉な空気も堪能していただきたいものの一つです。
PROFILE
三崎 裕美子 | 腐女子 / 総統
1980年生まれ。北海道帯広市出身|釧路→新橋のサラリーマン(港区女子)→などを経て基本帯広で働く腐女子。「総統」と呼ばれた女。しかしてその実体は、身の回りの幸せ(美味しいご飯・趣味・脳内妄想など)で足るを知る小市民。十勝の観光文化検定(とかち検定)上級合格。同年生まれのハリー・ポッター氏が通うホグワーツ・スリザリン寮に組み分けされたかったゲラート・グリンデルバルド信奉者。