帯広で映画を観た!シネマ de 十勝は、帯広で働く腐女子。「総統」と呼ばれた女子が、身の回りの幸せ(美味しいご飯・趣味・脳内妄想など)で足るを知る小市民として、十勝の観光文化検定(とかち検定)上級合格の実力を発揮しつつ、帯広・十勝の話をしつつ、映画を語るコラムです。今週の映画は『ルックバック』です。
前回のコラム「帯広で映画を観た!」はコチラ
『ルックバック』を観に行きました
帯広でもようやく上映が始まりました!!
『ルックバック』
『チェンソーマン』藤本タツキ原作漫画の映画化です。
料金は一律1700円。
各種割引や、優待券などは対象外の作品です。
それでも通常の一般料金1900円より安いのは、上映時間1時間10分、本編58分の短めの作品だから、ということもあるでしょう。
『チェンソーマン』は分類するとダーク・ファンタジーだとかホラー、サスペンスにカテゴライズされています。
そういう世界観の「好き嫌い」「取っ付きやすさ」は分かれるところだと思います。
一方『ルックバック』は、「描き続ける」少女達の物語。
悲しい出来事や怖い部分はあっても、より一般向けな青春の物語・ヒューマンドラマです。
十勝で言えば、かつて「受川さん」や「有田さん」に通い、十勝農協連ビルで開催されていたイベントに通っていたような人たちには、配信サービスやレンタルになってからでもいつかは見てほしい作品です。
(ただし残酷表現、フィクションであっても人が亡くなる描写が苦手な人は除く)
作者の映画好きを感じられる作品
藤野と京本という少女達を、決して「『図抜けることのできる人』『天才』と呼ばれる人は生まれつき違う」といった『酸っぱい葡萄』のような話ではなく、「他の人が理由をつけたり躊躇してなかなかできないことを、努力とも苦痛とも思わずやる」存在として描かれているのが良かったです。
フィクションではありますが「作者さん本人も、こういうこと若い時に言っていた/言われていたのかな?」と思わされる箇所もあれば、「映画が好きなんだろうな〜」という色んな映画のオマージュが随所に散りばめられた作品でした。
「理不尽」に対する作者の怒りと、疾走感が印象的
藤野を通して、若い頃の根拠のない万能感や自意識の高さ、優越感といった、かつて自分も通ってきた道を振り返る(ルックバックする)ことになり、懐かしくもあり恥ずかしくもあり。
前半は、そんな青い春のこそばゆさと共感性羞恥を感じつつ、少女達が関係を築き上げていく過程にほっこりしていたものです。
にもかかわらず、この作品の根底から一貫して感じるのは、作者の怒り。
そう、この映画は短めでも、決して後味のいいお話には向かいません。
観客は、タイトル「ルックバック」の意味を、後半で再確認することになります。
(Look Back=振り返る、追憶する、背中を見る)
この作品は、映画を見終るまで原作マンガも何も見なくていい、というアドバイスを聞いて前情報を入れずに見に行ったんですが。
本作の後半部からは「京都アニメーション放火殺人事件」のような、クリエイターに対して振るわれた理不尽な凶行に対する作者の怒りを、感じずにはいられませんでした。
また、描きたいものの主線を濁らせないためにか、冗長さと無駄を省いた疾走感は新鮮で、上映時間の短さは気になりませんでした。
(何しろ主人公の相方である京本の、家族の描写すら出てこないのですから!)
1冊のマンガ、まして短めの作品を元に映画化するにあたって、『カラオケ行こ!』のように話を膨らませるというのも手段の一つでしょう。
(原作の持ち味を尊重しつつ独自エピソードを膨らませる行為、改悪と紙一重ですが、前者は嫌いじゃない>傘のエピソードとか)
しかし『ルックバック』のように、エピソードや枝葉を足さずに疾走感を保つ、というのも手だなと感心させられました。
心にしんみりと沁みる映画でした
そこまで徹底的に無駄を排しているからこそ、この作品では「十勝関連話」を挟み込む余地が、見当たりませんでした!
(こじつけられないこともないのですが、とんでもない蛇足のような気がして、憚られました)
ですので、今回のコラムは単純に映画の感想・紹介で終了とさせていtだきます……。
『ルックバック』の来場者特典は、非売品であるためか(転売だとか悪用防止のためなのでしょう)、撮影したり共有などが禁じられており、今回コラム用の写真素材が明らかに足りていません!!
そこで、せめてもの十勝・帯広PRとして、帯廣神社の花手水(はなちょうず)の写真を紛れ込ませています。
理不尽な暴力に、強い怒りと憤りを感じずにはいられないし、悲しい気持ちになる。
『ルックバック』シネマ太陽帯広では、10月10日(木)までの上映予定です。
PROFILE
三崎 裕美子 | 腐女子 / 総統
1980年生まれ。北海道帯広市出身|釧路→新橋のサラリーマン(港区女子)→などを経て基本帯広で働く腐女子。「総統」と呼ばれた女。しかしてその実体は、身の回りの幸せ(美味しいご飯・趣味・脳内妄想など)で足るを知る小市民。十勝の観光文化検定(とかち検定)上級合格。同年生まれのハリー・ポッター氏が通うホグワーツ・スリザリン寮に組み分けされたかったゲラート・グリンデルバルド信奉者。